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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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源実朝の政治

牧氏事件で北条時政と牧の子を追放した北条義時は幕府の実権を握った。

しかし、実朝は成長すると将軍親裁を開始した。実朝は義時の傀儡ではなく、意欲的に政治に取り組んでいた。

「執権北条氏といえども、将軍権力の前には表立った反抗はできなかった。実朝が朝廷と幕府、源氏と北条氏の狭間で苦悩したというのも先入観に基づくイメージである」(坂井孝一『承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱』中公新書、2018年、67頁)


太宰治『右大臣実朝』の源実朝は厭世的である。幼少期に実兄が祖父母の一族によって殺害され、その祖父母の一族によって征夷大将軍にされたならば厭世的にもなるだろう。しかし、実朝が政治をほっぽり出していたということではない。


吾妻鏡には実朝が承元四年(一二一〇年)一〇月一五日に聖徳太子の十七条の憲法を調査させ、大江広元が調査結果を報告したと記録されている。十七条の憲法は御成敗式目が参考にしたものである。御成敗式目は全五十一条であり、一七の三倍である。御成敗式目は北条泰時の成果であるが、源流は実朝にあったかもしれない。泰時は実朝に近侍していた。


建歴二年(一二一二年)二月二八日には相模川の橋を修理してほしいとの要望が出た。この橋は源頼朝が落成披露で出かけ、その帰りに落馬したものである。橋を造った稲毛重成は畠山重忠に冤罪を着せたために殺害した。このように縁起が悪いために修理しなくてよいと重臣達は意見を述べた。これに対して実朝は橋の修理を命じた。

「頼朝の落馬も重成の罪も橋を造ったことが原因ではない。橋は住民の交通の役に立っている。壊れる前に速やかに修理せよ」

ここには住民の生活を優先する実朝の政治姿勢が表れている。


「時により過ぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめたまへ」

洪水被害に対する源実朝の和歌である。為政者としての意識を持っている。和歌を詠むことは政治をほっぽり出すことではない。実朝は政治を行い、和歌を詠んだ優れた人物であった。


義時は守護の任期・交代制を実現しようとしたが、守護の反発によって挫折したとされる。これは義時ではなく、実朝の政策であったとする見解がある。守護の任期制は実現すれば幕府権力を強化することになった。室町幕府の守護領国制は成立せず、日本の歴史が変わっていたかもしれない。

現実は御家人を適材適所で守護として配置することができなくなった代わりに北条一門が守護を独占することになった。北条氏の立場からは、北条一門が守護になることで、元寇や悪党の跋扈のような課題に対応するとなる。


義時は自身の家臣を御家人にすることを実朝に求めた。義時としては自分の家臣を御家人とすることで御家人に自分の派閥を作りたかったのだろう。これに対して実朝は反対した。

「そのようなことをすれば、かつて家臣だった人物が思い上がって北条の恩を忘れることになりかねない」

実朝の反対のロジックは義時の利益も考慮したものである。実朝は権力を使って一方的に押し付けるのではなく、論理で勝負する政治家としての資質がある。

しかし、その後の歴史を踏まえると虚しさが生じる。義時の家臣を御家人にすることは阻止されましたが、得宗の家臣は身内人として御家人以上の権勢を振るうようになる。実朝は家臣を御家人とすると増長する危険があると言ったが、身内人の筆頭の内管領は執権も恐れる権勢になった。内管領の平頼綱は執権北条貞時から危険視されて平禅門の乱で滅ぼされた。内管領の長崎円喜・高資父子は得宗以上の権勢を誇った。

頑張っても頑張らなくても源氏将軍には傀儡となる未来しか見えない。未来を見通す洞察力があると厭世的になるしかないのだろうか。


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