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闇より舞い落ちるひとひら  作者: レムウェル
19/40

レクイエムは誰が為に3


「ちちちちちちょっとぉぉぉぉぉ!」


 突然『闇』に視界を覆われ焦ったあたしは、まるで溺れかけた幼児のように暗闇の中で無意味に手足をバタバタともがいていた。


「な、何なのよこれはぁぁぁ!」


 何も見えないっすぅぅぅ!


『アキさん落ち着いて!』


「凪ぃ!どこぉ?!」


 光もないし音も聞こえない!


『アキさん!』


「ふえぇぇぇん!凪ぃぃぃ!」


『アキさん!!』


「ふぇ?」


 頭の中に鳴り響く珠を転がしたようなその声に、あたしは何とか自分を取り戻す。


「キ、キアちゃん? キアちゃんどこ?!」


 その時、右手に温かい何かがふわりと触れる。


『僕はここ……』


 あたしは、ハッとそちらに視線を向ける。最初は何も見えなかったんだけど、何か温かいものが触れてる右手に視線を向けていると、次第に小さな手が輪郭を帯び始め、次の瞬間優しい笑みを浮かべたキアちゃんが浮かび上がってきた。


「キアちゃん!ふぇ~ん、怖かったよ~!」


『もう大丈夫。僕の側にいれば安全だから』


 ひとしきり涙をちょちょ切らせて落ち着いたところで、ようやく辺りを見渡す余裕が生まれる。


「……キアちゃん!み、みんなは?!」


『ミオちゃんはフェイが傍にいるから大丈夫。凪さんと朱美さんは……僕にはちょっと分からないけど、あの二人ならきっと大丈夫……』


 少し心配そうではあったけど、キアちゃんはそう言ってあたしを安心させようと試みてくれている。う~ん……こんなに小さくて可愛いキアちゃんに、気を使ってもらっちゃって……あたしってば情けない……。


 あたしは一度大きく息を吐くことでなんとか気を取り直す。


「キアちゃん……ここはどこ?」


 見渡す限りの暗闇で、キアちゃん以外、他の生き物の存在が一切感じられない。


 あの時、床から滲み出てきた『闇』が包み込んだ次の瞬間には、あたしはこの暗闇の中でみっともなくもがく羽目に陥っていたのだ。


『ここはあの眼鏡の人が呼び出した死霊達が住んでいる世界……僕達は、引きずり込まれたんだ。ここは人の恐怖の根源が司る世界。アキさんが今見てる世界は、アキさんが一番恐れている世界なんだ』


「あたしが一番恐れている世界……」


この暗闇は、あたしが一番恐れているもの……


「そうか……あたしに取っての一番の恐怖は『無』の世界なんだ……」


『ごめんね……』


「え? 何でキアちゃんが謝るの?」


 こうして助けてもらったのだから、感謝こそすれ非難なんて出来るはずもない。


『僕、反応するのが遅くなっちゃって……アキさん、怖かったでしょ?』


 涙目の上目遣いでそんなこと言われた日にゃ……


「きききき気にしないでよキアちゃん!元はと言えば、凪があんな事口走るのが悪いんだし……あの所為で、あたしもキアちゃんの側から離れちゃった……そう!全部凪が悪い!それより、ミオちゃんは大丈夫かなぁ……」


 まだ、何か言いたそうなキアちゃんを制して、あたしはそう言葉を繋げる。


 この件で、これ以上キアちゃんに気を使わせたくない。


『ミオちゃんなら大丈夫。フェイが付いているから。僕達妖精は、あいつらの能力を見破る事が出来るんだ。僕達が触った人も大丈夫。ただ、一度『視て』しまうと、それを消すには、この空間から出てしまうか、この空間を壊してしまうかしないと駄目なんだ……』


 ホントに悔しそうに俯くキアちゃん……きゃぁぁぁ!か、可愛すぎる可愛すぎるよぉぉぉ~


「あたしは大丈夫だよキアちゃん。キアちゃんが居てくれるからもう怖くない。それより……」


 あたしは、キアちゃんに向けていた視線を外し、ゆっくりと頭を巡らす。


「凪と朱美さんは大丈夫かし……ら?あ!」


 暗闇に切れ目!凪か朱美さんかどっちかわかんないけど仕事早っ!


あたしとキアちゃんは、顔を見合わせププっと軽く吹き出し、その亀裂へと駆け出したのだった。



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