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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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今川了俊は九州探題になりたい

室町幕府は九州以前に四国で問題を抱えていた。幕府が九州で反撃するためには、四国を安定化する必要があった。豊臣秀吉が四国平定の後に九州を平定したように。そのためには四国の林田である讃岐国阿野郡林田郷を舞台とした白峯合戦を待つ必要があった。細川頼之が白峯合戦に勝利することで四国が室町幕府の勢力圏として安定する。


正平二二年/貞治六年(一三六七年)に二代将軍・足利義詮が死去する。このタイミングで懐良親王は上洛の軍を起こそうとしたが、林田隠岐守は反対した。上洛は戦略上意味がなく、戦術的にも失策であった。


そもそも上洛することに価値を見出せない。林田隠岐守にとって征西府の価値は中央からの独立にあり、中央の政争で消耗することは不本意であった。源平の合戦の富士川の戦いの勝利後に源頼朝が上洛の軍を出すことを希望したが、千葉常胤は東国の基盤固めが先と諫めた。それと同じ構図である。とはいえ、この理由は林田隠岐守のような在地領主にとって正しい理由であるが、正統な南朝天皇の復権という勤皇イデオロギーを目的とする人々には通用しないものである。


戦術的にも上洛は難しい。現実問題として瀬戸内海の制海権が十分ではない。細川清氏が勝利して、四国北部に南朝の地盤があれば連携できたかもしれない。しかし、清氏は滅亡し、四国が細川頼之一色の状態では上洛軍は後背を突かれてしまう。林田隠岐守の指摘によって征西府が上洛軍を出すことはなかった。


正平二三年/応安元年(一三六九年)に足利義満が朝廷から征夷大将軍宣下を受け、室町幕府第三代将軍になった。義満は管領の細川頼之に尋ねた。

「良い案はないか」

「今川了俊を九州探題に任命し、九州に派遣して南朝討伐にあたらせることは如何でしょう」

今川了俊(貞世)は幕府の侍所頭人、引付頭人などを務めていたが、二代将軍足利義詮死去により出家していた。義満は頼之の案を是として、建徳元年/応安三年(一三七〇年)に今川了俊を九州探題に任命した。


渋川義行の九州探題罷免は頼之にとって派閥人事解消のメリットもあった。前将軍の義詮の正室は渋川幸子である。義行は幸子の甥である。大奥人事の排除となる。


了俊は引付頭人を辞して、準備のために本拠地の遠江国に帰った。そこで兵を集めて上洛した。了俊は中国地方や九州地方の武将らに助力を依頼する文書を出した。


了俊は建徳二年/応安四年(一三七一年)二月に京都から九州に出発する。途中の中国地方の国人の兵も合わせて進軍した。了俊は十分な兵力を揃えた三方向から九州へと上陸した。了俊は所領の安堵や敵方所領の給付、朝廷への官位推挙などにより、味方を着実に増やしていった。


まず子の今川義範率いる先遣隊を一二月に豊前に上陸させた。そのまま豊後に進み、高崎山を要塞化して籠った。征西府の主力の菊池武光は野戦の名手であるが、城攻めは相対的に不得手である。そこで強固な陣地を構築して守り抜き、敵を疲弊させ、そのような城砦を結びつきて領域的な支配の拡大を目指した。


武光は早期解決を目指して自ら出馬した。しかし、義範は防衛線に専念し、落城には至らなかった。武光は城から出て戦うように何度も挑発したが、義範は乗らなかった。武光が高崎山攻略に出ている隙に了俊は門司から本隊を率いて上陸し、大宰府を目指した。このため、武光は大宰府を守るために引き返した。


さらに弟の今川仲秋は別働隊を率いて肥前北部の松浦地方に上陸した。現地の有力水軍である松浦党は仲秋の下に馳せ参じた。松浦党の多くは多々良浜の戦いでは宮方であったが、尊氏が勝利すると武家方に寝返る者が続出していた。征西府は菊池武光の嫡男・武政を肥前に派遣して迎撃させたが、文中元年/応安五年(一三七二年)二月に敗退してしまう。


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