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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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足利尊氏は大丈夫とだましたい

足利尊氏は時行を討つために自分を派遣することを後醍醐天皇に要請した。

「鎌倉を奪還し、北条時行の反乱に終止符を打ちましょう。鎌倉を取り戻すことは、我々の使命です」

しかし、後醍醐天皇は尊氏の出陣を認めなかった。虎を野に放つことになりかねないと恐れたためである。


尊氏は時行を討伐するために征夷大将軍の地位を要求した。この征夷大将軍の動機については諸説ある。

第一に後醍醐天皇に反旗を翻し、武家政権樹立を目論んでいたとする。

第二に時行に対抗するために征夷大将軍の権威を求めたとする。「鎌倉幕府再建を大義名分に掲げる北条時行に対抗するには、征夷大将軍の権威が必要と判断したにすぎないのではないか」(呉座勇一『武士とは何か』新潮社、2022年、107頁)

第二説に立つとしても後醍醐天皇には問題がある。北条時行が単なる反乱分子ではなく、鎌倉幕府再建が大義名分になること自体が鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇の自己否定になる。多くの武士達が鎌倉幕府再建を支持することを認めるならば、建武の新政が批判を集めていることを認めることになる。しかも鎌倉幕府再建の大義名分に対抗するために源氏の血筋の尊氏が征夷大将軍になることが必要とすることは、天皇親政ではダメと言われたに等しくなる。


この時の尊氏の胡散臭さを大丈夫との言葉で表現する作品がある。

「絶対大丈夫。この尊氏を征夷大将軍にお任じ下されば全国の武士が我が配下となり北条の嫡子とて容易く倒せます」(松井優征『逃げ上手の若君 12』第101話「征夷大将軍」)

尊氏の言葉は熱く、自信に満ちていた。しかし、「大丈夫」という言葉には欺瞞がある。大丈夫との言葉は、その場しのぎに言われるだけであり、実際は大丈夫ではない。大丈夫と言う人間は無責任である。

尊氏は公家にも「尊氏にお任せ下されば全て大丈夫」と言っていた(松井優征『逃げ上手の若君 6』第52話「婆娑羅」)。尊氏は公家からも支持を集めていたが、大丈夫との言葉の欺瞞によって集めた支持であることを物語る。


「朕の判断は変わぬ。征夷大将軍への任命は許可しない」

後醍醐天皇は慎重であった。彼は尊氏の自立を恐れ、単独で権力を握らせることをためらった。尊氏の言葉に対しては、慎重な判断を下す必要があった。政局の舞台裏では欺瞞と野心が渦巻き続け、後醍醐天皇の決断は正しいものであった。


後醍醐天皇の拒絶は、尊氏の野心を抑える一石となった。彼は自らが征夷大将軍に就く夢を断たれたことを受け入れざるを得なかったが、その欲望と野心は決して消えることはなかった。尊氏は無断で関東に出兵した。後醍醐は追認で尊氏を征東将軍に任命した。


政治の舞台裏では常に陰謀と駆け引きが渦巻き、尊氏も例外ではなかった。尊氏の野心は大きく、その野望を達成するためには手段を選ばぬことがあった。京の政治は緊張と駆け引きの連続であった。


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