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殺人の至宝と星座  作者: 早乙女なな
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二、朝食の相席

次の日は、非常に天気がよかった。

目覚ましをかけた時間の一時間も前に起き、早速着替えを済ませてしまった。


私はホテルのテラスで紅茶を飲んだ。

もちろんストレートだ。

朝から甘いものでは気持ち悪くなってしまう。


まだ街は人通りが少ないらしく、車の音もあまり多く聞こえない。

聞こえるのは、時々近くを飛ぶ鳥のさえずりだった。


紅茶の銘柄はアールグレイらしかった。

紅茶の中でも、私が好きな銘柄だ。

まだパンも何もないが、それだけで十分素敵な朝と言えた。

これぞ理想に近かった。


すると、私の座っている席の目の前を誰かが横切り、そして目の前に座った。

ちょうど私と向かい合う形だ。


昨夜の男だった。


あまりにも驚いて、私の紅茶を飲もうとしていた手が止まった。

男は当然かのごとく一息ついている。


私は息を止めてその様子を見た。

「他に席が空いてなくてね」

と、男が私をしっかり見据えて言った。


昨夜はあれだけ離れていた男との距離が、今はこれだけ近くなっていることが信じられなかった。


「いいえ、私はそこまで長居するつもりはないので、どうぞごゆっくり……」

こんなに愛嬌のない言葉しか出ない自分に嫌気がさした。

思っていることと真逆のことを言ってしまうのは、どうしようもないらしい。


「そうか。忙しいようで残念だな」

男はそれだけ言って、私物であろう本を広げて読み始めた。

何を読んでいるのかは、ブックカバーが付いていてわからない。


何か言わなければ。

そう思い咄嗟に言葉が口をついて出た。

「昨日はありがとうございました。美味しいワインでした」


すると男は、小説を読むために伏せていた目を上げ、私の方を見た。

昨日はよく見えなかったが、男の目は美しい翡翠色をしていた。


「覚えてくれていたのか」

男は少し驚いたように言った。

私は男の人間的な部分を見たような気がして、笑みがこぼれるのを隠せなかった。


「ええ、今までにない経験だったので」

何とか男の調子に合わせようとするも、手が少し震えているのに加えて、声まで上ずってしまった。


緊張しているのが見え見えだ。

「そうか。美味しいと思ってもらえてよかった」

男はその余裕を見せびらかすかのように、ほっとため息を一つついて、私から目線を外し外の景色を眺めた。


そういえば、この男はテラスに来て飲み物も何も持っていない。

「君は、今日は何か予定があるのかね」

男はまた私に視線を戻して言った。


ばくんと強く、心臓が脈打つのがわかった。

「いいえ、特には何も決めてないんです」

私は消え入りそうな声で、何とか答えを絞り出した。

顔から火が出てしまいそうだ。


「これから私はロンドン市内を観光して回ろうと思っている」

男は読んでいた本をぱたんと閉じ、こう言った。


「もしよければ、君も一緒にどうかな。一緒に観光したい」

途端に、今まで私の身体の中に溜まっていた熱がすーっと引いていくのを感じた。


観光?それはぜひ一緒に行きたい。

なんせ、イギリスに来たのは初めて。

どこから回ればよいかわからなかったのだ。


「ぜひお願いします。私、イギリスなんて初めてなので……」

そこまで言うと男は口角を上げて、ふふっと笑った。

「そうかそうか。それじゃ待ってるよ。一時間後にロビーに来てくれ」


また後で。と男は言い残し、ささっとその場から立ち去った。

私は状況を整理しようとしばらくその場に座ったままでいた。


一時間後には、私はおめかしをしてロビーにいなければならない。

となると、今しなければならないことは一つ。



「早く朝ご飯食べなきゃ」

二話目ですっ。

何だか怪しい男の予感。でもイケおじ……。

このキャラクターは、ある俳優さんをモデルに書いているのですが、その人は"北欧の至宝"と呼ばれているんです……。お時間があれば、調べてみてください。

今のところ順調に更新してますが、すぐ滞ると思います笑笑

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