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棄教の強要

有馬直純は江戸幕府の禁教令に従って改宗し、領内の切支丹弾圧に転じた。セミナリヨや教会、修道院は没収・破壊された。キリスト教に関連する書籍の出版や所持にも厳罰が下された。

「切支丹は滅びねばならぬ。切支丹は死ぬがよい」

直純は言い放った。家臣や領民に改宗を強制した。

「貴殿らが死すべき定めにあるのは、魂が真に救われていないからだ。神の愛に背き、邪宗の誘惑に屈しているからである。さあ、目を覚まされい!」

「おお、なんということだ。我々は間違っていたのだ!」

「ああ、我々の信仰は間違いだったのだ!」

「よし。貴殿らを赦そう。ただし、二度と再び邪宗にそそのかされてはならぬぞ!」

信仰を捨てなかった者は容赦なく処刑された。大弾圧により切支丹は激減した。


レオ林田助右衛門一家は信仰を確認しあった。

「我々はなぜ切支丹になったか?」

「それは神の教えに従ったからです」

「では、その教えとは何か? 我々の信仰は何なのか?」

「それはイエス・キリストを信じることであり、イエス様を信じる者は救われるということです」

「ならば、我々にとっての救いとは何か?」

「それは、この世の悪から解放されることです」

「ならば、イエス様に従おう。イエス様が救ってくれる。イエス様が導いてくれる。神の御心のままに、神が与えてくださる道を歩んでいこう」


レオ林田助右衛門の一家は助右衛門と妻のマルタ林田や娘のマグダレナ林田一九歳、息子のディエゴ林田一二歳であった。ディエゴ林田が迷子になったことがあった。

「父上! 母上!」

ディエゴ林田は両親に駆け寄った。

「おお、ディエゴか……」

「あなた、無事で良かった!」

両親は息子を抱きしめた。

「ああ、神様に感謝致します!」

マルタ林田は涙を流して祈りの言葉を唱えていた。


レオ林田助右衛門は慶長一八年(一六一三年)に藩の役人から棄教を強要されたが、アドリアノ高橋主水、レオ武富勘右衛門と共に拒否した。

「拙者らは御主キリスト様にすべてを委ねておる」

「左様ですとも」

「我ら三人は死ぬまで切支丹として生きますぞ」

「死んでもキリスト教徒じゃ!」

三人は断固拒否して殉教を選んだ。直純の叔父の有馬掃部の使者が処刑の宣告を伝えた。

「貴殿らは棄教すれば命を助けてやると言ったにもかかわらず、頑として改宗しなかった。よって処刑する」

レオ林田一家四人は喜び勇んで牢屋敷へ向かった。

「我々は切支丹として、殉教の道を選びたいと思います。どうぞ、ご理解いただきたく存じ上げます」

アドリアノ高橋主水、レオ武富勘右衛門一家も入牢した。有馬の信徒達は、この報に接するとすぐに村から村へと情報を流し、牢屋敷の周囲に続々と集まってきた。

「神よ! 彼等を助け給え!」

「神よ! どうかあの者達をお助け下さいませ!」

「神よ! 彼等を救って下され!」

「神よ! どうか彼等をお救いください!」

「神よ! 彼等をお許し下さい!」

「神よ! 彼等を許してやってくださりませ!」

「神よ!! どうか彼等にお慈悲を!!!」

信者達は口々に祈りの言葉を唱えた。



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