ショタ狼と赤ずきんお姉ちゃん
赤ずきんと呼ばれる女の子がおりました。
ある日のこと、母親にお使いを命じられました。行き先は祖母の家、そして荷物はワインとパイでした。
「お前さんの命より高いワインなんだから割らずに届けるのよー」
赤ずきんは、そんなアホな、と思いつつも、割らないように慎重に慎重に籠に入れたワインとパイを運びました。しかし、いつもよりゆっくりと歩いていますので、中々おばあちゃんの家には辿り着きません。
そんな様子を木の陰から見ていたのは、小さな狼でした。
「赤ずきんお姉ちゃんが、何かを大事そうに運んでいるけど……なんだろう?」
小さな狼は、ちょいとばかし籠の中身が気になりました。
「そうだ! 先回りしておばあちゃんのフリをして受け取ろう!」
小さな狼は名案を閃いたらと、急いで駆け出しおばあちゃんの家に先回りしました。
そして、おばあちゃんに温泉旅行一泊二日のチケットを手渡し、おばあちゃんを旅行へ旅立たせました。
小さな狼はおばあちゃんの服を着て、ベッドに横たわり、準備は万端です。
「ちわー! 三河屋でーす!」
赤ずきんがやってきました。
ドアを蹴飛ばし、赤ずきんがのそのそと家の中へ入ってきました。
「あれ? おばあちゃん寝て……クスッ、クスクス……!」
赤ずきんは思わず口を手で押さえました。
赤ずきんには、その拙い変装が、小さな狼であることにすぐに気が付いたのです。
なにより、机の上に『温泉行ってくる。今日は帰らない ババァ』と、メモが残されていたのです。
(何この可愛い生き物!? 今すぐ襲いたい──!!)
赤ずきんは形容しがたい情念に心をくすぐられました。
「おお、赤ずきんお姉ちゃんよ。待っていたぞ……」
小さな狼が変声でおばあちゃんの真似をしますが、どう聞いても狼の声です。しかも『お姉ちゃん』と、言ってしまった狼に、赤ずきんは更に笑いそうになりましたが、気合で抑えました。
「あれれ? おばあちゃん。ずいぶんとお耳が大きいのねぇ?」
赤ずきんが狼の小さな耳を指先で撫でました。
狼はくすぐったくて、耳をピコピコと動かしました。
「あ、赤ずきんお姉ちゃんの話を、よ、良く聞くためだよぉ……」
小さな狼はくすぐったくて、真面に話すことが出来ません。
「あれれ? おばあちゃん。ずいぶんとお目々が大きいのねぇ?」
赤ずきんは狼の顔に近付き、目と目がくっついてしまうほど近くまで、顔を寄せました。
「んん? 良く聞こえないぞー?」
小さな狼の顔が真っ赤に染まり、何も言えなくなってしまいました。赤ずきんはその様子をニヤニヤと笑いながら見ています。
「あれれぇ? おばあちゃん。ずいぶんとお口が大きいのねぇ?」
「そ、それは赤ずきんお姉ちゃんをたべ──」
「もうダメ! 狼きゅんが可愛すぎて我慢できない! 頂きまーす!!」
「──!?」
小さな狼は、赤ずきんに食べられてしまいました…………
読んで頂きましてありがとうございました!
(*´д`*)