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7。夢でもお腹は空くそうです

「うっ……んんー……」


薄暗い部屋のベッドの上で目を覚ます。


えっと、ここどこだっけ?



とりあえず体を起こして、周りを見渡してみる。


コンクリート?それとも漆喰(しっくい)かな?

打ちっぱなしの壁に、サイドテーブルやチェスト、書き物机に椅子といった簡素な家具。


シンプルな薄いカーテンが掛かった窓と、カーテンの隙間からは月明かりか街灯の光かは分からないが、うっすら明かりが差し込んでいる。

外はもうすっかり暗くなっていた。


自分の部屋ではないし……確か姉の仕事場である研究室の旅行にくっついてきてたハズだから、コテージの部屋?

いや、あのコテージは薪ストーブもついているようなウッド調の内装だった。

泊まっていた部屋もそんな感じだったし、こことは明かに違う。



だとしたら、ほんとにココどこ?


ボンヤリした頭で考えるが全然思い出せない。



さっきもあまりスッキリしない目覚めだった。

今も頭はぐわんぐわん回っているような感じだし、身体もギシギシいっている気がする。

寝る前に激しい運動でもしたっけ?


なんか夢見も相当酷かったような……



首を捻りながらウンウン(うな)ってると、ドアがガチャリと開いた。


「お、起きてんじゃん」

「気分はどうですか?」



目の前には、ド派手な猫耳お兄さんズ。




ーーうん、今理解した。

コレは夢の中だ。


寝て起きたのにまだ夢の中だった。



「控え目に言って最悪です」


言葉が悪くなってるけど気にしない。だって夢だし。


「まあそうなりますよね……転移すると体にかなり負荷がかかるので、大体皆さん体調崩されるんですよ。走っていければ良かったんですが」

「あの場合仕方ないだろー。もう陽が落ちるとこだったし」


……夢から覚めていなかったという悲しいお知らせに対して最悪の気分という話で、そういう意味で言ったわけではなかったのだけど。



「今、何時ですか?」

「ん? ああ、もうすぐ七時だな」


じゃあ気絶してからまだ一時間ってとこか。コテージを出てから半日以上経っちゃってるけど……


きっと実際にはまだお昼くらいで、湖の近くの樹にもたれてうたた寝でもしているところなハズ。


……迷ってる最中に森の中で寝るなんて、どんだけ無防備なことしてるんだろう。

お願い、現実の自分早く起きてっ。


必死で目をつぶって、体にギュッと力を入れてみる。


夢の中で「ああこれ夢だ」と気づいた時に、こうするとうまく目が覚めたりするのだ。


ーーするんだけど、何故だか今回はうまくいかなかった。



しかも力を入れた拍子に、お腹から、ぐぅ、と情けない音がして赤面する。


夢なのに空腹を感じるなんて、そんなリアリティは求めてない。



「宿の食堂で軽く用意してもらったんですよ。食べられます?」


いつから持っていたのか、青猫お兄さんがスッとお盆を差し出してくる。


水差しとコップ、それに菓子鉢のような可愛い木のお椀に入った、お粥のようなもの。


暗いからあまり良く見えないな……と眼を細めていたら、赤い方のお兄さんが手に下げていたランプを近付けてくれた。


「レモン水に、トマトリゾットです。食べやすいですよ」

「とりあえず水飲めよ! 声だいぶ掠れてるし」


水を注いだコップを渡してくれる。

見た目に反して面倒見が良いのかもしれない。


「あ、ありがとう…」


コクリ、と一口飲んでみる。

そこまで冷たくないが、爽やかな酸味がおいしい。


それにたった今自覚したけど、ものすごく喉が渇いていたらしい。

あっという間に飲み干してしまった。


そういえば森に入る時全力疾走しちゃったし。

その後も水分補給せずにうろついてたものね。


ーーはっ。寝ている間に脱水症状とか起こさないかしら?

早く起きないと大変なことになるのでは?!


嫌な想像に手元のコップをぎゅっと握り締めると、足りないと思われたのか勝手に水が追加された。


なんだか本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。


言動と見た目は色々とヤバいけども、行動はとっても親切よね。


コクコクと二杯目も飲み干して一息つくと、「リゾットはどうしますか?」と聞かれた。


「食べたいです」


素直に言ったら、二人揃って笑われた。

腹が立つのにイケメン達の笑顔は尊くて、それがまた悔しい。


「ゆっくり食べて」



渡されたリゾットはやや薄味で、少し冷めていて。


それでも半日ぶりの食事は本当にとても美味しくて、お腹と一緒に心まで落ち着いたのだった。


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