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59。城の司書はウサ耳少年でした

「あの、お話しても大丈夫なんですか?」



書庫まで案内してもらう道すがら、メイドさんに声を掛けてみる。


てっきりエリザの読心スキルを警戒して、声を出さないようにしていると思ったのだけど。


「陛下の読心スキルは範囲が狭いので。今のように離れられている場合は、私達も問題なく話せるのですよ」


あ、そうなんだ。

お城に来た時誰も一言も喋ってくれなかったから、てっきり城全体が読心の範囲内なのかと思ったわ。


「……貴女様が来られるまで、陛下は大人しく部屋で待っていられずに城中ウロウロなさっていたのですよ」


何処で鉢合わせるか分かったものではなかったので、全員念のため黙っていたのです。

そう言われて、何してんのエリザ……と思うと同時に、本当に楽しみにされてたんだなと少しびっくりする。


まあでも良かったわ。一日中一言も喋れない職場なんて、いくらお給料が良くてもブラックだもの。

エリザがブラック企業の悪徳会長、みたいなキャラ付けでなくて何よりだ。


途中すれ違うメイドや兵士の皆様に会釈をしながら、城の廊下を進む。みんな普通に挨拶してくれた。



「ーー着きましたよ。こちらです」


そう言われ、再び目の前に立ちはだかった重厚な扉を控えていた兵士に開けてもらい、中へ入る。


ドアを潜ると三階分の高さをぶち抜いたような高い天井の広いホール。たくさんの本棚が整然と並び、壁側は天井までびっしりと本が埋まっていた。

上の方の本が取れるよう移動式の梯子がいくつもかけられ、周囲を囲む様に設けられた中二階の上にも、また本棚が並んでいる。




ーーこれは。凄い、本当にすごいわ……‼︎


これらが全部お城の蔵書なの?



部屋の真ん中の辺りで立ち止まり、大きく息を吸い込む。

ーーコーヒーとバニラを混ぜたような、古書特有の甘く芳しい香り。


うわ、うわぁ……! 堪んないっ……!


これよ、この匂い! 古書店や図書館でよくある、独特の甘いニオイ。



カビ臭いなんて言う人もいるけど、私はこの匂いが大好きだった。


ああ、此処なら何日だって通い詰められる……。なんならここに住みたいくらい。



「……ふふ、気に入られましたか?」

「ええ、とっても……!!」


勢い込んで返事をしたら、メイドさんに笑われてしまった。……ちょっと恥ずかしい。


でも、本当に素敵な場所だ。



それにしても……お城の蔵書、思っていた以上の規模だった。

ここからどうやって目当ての本を探せばいいのだろう。

分類コード……は貼っていないわね。パソコンもないから、検索システムなんかもないだろう。


当てもなく探していたら、それこそ何年掛かるか分からない。



ひとまず案内してくれたメイドさんに聞いてみる。


「あの、迷い子に関する資料を探したいのですけど。どの辺にあるとか分かりませんか?」

「申し訳ありません、私は普段ここには入りませんので……ですが専任者がおりますので、その者に聞けば分かりますわ」


専任……? あ、確かエリザが司書に話を通しておくとか言っていたから、司書さんがいるのよね?

レファレンスなんかもやってくれるかしらーーだったらとても心強い。


ならまずその司書さんを探さなきゃ……って見渡す限り本棚で、カウンターなんか見当たらないんだけど……。


「あの、その司書さんは今どこに……「ーー誰?」!?」



メイドさんにその司書さんの居場所を聞こうとしたところで、遠くからハスキーな声が掛けられた。


微かな足音がして、こちらに近づいてくるのが分かる。



しばらく待つと、小柄な十二、十三歳くらいの美少女……いえ少年かしら? とにかく中性的な()()()()()が本の奥から姿を見せた。


綺麗なショートボブの青みがかった銀髪に、銀縁メガネの奥は同じ色の瞳。

頭にはこれまた同じ色の、垂れたウサギ耳ーーほんとにウサギもいたんだ。レアって言ってなかったっけ。



「何か用?」


胡乱げな目で、とてもぶっきらぼうに聞いてきた。


これ、明らかに歓迎されてないわね。逆に新鮮?



「女王陛下からの御命令ですーー彼女に、望みの書物を探し与えるようにと」

「陛下からのーー? へぇ……あのロリババアを、どうやって誑かしたんだか」


そう言って目を細めてこちらを見てきた。


うわ、この子相当口が悪いわ。ウチのネコ達が可愛く思えるレベルって凄い。


引き攣る口元を何とか戻しながら、よろしくお願いしますときっちりお辞儀をする。



下げた頭を戻すと、目の前二十センチの距離にウサギさんが詰めていた。


ひゃうっ?! ち、近いって!

ここの動物達、もれなく距離感おかし過ぎるわよ?!



「ふぅん? ……お前、ボクと同じ瞳の色してるんだな」


まあどうでもいいか、と呟きながらウサギさんは正常な位置まで戻っていったーーどうでもいいなら、至近距離で目なんか覗き込まないで欲しいのだけど。



「それで、ボクに何の用事? さっさと言ってくれる?」


「ええと、迷い子関連の資料を探しているの。何処ら辺にあるのかを教えてくれるだけでもいいわ」

「ーーああ、そう言うこと。すぐ戻るから少し待って」


そう言ってウサギさんはサッと本棚の向こうに消えて行った。


…なんか今の一言だけで、色々悟られた感があるような、ないような。


ウサギって敏い動物なのかしら。

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