休日と幼馴染
何日か前のことですが、幼馴染の性格を若干大人しめに調整しました。ブクマ評価感想いつもありがとうございます。最近は、自分の飽き性が心配です。パッと飽きてやめてしまう、それだけは避けたいですが、これは自分でもコントロールできない部分なので祈るしかないですね。と考えていたら7話が出来ていました。
今日は土曜日だ。いつもならまったり過ごすのだが今日はそうしてはいられない。
というのも昨日、妹リンを慰めた後部屋に戻ってスマホを見ると小山さんからのLINEが来ていた。
『早速明日とか、買い物に行きませんか!?』
積極的だ~!
と思ったが、これはただ友達としての買い物を期待されているので、そういう意味で距離を詰められているわけではないんだった。
まぁそんなわけで昨日の明日、つまり今日土曜日は小山さんとショッピングモールで買い物となったのだ。
ソワソワしながらどんな服を着ていけばいいかなと自分の部屋でタンスを漁っていると扉がノックされた。
「お兄ちゃん?起きてる?」
「起きてるよ」
妹が扉を開けて入ってくる。服をゴソゴソ引っ張り出す俺を見て首をかしげた。
「お兄ちゃんでかけるの?」
「おうリン。ちょうどいいところに来たな。なぁこの服似合う?」
振り返って、体に服を当てて見せる。
妹はそれを見て変な顔をした。
「普通。なに?オシャレに目覚めたの?」
「今日は女の子の買い物に付き合うんだ」
「は?え?」
妹は動揺を露わに後ずさって扉に肘を打つ。ゴンと音が鳴った。
そのままわなわなと俺に向かって指をさした。
「嘘つき!嘘つきーー!」
「はぁ!?何が」
「モテないなんて言っといて!お互い誰とも付き合わないでいつか一緒になろうねって昨日約束したのにーー!!!」
「言ってねえ!記憶を改ざんするな!」
それにモテるっていうのはいつでも後ろに5,6人の女子をとっかえひっかえして歩いてるやつのことを指すんだ。
ぎゃーぎゃー喚き散らして、こいつには素直に兄を応援しようという気はないのか。それに勘違いしている。
「付き合ってるわけじゃないぞ!デートじゃなくて友達として買い物に付き合うだけだ」
「は?そんなのあり得るの?あ、分かった!マツリさんでしょ」
幼馴染のマツリはよく家に来るので当然妹と面識がある。
マツリの名前を聞いて少しドキッとした。そういえばアイツは三枝君に告白されたのだろうか。
「いや、マツリじゃない」
「う、嘘……マツリさん以外にお兄ちゃんと買い物に行くような女子なんて……」
「いるんだな、それが」
「……もしかして、私?」
「あほか」
希望を打ち砕かれたかのようにへたり込む妹を横目に服を選んでいると、玄関のチャイムが鳴った。
え、まだ時間じゃないよな?そもそも家教えてないし。
そう思いながらドアを開けるとマツリが立っていた。
「おはようございます水嶋様」
「お、おう。おはよう。何しに?」
「リビングを借りに来ました。お邪魔します」
そう言って全く憚ることなくスルッとドアの内側に入り込んだ。
要するに遊びに来たわけだ。いかにも部屋着!って格好で手にはニン●ンドースイッチが握られている。
昨日と全く様子の変わらないマツリを見て俺は密かに安心した。まだ三枝君に告白されてはなさそうだからだ。それとも断ったのか?
リビングのソファに寝転がってポチポチゲームをやりだした。休日は大体いつも来るので今更だが、コイツ遠慮とかないわけ?
妹が足音を立ててやってきた。
「あ、マツリさんだ。いらっしゃーい」
「お邪魔しますリンちゃん」
「ねぇ聞いてよ!この男今日女の子と買い物行くんだって」
まるで悪事をちくるような口ぶりだ。
マツリはキョトンとしている。
「え?そんな話ありましたっけ?今日は外出の気分じゃないんですが……」
コイツもなかなかすごいな。
「お前じゃないわ」
「へぇ、彼女さんですか?」
「い、いや友達」
「そうですか」
な、なんとも思わんのかコイツは……。俺はお前に彼氏が出来るかもってことで一喜一憂してるというのに……!
マツリはゲーム機を抱えたままゴロンとひっくり返って「それより一緒にス●ブラしません?」と言った。
約束の時間までまだ少しある。
俺は頷いて、ほとんど勝ったことのないゲームを一緒にやった。妹はやらなかったが、リビングには居た。
俺を撃墜しながらアハハと口を開けて笑うマツリを見ながら俺は、「コイツに恋はまだ早い」なんて思った。
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水嶋銀が約束の買い物に出かけて行った後も、小日向茉莉はリビングで寝転がってゲームをしていた。
リンはマツリの方をじろっと見て言った。
「よかったの?」
マツリはポカンとしてリンを見上げている。
「何がです?」
「そりゃお兄ちゃんのこと。狙ってるんでしょ?」
「え?いや、別に」
「嘘!だったら休日まで家に押しかけないでしょ」
そう言われマツリは困ったように笑った。
「水嶋様とは幼馴染じゃないですか、それに私彼氏いますよ?」
「え?」
「昨日告白されまして。イケメンの告白は受けるものでしょう?」
それを聞いてリンは顔が引きつるのを感じた。目の前で不思議そうにしているマツリを見て兄が心底可哀想になった。
兄がこの幼馴染に恋心を抱いているのに気づいていたからだ。
ほ、本気でお兄ちゃんのこと私が貰ってやらなきゃダメかも……。
と、唸りながら真剣に考えたりした。