未来へのファンファーレ2
な…………ぎ…………
「……ああ。それはもうしようがない……」
な……ぎ……
「多分これしか方法はないから……」
なぎ……
「ああ、だからその辺はお前に任せる……」
凪……
「俺としては、その後の事が心配なんだ……」
凪?
「ああ……アキの事はお前に任せる。後のことは宜しく頼むよ朱美……」
「凪!!」
あたしは、急激に眠りから覚めて飛び起きる。
「ん?起きたの?」
「え?あ……う、うん……」
いつも通りのあっけらかんとした凪が、あたしの横を通り抜けて、サイドボードの扉に手を掛ける。中のお菓子を取り出すつもりだろう。
「な……ぎ?」
そんないつも通りの凪の背中に、そう唖然と声を掛ける。
「ん?どうしたの?」
さっきのは……聞き間違い?いや、それにしては……
「え、え~と……」
「ん?」
煎餅をパクつきながら、にこやかに尋ね返してくる凪を見ていると、やっぱりさっきのは夢か幻聴だと自分自身に言いたくなる。
でも……ううん!やっぱりあれは聞き間違いなんかじゃない!
あたしはそう結論付けると、キッと顔を上げて凪に問い掛けた。
「凪……何か隠してない?」
「何かって何を?」
相変わらずの凪の態度に、問い詰めようという覚悟が揺らぐ。しかしなんとか勇気を出して疑問をぶつけた。
「朱美さんに何を頼んだの?『後のこと』って何のこと?」
「ん?ああ、電話聞いてたんだ?」
やっぱり……あたしはコクリと頷いた。
「ほら、今夜アキの身体を作るだろ?その場所の確保を朱美にお願いしたんだよ」
「え?」
思い描いていた反応とは違う、相変わらずの凪の態度と、自分の思考外のその台詞に、あたしは一瞬返す言葉を失った。
「だから場所の確保を頼んだの」
「え、え~と……此処じゃダメなの?」
「ただ肉体を作り出すだけだったら此処でも構わないんだけど、今回の場合はそれだけじゃ済まないだろ?」
「だろ?って聞かれても……」
「肉体作って、魂込めてハイおしまいってわけにはいかないんだ。作り出した肉体が、人間の肉体としての役割をキチンと果たしてくれるのか……これは主に生物学的な話な?心臓や肺、胃や肝臓がキチンと正常に動いてくれるか、欠損部分は出なかったのか、免疫機能は正常か、子供を授かる機能はキチンと備わっているのか……この辺は俺の手には負えないんだ。ちゃんとした病院で検査して、問題ないかを調べなくっちゃね」
凪はそこまで語り終えると、肩をすくめながらため息を吐いた。
「それに生き返った後のアキの戸籍なんかをどうするかなんかも考えておかなくちゃなんなかったんだよ。あ、アキは今後『紫藤亜紀』として生きていくことになるから」
「へ?」
何かのついでみたいにサラリと言われたもんだから、あたしは一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「……え?ええっ~!」
「そんな驚くなって。ちょっと考えれば分かるだろ?」
「だ、だって紫藤さんは、死んだことになってる筈でしょ!?ど、どうやって……」
「まぁその辺は色々やり方があるんだけどさ、今回に関しては、朱美が『紫藤亜紀』の死亡届を出してなかったから、思いの外簡単にいきそうなんだ」
「え?何で?まさか、出し忘れ?」
「実はあの時、『紫藤亜紀』の死亡を確認してるのは朱美だけだったらしいんだ。朱美が病院からいなくなった直後に的場が亡骸を持ち去ったから。あの病院は俺ら能力者の御用達だし、『紫藤亜紀』には身寄りがないし……てな訳で、朱美が病院の方には口止めしてたらしい。まぁ朱美自身、亡骸を見つけるまでは『亜紀姉』の死を受け入れたくなかったんだろうね。そんな訳で『紫藤亜紀』は、戸籍上はまだ生きてることになってるんだ。だから、アキはそのまま『紫藤亜紀』として生き返り、『紫藤亜紀』として生きていくことになる」
「んな、本人の知らないところで……」
そう反論したものの、『じゃあどうするの?』って聞き返されても、あたしにはそれに答えを返す術がない。
あたし自身のことなのに、当のあたしが蚊帳の外……って状況には少し引っ掛かりを覚えたが、あたしはその好意を有り難く受け取ることにしたのだった。
「あ、俺、子供は3人は欲しいんだ。一緒に頑張ろうね~」
「がぁぁぁ!んな恥ずかしいことサラッとぬかすなぁぁぁ!」
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