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南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
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木曽義仲は天下三分したい

京は木曽義仲が制圧したが、平家は西国で勢力を保ち、坂東では頼朝が勢力を築いた。九条兼実の日記『玉葉』寿永二年八月一二日条には「大略天下の体三国史の如し」と書かれた。


木曽義仲は木曽の山猿、粗暴な田舎武士と評価が低いが、むしろ都の権謀術数に汚れていない清い人物との見方もある。義仲の父親の源義賢は大蔵合戦で甥の源義平に滅ぼされた。義平は源義朝の兄である。平家よりも義朝の子の頼朝が親の敵になる。それでも義仲は平家討伐を優先した。同族で殺し合う源氏の伝統から脱却しようとした。全国の武士が平家に虐げられているという認識を持っていたためである。大局観のある人物であった。


義仲は平家との和平も考えていた。平家からあっさり拒否されたが、義仲が源平と対立に囚われていなかったことを示している。平家は天下を私物化して多くの人々に恨まれたが、京にいて後白河院や公家の卑怯さを実体験した義仲は、平家だけが悪いとは思えなかった。


義仲の軍勢は補給が十分ではなく、食糧の略奪が起きて、都人の人心を喪失した。これも義仲が院や公家の荘園を尊重したためである。後白河法皇は義仲との駆け引きのため、義仲に荘園から得られる食糧を十分に供給しなかった。義仲の後に京に進軍したの鎌倉の軍勢は畿内各地の荘園を横領している。鎌倉の軍勢の方が義仲よりも粗暴であった。


義仲の問題は略奪した平氏を罰することの徹底さを欠いたことである。戦国時代に上洛した織田信長は一銭でも盗んだ兵士を斬罪にすることで軍紀を守った。この徹底さが義仲には欠けていた。これは統治者の弱さである。現代日本でも警察官が警察の職務で市民から金をだまし取る警察不祥事の対応の甘さが批判されている。


義仲は後白河法皇のいる法住寺殿を襲撃した。これで人心を失ったが、後白河法皇は義仲を怒らせるだけのことをしている。義仲の天下は長く続かなかった。源範頼と義経率いる鎌倉軍が迫っていた。


ここで岸本遠綱と山本義経の運命が分かれた。山本義経は義仲と運命を共にした。山本義経は義仲により京の警備を担当する武将の一人に配置され、伊賀守や若狭守に任命されるなど義仲軍で重要な役割を果たしており、義仲についたことは自然な選択である。これに対して遠綱は義仲から離れて鎌倉軍に味方した。


朝廷は寿永三年四月一六日に元暦に改元した。平家は後鳥羽天皇の即位も改元を認めず、安徳天皇を奉じて寿永を使用し続けた。平氏は頼朝と義仲との対立に乗じて一度は勢いを盛り返し、摂津国福原まで盛り返した。


讃岐国の武士達には反平家感情が強かった。讃岐国に地盤を築いていた藤原成親が鹿ケ谷の陰謀という冤罪で流罪になり、流刑地で殺害されたためである。成親は久安二年(一一四六年)から久寿二年(一一五五年)まで讃岐守を務めた。成親の父の家成も大治四年(一一二九年)に讃岐守になった。家成の祖父の顕季も承保二年(一〇七五年)に讃岐守になった。


讃岐国や阿波国の武士達は平家を裏切り、源氏に降伏する手土産として兵船十余艘で平家を攻撃してきた。これに平教経は激怒した。

「憎い奴らだ。昨日まで平家の馬草を刈っていたような連中が恩を忘れて寝返るとは許し難い、皆殺しにしろ」

教経は反撃して打ち破った。林田郷などの武士達は平家への抵抗を続け、一ノ谷の合戦後は頼朝から讃岐国御家人と認定された。


一ノ谷から海に逃れた平家は讃岐国屋島と長門国彦島に拠点を置いた。屋島と彦島を拠点とすることで瀬戸内海の制海権を確保した。


元暦元年(一一八四年)に伊賀国や伊勢国の平氏家人が反乱を起こした。遠綱は佐々木秀義の指揮下の鎮圧軍として出陣した。近江国大原荘で合戦になり、平家残党の大将の平田家継を討ち取り勝利したが、佐々木秀義は戦死した。佐々木家は定綱が継承した。


「驕る平家」と後世の評判の悪い平家であるが、大きく評価できる点は陰惨な身内同士の争いがなかったことである。これは三代で途絶えた源氏とは対照的である。



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