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ライクとラブ

沢山のブックマーク、評価、感想ありがとうございます。脳を空っぽにしてお楽しみください。脳を空っぽにして、気付けば出来ていた5話なので。

「好きです!付き合ってください!」


 その言葉の衝撃たるや、足元がぐらついて一瞬宇宙にでも飛ばされたのかと思った。

 危うく勢いでオーケーしかけた。


 小山さんは笑顔で俺に抱き着いたまま返事を待っている。


「えっえっえっ、その好きっていうのはライクじゃなくてラブのことだよね……?」

「? 男と女でラブ以外あるの?」


 本気で不思議そうな顔をしている。そりゃああるでしょう。


「あると思う。というか俺は小山さんのことラブじゃなくてライクだから付き合うことはできません。ごめんなさい」


 正直展開がトントン拍子すぎてついていけない。いくら相手が肉食系女子とはいえ、今まで告白されたことなんてなかったのになぜ今回は告白されたのか分からないから困る。


 それにまだ小山さんのこと何も知らないし、もし性格が合わなかったりしたら嫌だ。

 俺は彼女が欲しいし、小山さんは超可愛いが、やっぱり相性は大事だ。


 俺の返事を聞いて、小山さんは俺からパッと体を放して目を泳がせて慌てだした。

 手を振ったりおでこにやったりしてかなり取り乱しているように見える。


「あれ?え?ちょっとごめん、あたしなんか勘違いしてたかも」

「か、勘違い?」

「うん、だって、え?あたしのことタイプって言ったよね?」

「それは、うん」

「それってあたしとはエッチしてもいいっていう意思表示だよね?だから告白しろって言ってるのかと思って……」


 ななな、なんだってー!


 つまり彼女からしたらこっちが先に告白したようなものだったらしい。


 全力で首を振り否定の意を伝える。

 それを見て小山さんの顔がボッと真っ赤になった。


「うそっうそぉ!」

「顔がタイプっていうのと、付き合おうと思うっていうのは割と距離があると思いますが……」

「え、その付き合うってさ、もしかして買い物に付き合うって意味の付き合うだったりする?」


 なんかトンチンカンなこと言ってら、と思ったが、その後の言葉を聞いて言いたいことが分かった。


「だって付き合う=エッチする、じゃん。だったら顔がタイプだったら付き合うって話になるんじゃないの?」


 なるほど。


 誰とも付き合ったことがない俺と肉食系女子との認識の違いだった。

 というか肉食系女子の認識って付き合う=エッチなの?だとしたら女子のほとんどが……いや、これ以上はやめよう。


「俺にとっては付き合う=デートするってイメージだった。だからそういう意味では俺が言ってるのは買い物に付き合うって意味の付き合うです」


 まあゆくゆくはエッチなの希望だが、まずは買い物とかのデートからだろう。


 俺の言葉を聞いて小山さんは口をあんぐりと開けて呆然とした後、小さな声で言った。


「……だったら、さっきの告白は取り消してください……」


 なかったことにされました。悲しいような気がする。


 まあ告白の話はなんかお互いイメージが違ったからもうこれでお流れになったとして、少し純粋に疑問なので尋ねる。


「買い物の方の付き合うなら、告白は取り消しなんだ?」

「うん……だって自信ないもん。そりゃ女の子なら一度は夢見るけどさぁ~。友達と買い物中とかに、隣にいるのが男だったらな~って。でもそんなの現実では上手くいくわけないから……」

「でもデートってするんでしょ?」

「うん、男の子が歩くから、その後ろを荷物持ち」


 う、嘘だろ……。付き合うって実態はそうだったのか……。そりゃ学校の男女関係そのままならそんな感じでもおかしくないけど、実際付き合うと陰で仲良くイチャイチャしてんのかと思ってた……。


 俺が勝手にショックを受けてる横で「ちょっとまって……」と小山さんがなにやらぶつぶつ呟いている。


「水嶋君はあたしのことライクっていった……それに女の買い物に付き合いたがってる変人だ……これ……ほんとだったらヤバい……だってだってそんなのずっと憧れだったし……」

「あの~どうかした?」


 声をかけるとハッとこちらを見て、一語一語まるで確認するように話しかけてきた。声が若干震えてる気がする。


「付き合ってください……」


 それついさっき聞いたが……。しかも断ったが……。


「だから、ラブじゃないから付き合えませんって」

「ライクなんだよね……?だったら友達として、買い物に付き合ってくださいぃ!」


 目をかっぴらいて、尋常じゃない様子でそう言った。一世一代の告白をしたかの如く緊張している。


「それならまあ……喜んで」


 俺がそう言うと、ヒュッと息をのんでから一瞬後、小山さんは飛び上がって「うわーーー!やったーーー!」と叫んだ。


 顔を真っ赤にしてぴょんぴょん飛び跳ねながら「プラトニックだ!プラトニックだ~~~!」と驚くほどの取り乱しようだ。


「ね、ねぇ、さっきは買い物の方の付き合うなら自信ないから嫌だって……」

「うん!そう思ったんだけどぉ、ちょっと考えたら、水嶋君なら大丈夫かもって思ったの!」

「な、なんで?」

「だってぇ、他の男子とまるきり違うもん!怒鳴らないし、舌打ちもしないし、目を見て会話してくれるし、笑顔だし、優しいし、だから一緒に買い物して楽しいかもって!」


 なんだこの女の子!俺の理想が飛び出してきたのか!?


 俺をポンポン褒めてくれるし、かわいいし、一緒に買い物行くだけでこんなに喜んでくれるし。


 この時、俺は告白を断ったことを激しく後悔した。


 そう、小山さん「ラブ」になってしまったのだ。


 だが今更やっぱ恋人として付き合ってくださいとはとても言えない……。失望されるような気がする。勇気が出ない。

 これが恋の駆け引きってやつなのか!?


 ぴょんぴょん飛び跳ねる小山さんを横目に、恋愛の機微を知り、少し大人になった気がする俺だった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公ままならないですな(((*≧艸≦)ププッ
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