幼馴染と登校
男より女のほうが多く生まれるというのはこの世の常識だ。その比率はなんと1:20らしい。
女性は皆肉食系であり、性欲もすごいそうだ。小さい頃は、母親に「女なんて皆ケモノですから気を付けなければなりませんよ」と教えられぷるぷる震えていたものだ。
それがなぜ「モテない」などということで悩むハメになっているのか――――。
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「行ってきまーす。」
玄関を出て学校に向かう。今朝はよく晴れていて気持ちがいい。
「おはようございます水嶋様」
「おう、おはようさん。マツリ」
玄関前には幼馴染の小日向茉莉がいた。高校が同じなので一緒に登校するのが日課となっている。
「カバンをお持ちしますよ」
「それはいいよ」
そう言って二人並んで歩き出す。話題は昨日一緒に対戦したゲームのことだ。
「てかお前やっぱスマ●ラ強すぎねぇ?」
「ふふっ」
「お前のピカ●ュウ強すぎなんだわ」
「水嶋様のマリ●が少々弱すぎなのでございます」
「口が過ぎるぞ……許せねぇ……」
蝶よ花よと育てられた男子にその言葉はあまりにも非情だ。傷つく俺を横目にマツリはニコニコと笑っている。
「カバンは持たなくていいからスマブ●は手加減してくれよ」
「ス●ブラを手加減することだけは嫌です」
「なんでだよ」
ゲーマーの譲れないところらしい。俺のツッコミに「アハハッ」と笑った。
マツリとは性格が合うし話してて楽しい。まあゲームの実力差がありすぎることだけは不満だがそれもいい。
なのになぜ、なぜ彼女は俺と付き合ってくれないのか……。いや、フラれたわけではないんだけど告白は女からするもんだし告白してこない時点で惚れられてないのは明らかだしな……。
「……なぁ」
「なんですか?」
「俺の顔ってブサイクか?」
「とんでもございません!貴方様の顔は天使のように愛らしく小鳥のように純真で……」
「正直に」
「可もなく不可もなくって感じです」
「あ、そう」
だよなぁ……。
マツリの率直な意見を聞き俺はため息をつく。可もなく不可もなくなら何でモテねぇんだろ。男で彼女がいないやつなんて他に聞いたことないのに。
……いや本当は分かってるんだ。男でモテないなんてありえない。見た目も幼馴染に言わせれば最低ではないらしいんだ。だとしたら性格に致命的な問題があるとしか考えられない。そんなにダメなのか俺の性格は……。
急に落ち込んだ俺を見てマツリが不思議そうに声をかけてくる。
「どうしました?」
「いや……。なんでモテないんだろって思ってな……」
「……まぁ、ちょっと変わってますからね水嶋様は……」
そう言ってマツリは苦笑している。
「他の男性の方と雰囲気が違いすぎて慣れなきゃ戸惑うだけですね」
「そうなのか。自分自身からしたらそんなに違うと思わんけどなぁ……。無自覚に女の子を遠ざける話し方とかしてるんだろうなぁ……」
そろそろ本気で自分自身を見直す時が来たようだ。
「……私はそのままでもいいと思いますけどね」
そんなことをいってくれる幼馴染がいじらしいが、俺はもっといい男になってやる。
高校二年。青春真っ盛りの俺は彼女が欲しいのだ。