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闇より舞い落ちるひとひら  作者: レムウェル
6/40

戸惑いのコンツェルト1


『………いだ……』


 ……い……


『ま…しょ……つ……だが……』


 ……い……や……


『ほ……は……いま……』


 ……いや……


『どうせ………は……』


 いや!


『本物には……い……』


 いやいやいや!


『所詮は作り物だ。壊れたらまた作ればいい』


 いやぁぁぁぁぁ!!


 ……アタシハ……"何"?


 アタシハ……アタシハ……絶対ニ許サナイ……


 コンナアタシニシタアイツヲ……


 アタシハ絶対ニ許サナイ……。







「アキ!」


 ……は……


「アキ?」


 ……あ……は……


「ア~キ~?」


 ……あたしは……


「アキ!」


 ……あたしは一体……


「アキ?」


「……?……っっっうひゃぃっ!い、いいいいいきなり目の前に出てくるなぁ!」


「いきなりとは酷いな。何度も呼んでるんだけど?どうかした?」


 怪訝な顔でそう問いかけてくる凪の顔を見て、自分が何をしているのか思い出す。あたしは凪の仕事にくっついて来ていたのだ。


 そして移動中にふと頭を過ぎった『あること』に思考を占領され、どっぷり深みにはまっていたのだった。


「あ、ちょっと……あの、か、考え事してたの……」


「ふーん……ここから先は結構危険が伴うから、考え事は後にした方がいいよ。それと、俺から半径1メートル以上離れないように」


「分かった。気を付ける」


 そう言って頷くあたしを見て安心したのか、凪は再び前を見て歩き出した。あたしはその後ろを着いていく。


 ……知られたくない……アキはアキだと言ってあたしを受け入れてくれている凪には、絶対に知られたくない。


 最近、以前とは違う夢を見る。いや……あれは夢なんていう曖昧なものじゃない。あれは記憶……おそらく生きている頃のあたしの記憶……。


 あれにどんな意味があるのかは分からないし、正直なところ内容そのものにはあまり興味がない。問題なのは、その記憶の中のあたしの心だ。信じたくない……自分の中にあんなどす黒い部分があるなんて……。


 あの部屋でくすぶっていたときの敵意なんて、この前凪が言ったとおり可愛いもんだったと今更ながら理解した。あれは悪意なんていう生温いもんじゃない……あれは殺意だ。それも生半可な殺意じゃない。ひと一人殺したところで到底収まるとは思えないほどの、ドロドロとどす黒い、底無しの憎悪を孕んだ殺意だった。


 あたしは目の前を歩く凪に目を向ける。出会ったばっかりのときはただただウザい奴だった。幽霊相手に愛だ恋だと騒ぎ立てる、ちょっと痛い人でしかなかったはずだった。それが今では……。


 だから知られたくない。あたしがこの世に存在する意味を与えてくれた凪には、あたしの中に、このどす黒い感情がくすぶっていることは絶対に知られたくない。


 そう……絶対に……。



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