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生きる希望はUber配達員

作者: マーシー

 午前11時日が差し込む中、重い体を上げた。頬が濡れている。

 

 私は23歳、本来なら時計を見て飛び起きるべき人間だ。しかし、私は他人とは違う。毎日残りの時間を数えている。余命宣告はとっくに過ぎた。

 

 父は蒸発し、母は再婚相手に夢中。彼氏は買い物に行ったきり、帰ってこない。これはコントではない現実だ。自死と病死、天秤にかけるのはよそう。余命宣告してもらった意味がない。

 

 時代はコロナである。彼氏は未だに自粛を破って買い物をしているのだろうかと考えているとチャイムが鳴った。Uber配達員だ。弁当を受け取ろうとした時に、発作が起きた。こんな時に。「帰って」私はそう叫んだ。その瞬間配達員は私の腕をぎゅっと掴んで抱え上げ、病院へと私を外に連れ出したのだ。

 

 目が覚めた。私が自殺も同然で逃げ出してきた病院だ。顔を上げると配達員がいた。私は帰るように言った。すると、また腕をぎゅっと掴んで「自分を大切にしてください」と言い残し、去っていった。腕には彼の手形が赤く染まっていた。

 

 次の日Uberを頼んだ。来たのはその彼である。昨日のお礼と少しの談笑をした。次の日もその次の日もUberが来る時間だけだが私にはかけがえのない時間だった。この人と話している時だけは生きていると感じる。

 

 息が苦しい。私は咄嗟に彼を呼んだ。Uber以外では初めてである。最後に会いたいと思った。生きる希望だった。楽しかった。

午前11時日が差し込む中、重い瞼を閉じた。頬が濡れていた。

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