イケメンの激怒と肉食系女子
沢山のブクマ、評価、感想まで、ありがとうございます。正直、今が一番楽しい時期なのかなと思います。変に注目を浴びて過度な期待をされているわけでもなく、といって読んでくれる人はしっかりいるという感じで。好きなペースで書きますので、お好きなペースで読んでくださると幸いです。と考えてぼーっとしていたら4話が出来ていました。
空気が冷え冷えになったテーブルで三枝君は腕を組んで不満そうにこっちを見ている。
「……あのさぁ水嶋君。なんで女なんかに優しくするの?」
「えっ」
「ずっと気になってたんだよね。この後ろにいる女どもに話しかけられた時の対応なんかも優しすぎでしょ」
別に特別優しくしているという気はない。紳士に振る舞おうとは思ったけどそれは自分がそうしたかったからしただけだし。
理由があるとしたら「女子と仲良く話したいから」という一点に尽きるがそれを言うと軽蔑される気がするのでやめた。
「別に優しくはしてないと思うけど……普通っていうか」
「その普通ってさ、男子に対しての普通でしょ。女子に接する時の普通じゃないよ」
……それを言われると弱い。
これは俺の変なところだと自覚しているが、男と女で態度を変えたくないという思いがある。「女子と仲良く話したい」というのも「対等な関係で」というニュアンスで思っている。
三枝君がイラついた声色で言葉を続ける。
「男子と女子で同じ態度だと失礼でしょ?男子のこと尊重してないのって話じゃん」
「まぁ……それは」
「もし君が女子だったらぶん殴ってるけどね」
「……」
こ、怖いよぅ……。
人と喧嘩なんてろくすっぽしたことがないのにこんなイケメンに睨まれると何も言えなくなる。
三枝君の後ろの女子たちも気まずそうにこっちを伺っている。もうどっか行きたいだろうにタイミングを逃して可哀想だ。
三枝君は俺が何も言わないのに更に怒りが盛り上がってきたようだ。
「僕が怒ってるのはね、キミみたいに甘い態度をとるやつがいるせいで女どもがつけあがるからだ!」
俺は絶句した。これ以上場の空気を冷やしてアイスでも作る気なのか三枝君は。
「調子に乗って男子席に勝手に入ってきたり、身分ってものをまるで分かってない!」
怒りが止まらない三枝君はとうとう立ち上がって大声で怒鳴った。怒りの矛先が女子たちに向いたようだ。
彼女たちはもう青ざめてうつむいてしまっている。声を出さず泣いている子もいる。
俺だって男子だ。生まれてこのかたずっと優しい環境に慣れきっているから怒りを向けられるとそれだけでブルブル震えてしまう。
だが泣いている人がいるのに何もしないというわけにはいかない。三枝君を止められるのは同じ男の俺だけだ。
意を決して止める!
「ちょ、ちょっと三枝君。流石に言いすぎだよ!」
俺の言葉に三枝君は振り向いて噛みつくように怒鳴った。同時にテーブルを「ドン!」と拳で叩かれたのでつい悲鳴を上げてしまった。
「言いすぎなことあるもんか!!!」
「ひゃあぁ!」
「ひゃあぁ!」というのが俺の悲鳴だ。こんな声が出るなんて自分でもびっくりした。
三枝君は俺の悲鳴を聞いて一瞬固まった後わなわなと震えだした。
「ぼ……僕が男としてしっかりしろと説教してるという時にキミはぁぁ!そんな女みたいな悲鳴を上げて申し訳ないとは思わないのかぁぁ!!」
「ごめんなさいごめんなさいぃ!」
……その後チャイムが鳴るまで怒られた。俺が情けなく謝るのを見て、女の子たちが泣くのも忘れてポカンとしていたから無駄ではなかったと思おう。
~~~~~~~~~~
三枝君の意見は男子としてそれほどおかしくはない。まあ少し過激だったし、「身分差がある」という意見まではっきり口にするのは珍しいが、実際女子は男子より立場が低いことは間違いない。
ただ、俺は俺の好きなように女子と接したいなぁ、と思いながら廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。
振り向くとさっき三枝君の後ろにいた女子の一人が立っていた。泣いていた女の子だ。
「水嶋く~ん♡さっきはありがとね~♡」
泣き止んですっかり元気を取り戻したらしい。胸に手を当ててなにやらクネクネ動いている。
「ああ、いいよ別に。俺が彼を怒らせて巻き込んだみたいなもんだし」
ほんとに巻き込んだだけだが、お礼は受け取っておこう。
というかこの子は男子に様付けも敬語もしないんだな。
珍しいほうだがいないというわけではない。敬語で話されないのを嫌う男子がいるというだけで、別にルールではないから何も問題ない。
むしろ俺としてはため口のほうが距離が近い感じがして嬉しい。
マツリの野郎とか、昔はため口だったくせにいつの間にか敬語になってやがった。
目の前の女の子はニコニコ笑顔で俺にすり寄ってきてそのまま俺の腕を取った。
なるほどこの子は……俺の大好物の肉食系女子だ!!!
「水嶋君ってかっこいいよねぇ~。あたしタイプかもぉ~♡」
ビバ肉食系!!!
腕にグイグイと、割と控えめなおムネを押し付けてくる。上目遣いでこちらをのぞき込んできてクラッと来るほどかわいい。
だが俺は肉食系にあまりいい思い出がない。話しかけてきたと思ったら、一言二言話すと変な顔して静かになってしまうからだ。
「こちらこそ、あなたがタイプです。お名前は?」
「……アハッ……昼ごはんの時も思ってたけど本当にちゃんと喋ってくれるんだ〜……」
スルッと腕を放して少し離れてしまった。うつむいて口をもにょもにょ動かしている。
まただ。何が悪いのか知らないけどいつもこうして静かになられてしまう。
……と思った途端、顔をパッと上げて
「小山くるみです!」
と言って飛びついてきた。俺の胸に顔をうずめて「えへへへタイプなんてさぁ~あたし初めていわれちゃった~♡」と笑っている。
えぇ!なんか知らんけど好印象なんだけど!
俺がハグの感激に身を震わせていると、小山さんが顔を上げて更にとんでもない爆弾発言を繰り出した。
「好きです!付き合ってください!」