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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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護良親王は冤罪が恨めしい

護良親王は征夷大将軍になったが、失脚してしまう。その原因として諸説ある。

第一に尊氏や廉子の讒言による冤罪である。護良が帝位を狙って謀反を起こすと讒言した。

第二に後醍醐を黒幕として尊氏を討伐する陰謀が進行していたが、露見したため、後醍醐に全責任をなり付けられて切り捨てられたとする。

「尊氏よりも君(後醍醐)が恨めしい」

逮捕された護良の言葉である。流罪になった護良は足利直義に引き渡される。これは公的な謀反人の扱いというよりも、陰謀の被害者である足利氏の私刑に委ねた形である。


後醍醐には保身第一の無能公務員的な体質がある。最初の倒幕計画である正中の変が発覚すると後醍醐は「すこぶる迷惑」と事件と無関係を装った(『花園天皇宸記』正中元年九月二〇日条)。但し、正中の変の後醍醐は本当に冤罪であったとする説がある。


次の元弘の変で六波羅探題に捕らわれた後醍醐は面会に来た関東申次・西園寺公宗に「天魔の所為」と言い訳した(『花園天皇宸記』元弘元年十月八日条)。

「今回の事件は天魔の所為だから、寛大な沙汰になるべきと六波羅探題に伝えてくれ」

後白河院も源頼朝追討の宣旨を出したことを咎められると「天魔の所為」と言い訳した。後鳥羽院も承久の乱で敗北すると「武士達は勝手に落ち延びよ」と保身を優先した。この無責任さは二一世紀の日本政府にも継承されている。


護良親王失脚は護良派の武士達の運命を変えた。赤松円心と新田義貞は対照的であった。

円心は播磨守護を解任された。円心にとって播磨守護は一所懸命の恩賞であった。

「播磨国守護職の解任が、円心をして建武政府を離反した決定的要因であった」(峰岸純夫『新田義貞』吉川弘文館、2005年、91頁)

円心は尊氏の忠実な支持者になる。ここで疑問が生じる。尊氏は護良を失脚させて流罪にした張本人と言って良い立場である。護良派の円心が尊氏シンパになるだろうか。幾つかの解釈がある。

第一に円心を損得で動くドライな人間と評価する。しかし、その後の円心は不利になっても尊氏を支持し続けていた。円心は尊氏を武門の棟梁として認めていた。これは円心が目先の損得だけで動かない人間であることを示すのではないか。一方で最後には尊氏が勝つと読めていたので、不利な時も尊氏を支持し続けていたのだろうか。

第二に円心は建武の新政の恩賞に不満を抱いたが、護良も恩賞を重視する武士の気持ちを理解せず、既に円心の気持ちが護良親王から離れていたとする。護良が恩賞面で満足させられなかったのは後醍醐や廉子との政争で護良の令旨と矛盾する綸旨が出され、令旨が無効とされたためである。

第三に護良と尊氏の対立は誰が武家の棟梁になるかであって、武家政権構想を有していた点では共通する。それ故に武家政権構想を支持する立場が護良失脚後に尊氏を支持することは自然なことになる。対立するものは後醍醐天皇の天皇親政であった。

第四に新田義貞との対立である。円心の本拠地は播磨であるが、播磨守には義貞が任命された。円心は播磨守護になったが、それも護良親王失脚後に解任され、義貞が就任した。円心は義貞に怒りを抱いており、敵の敵は味方で「義貞討伐」を掲げた尊氏を支持した。


同じ護良親王派でも義貞は人事や恩賞で優遇された。義貞は尊氏と比べると大きな差があり、政治力が劣るように評されることもある。とはいえ、鎌倉時代の足利氏が有力御家人であるのに対して、新田氏は貧乏御家人と大きな差があった。同格のもののようにして比べることが誤った前提である。むしろ義貞は朝廷を上手く泳いでいると評することができるのではないか。


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