表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います  作者: 林田力
南北朝時代の林田隠岐守に転生して南朝で戦います
18/187

曽我兄弟は仇討ちしたい

富士の巻狩りでは日本三大仇討ちの曾我兄弟の仇討ちが起きる。当日は小雨が降りしきり、夜には雷雨が襲ってきた。天候が荒れ模様だったことは、後に歴史の転機として記憶されることとなるだろう。


曾我兄弟は、仇である工藤祐経に対する仇討ちの機会をうかがっていた。曾我五郎は工藤祐経を果敢に討ち取った。五郎の行動は、彼が一途な仇討ちの情熱に駆られていることを如実に示していた。ところが、五郎は、そのまま源頼朝の陣に侵入した。頼朝は五郎の姿を目にした瞬間、その存在から身に危険を感じた。


五郎は捕らえられ、頼朝の前で尋問を受けることとなった。

「鎌倉殿の陣に侵入したのは何故か?」

頼朝は冷静な目で五郎を見つめた。五郎は静かに答えた。

「頼朝も討つつもりであった。祖父の伊東祐親が誅殺され、仇の祐経が頼朝に重用されているからである」

鎌倉の御家人達は五郎に共感を抱いた。頼朝も五郎の言葉に心を動かされ、赦すことを考えた。しかしその瞬間、祐経の子息である犬房丸が異を唱えた。犬房丸は父の仇を討った五郎に対して怒りと復讐心を燃やしており、その声は御家人たちの心にも響いた。


結局、頼朝は重い決断を下した。犬房丸の異議を尊重し、五郎を処刑することとなった。その選択は、仇討ちの連鎖と復讐の深い闇を映し出すものであり、頼朝自身もその重みを背負いながら歩んだ。


曾我兄弟の裏に黒幕が存在するという陰謀論が諸説ある。

第一に北条時政を黒幕とした陰謀である。これは陰謀の目的について意見が分かれる。まず工藤祐経を目的とする説がある。「伊豆国を本拠とする時政には、特異な能力で勢力を伸ばしてきた同じ伊豆の有力者祐経を、みずからの手を汚さずに排除するという狙いがあったのであろう」(坂井孝一『源実朝 「東国の王権」を夢見た将軍』講談社、2014年、27頁)

「「追い詰められた若者たちを鉄砲玉にして邪魔なライバルを排除する」というのは、いかにも時政がやりそうな陰謀に見える」(榎本秋『執権義時に消された13人 闘争と粛清で読む「承久の乱」前史』ウェッジ、2021年、44頁)

次に頼朝を目的とする説がある。頼朝は「新世代の家の子を起用するようになり、もはや時政では頼朝をコントロールできない。自分の発言力がどんどん低下しているのは自覚していたはずで、そこで同じくオールドジェネレーションの人たちを巧みに煽り、曽我兄弟の仇討ちにおけるクーデタを計画。頼朝に替えて範頼を将軍に立てようとした」(本郷和人『鎌倉殿と13人の合議制』河出新書、2022年、161頁)

第二に伊豆の御家人達を中心とした反北条の陰謀である。


鎌倉には当初、頼朝と万寿が殺されたという誤報が入った。これを聞いた蒲冠者・源範頼は、自分が鎌倉殿を継ぐものとして鎌倉を守ろうとする。しかし、生存していた源頼朝の疑念を招いて流罪になり、殺害されてしまう。

「富士の巻狩りは万寿の後継者お披露目の晴れ舞台になるものであった。それを曾我兄弟の仇討ちが台無しにした」

頼朝は強く憤慨した。

「単なる御家人一族間の紛争で晴れ舞台が潰されて良いものではない。何かもっと大きな陰謀があっただろう」

範頼は陰謀を求める頼朝の疑心の格好の矛先になってしまった。富士の巻狩りを陰謀とする説でも範頼は冤罪とする。頼朝自身が後に冤罪と認めている。

「上総介広常と一条忠頼と源範頼の三人を殺したことは罪業である。毎日彼らの冥福を祈っている」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ