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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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鎌倉幕府は蒙古の国書を無視したい

宗泰の長男が林田泰國である。林田泰國は元寇を戦った。大蒙古国皇帝フビライ汗は日本に服属を求める国書を送った。

「日本と大蒙古国とは国と国の交わりをして仲良くしていこうではないか。我々は全ての国を一つの家と考えている。日本も我々を父と思うことである。このことが分からないと軍を送ることになる。それは我々の望むところではない。日本国王はこの気持ちを良く良く考えて返事をしてほしい」

この国書の意図には二説ある。

第一に過去の中華帝国と同じく朝貢し、冊封体制に入ることを求めただけとする。この場合は国内の支配は変わらない。後に足利義満が明国に冊封された場合と同じである。冊封体制は東アジアの国際秩序である。国際連合が独立国に加盟を求めるようなものである。

「使者だけきちんと派遣し、頭を丁重に下げて挨拶してくれればそれでいいと、フビライは考えていたはず。それで皇帝としての威信は十分に成立する」(本郷和人『「失敗」の日本史』中央公論新社、2021年、56頁)

第二に蒙古の属国・植民地となることを要求したとする。国書は表向き丁寧な書き方をしているが、日本に従属を求め、従わなければ武力で攻めると恫喝していた。ウクライナを侵略するロシア連邦と同じ論理である。蒙古は「全ての国を一つの家」と主張する。ロシア連邦はウクライナ人もロシア人と同じルーシであるとの連邦意識がある。

国書の「兵を用ふるに至るは夫れいずれか好む所ならん」が問題であったとする見解がある。「これを書かなければ、まだ日本には他の選択肢があり得たかもしれないが、これは日本のプライド上、絶対に受け入れられない文言であった」(桃崎有一郎『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』吉川弘文館、2016年、92頁)


幕府は外交権限が朝廷にあるとして朝廷に国書を送った。朝廷で方針が議論された。

「本朝には聖徳太子が隋に『日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す』と対等の立場で国書を送った前例がある。今回も対等の立場で国書を出すべきだ」

「当時は隋と高句麗の対立があり、その中で本朝は隋に強く主張できた。そのような要素が今はない。玉虫色で結論を先送りする返事を出すべきだ」


朝廷の議論は、どのような返事を書くべきかであって、返書を出すことは一致していた。ところが、執権北条時宗が待ったをかけた。時宗は朝廷に任せるつもりはなかった。時宗は国書に返事をしないことを朝廷に要請し、それが朝廷の決定になった。


国書の意図が朝貢を求めたものか、属国になることを要求したかは議論がある。朝廷はおおむね前者と理解した上で、対等外交の伝統から、いかに誤魔化すかが議論された。これに対して時宗は後者と受け止めた。時宗がどうして後者と受け止めたかについて諸説ある。

第一に冊封体制という東アジアの国際秩序について無知であった。

第二に冊封体制を知っていたが、蒙古を中華帝国と認めていなかった。

第三に南宋からの僧侶などから蒙古の残虐性を聞いており、蒙古への敵対意識を持っていた。

返事を出さなかったことを最善の選択と位置付ける主張もある。「フビライ・ハーンの言い分を唯々諾々と受け容れて、モンゴルと通好すれば、モンゴルはたちまちのうちに日本を征服しようとするでしょう。かといって、曖昧にでも断りの返書をすれば、それを口実にやはり攻め込んでくるでしょう。いずれにしても、モンゴルは攻めてこようとしているのが明らかなので、返書をせずに使者だけを追放したのは、このときにできる最良の方法だったのです」(宮脇淳子『世界史のなかの蒙古襲来 モンゴルから見た高麗と日本』(扶桑社、2019年137頁)


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