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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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足利尊氏は朝敵になりたくない

朝敵になったことは尊氏にとって大きな衝撃であった。佐々木道誉は尊氏に天皇方と戦うことを勧めた。

「武家の棟梁となる人がおらず、心ならずも公家に従ってきたが、足利様が立つと知って付き従わない者はいないだろう」

佐々木道誉の言葉は、彼の中に眠っていた野心を呼び覚ました。武家の棟梁としての道を歩むこと、それが尊氏の未来であり、使命でもあると感じた。

しかし、尊氏は謀反を起こすことには消極的であった。尊氏は建長寺に引きこもり、出家しようとして、髪の本結を切った。ここからは尊氏に積極的に謀反を起こす意思はなかったと評価される。

尊氏には自己を棟梁とする武家政権を作る気持ちはあっただろう。それを天皇も認める(認めざるを得ない)ものと思っていただろう。そこが否定されたことがショックであった。天皇の認可を得ずに武家政権を確立することは難しいと考えていた。天皇の支持が得られなければ、彼の野望は実現しづらい。


建長寺での日々は、尊氏にとって内省と熟考の時間となった。尊氏は自身の使命を探し、天皇との対話を試みた。尊氏は天皇の信任を勝ち得るために、政治的な野心を持つ者としてではなく、国家の安定と調和を求める者としての姿勢を強調しようと決意した。しかし、新田義貞の進軍は止まらなかった。


尊氏に代わって直義が出陣した。直義は陣中で緊張感に包まれていた。敵軍との戦闘は避けられないものとなり、彼の心には戦局の不確かさが漂っていた。直義は信頼のおける側近たちと共に作戦を練り、勝利に向けて全力を尽くす覚悟を決めていた。しかし、義貞の軍勢は錦の御旗の勢いに乗っており、直義は連戦連敗となった。佐々木道誉も天皇方に降伏し、天皇方の先陣となった。


「直義が命を落とすならば自分がいても無益である」

足利一門が存亡の危機に陥ったことで遂に尊氏が立ち上がった。尊氏は髪の本結を切った状態であった。周りの武士達も尊氏と同じ髪型にした。尊氏は前向きなリーダー像とは異なるが、当時の人々にとってカリスマ性がある存在であった。


尊氏は後醍醐天皇に反旗を翻したために戦前の皇国史観では逆賊とされた。南朝を正統とする立場から逆賊を否定する戦前的価値観に縛られることは不合理である。一方で尊氏は鎌倉幕府を裏切り、後醍醐天皇を裏切るという裏切りを重ねた人物である。悪くみられることも理由はある。


尊氏は一二月八日に出陣し、一〇日に足柄峠に布陣した。足柄峠は坂東の入り口である。足柄峠は足柄坂とも呼ばれており、この坂の東だから坂東と呼ぶ。かつて平将門は承平天慶の乱で足柄峠を封鎖して坂東の独立を目指した。尊氏は足柄峠に布陣したことで地の利を得た。


新田義貞率いる天皇方と一一日に開戦し、箱根・竹ノ下の戦いが始まる。戦いは一三日まで続き、尊氏が勝利した。天皇方は後退し、一三日には尊氏は伊豆国府まで攻め込んだ。尊氏の物語は、野心と誠実、そして歴史の中での転機についての物語であり、日本の歴史の豊かな一部を紡ぐものとなった。


尊氏は、やる気はないが戦には強い。これは昭和の精神論根性論からはネガティブに評価される。尊氏は昭和の感覚では不人気になることは説明できる。

天皇への反旗を翻しただけでなく、昭和の精神論根性論にも合っていないことが尊氏の不人気の要因だろう。

尊氏は矛盾の塊であった。「野心など感じさせない温厚な性格で二度も謀反し、情け深く人を大事にするのにいざとなればあっさり見捨て、いつも隠居したがるくせに自分が天下の中心にいないと気が済まず、心が強く豪胆だがやたら自害したがる上結局死なず、行き当たりばったりに行動するが緻密に計算されたように結果を出し、惨敗したかと思えば次の瞬間圧勝している」(松井優征『逃げ上手の若君 12』集英社、2023年)

「主人公がどうなりたい」「主人公が何をなすべきか」が明確であれば、その過程を描くだけで物語として成立する。「主人公が何をなすべきか」が明確ならば、それだけで読み応えのある小説となる。

逆に「主人公が何をしたいのか分からない小説」は大衆受けしない。この点で尊氏は何をしたいか分かりにくい人物である。『新世紀エヴァンゲリオン』のようにネガティブな主人公も受け入れられる時代は尊氏も評価される。



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