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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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足利尊氏は無断で出陣したい

尊氏は出陣すると破竹の勢いで進軍した。時行の軍勢は自然災害にも見舞われた。台風で軍勢の宿所としていた大仏殿が倒壊し、将兵に死傷者が出た。


尊氏の軍勢と時行の軍勢が対峙した。

「時行よ、この乱を終わらせる時が来た。建武の新政に反抗するのはお前とお前の軍勢にすぎない」

尊氏が大声で叫ぶ。

「新政は我々武士に不公正だ!それを正すために戦っているのだ!」

時行は怒りと不安の表情で立ち向かうが、尊氏の軍勢が周りに迫った。

「それならば、建武の新政の中で改革を目指そう。戦いで何も解決しないぞ」


尊氏は中先代の乱を鎮圧した。時行の鎌倉支配は二十日間程度しか続かなかった。時行の敗因は建武の新政に不満を持つだけの寄せ集めの軍勢だったことである。鎌倉幕府滅亡時に北条方の有力な将は死に絶え、この時点で残っていなかった。それ故に形勢不利と見るや足利方に寝返る者が多数出た。


「鎌倉は再び我が手に帰した。これからは新たな時代を築く時だ」

尊氏の名は鎌倉の空に響き渡った。尊氏は鎌倉奪還後に鎌倉にとどまり、論功行賞などを行った。朝廷からの帰還命令を無視して、鎌倉に屋敷を新築した。尊氏の鎌倉での行動は歴史に大きな影響を与えた。尊氏の選択がどのように鎌倉とその周辺地域に変革をもたらすのか、まさに歴史の舞台は彼の手によって塗り替えられようとしていた。


尊氏の動機については諸説ある。第一に後醍醐天皇に反旗を翻し、鎌倉で武家政権を作ろうとした。既に尊氏は将軍や御所と尊称されていた。尊氏は建武二年一二月に島津時久を日向国の新納院にいろいんに任命した。はるか九州にまで独自に恩賞を出している。この時久の家系は以後、新納氏を称するようになった。

第二に東国を安定させるために必要な措置とする。北条時行は取り逃がしており、時行の残党も残っていた。建武の新政の不公正な政治が武士の不満を集めたことが中先代の乱の原因である。それ故に安定のためには尊氏が論功行賞を行う必要があった。


真相がどちらであるとしても、朝廷からは独自政権を作る動きに見えた。後醍醐天皇は謀反と断定し、尊氏を討伐する宣旨を新田義貞に出した。足利尊氏と新田義貞をライバルとする視点は、実はここからとされる。鎌倉時代の足利氏は北条一門と姻戚関係を持つ有力御家人であるのに対し、新田氏は一領主であり、対抗関係にならなかった。


鎌倉幕府滅亡も義貞よりも足利千寿王(後の義詮)の功績が大きく、義貞は足利配下の一武将のように見られていた。その義貞に尊氏と対抗させる役回りを与えたことは後醍醐天皇のアイデアになる。武士同士に対立関係を作って戦わせることは朝廷の伝統的な武家操縦術である。


北条時行は、その後も戦い続け、短期間であるが合計三回も鎌倉を奪還した。後に南朝に降伏してまで尊氏と戦い続けた。そこでは鎌倉幕府を滅ぼした新田義貞の息子と共闘した。


後醍醐天皇も尊氏も義貞も全て鎌倉幕府を滅ぼした仇である。後醍醐天皇や義貞は良くて尊氏は許せないとすることは一見すると差別である。しかし、足利氏は有力御家人として鎌倉幕府から多大な御恩を受けている。時行にとっては北条一門に準じる足利氏の裏切りが許せなかった。


皇室は仇として憎しみの対象とする価値もなかった。執権北条氏は持明院統を支え、大覚寺統の後醍醐天皇に滅ぼされた。尊氏が持明院統を奉じると時行は南朝で戦う。当時の人々にとって皇室は利用する神輿に過ぎなかった。


これは後白河院や後鳥羽院の保身第一の無能公務員体質が影響しているだろう。後白河院は源義経に源頼朝追討の宣旨を出しながら、義経が敗れると取り消した。後鳥羽院は承久の乱を起こしたが、幕府軍に敗れると北条義時追討の宣旨を取り消した。


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