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53。お城に行く事になりました

「で、ソフィー。そろそろ僕の方の謝罪も聞いてもらえます?」


そんなシアンの言葉をまるっと無視して、私はダイニングテーブルに突っ伏していた。


だってその謝罪って、十中八九女王様からの呼び出しに関してのやつでしょ?


なんかもう面倒ごとの予感しかしないし、全くもって聞きたくないんですが!



「ーーちゃんと起きて聞いてくれないなら、このまま耳許で説明して差し上げてもいいんですよ?」


ひぃっ?!?!


「ちゃ、ちゃんと聞くってば!」


…み、耳に声を吹き込んでこないでよ、心臓に悪いんだから!


昨日の件もあり、シアン相手には警戒心が(ぬぐ)えないというか……いつセクハラかまされるかと気が気じゃないんですけど!


「なら良かった。ひょっとして、マゼンタからある程度聞いてたりしますか?」

「……お城の女王様に謁見しろって話よね……」

「ええ、それです。僕ら三人とも呼び出し対象でして。朝からちょっと交渉してたんですがね……」

「なになに? まさか交渉決裂した?」


マゼンタがうへぇ、と心底嫌そうな顔で舌を出した。


「いえ、そこまでは。むしろそれなりに譲歩も引き出しました」

「へぇ? 譲歩ってどんな?」


あれ、ひょっとして思ったより良い話?


「とりあえず今回の訪問は正式な謁見という形でなく、女王が個人的に友人を招いた、という形にするそうです」

「ーーそれ、譲歩なの?」


どの道、女王様には謁見するんじゃないのよ。


「会うのは女王と宰相の二名のみで、個室に招かれ他の貴族の同席はなし。無礼講で、服装も正式なものでなくても可だそうですよ」

「正式も何も、私普段着しか持ってないわよ?!」


昨日買ったのはごく普通のワンピースでフォーマルウェアじゃないし、なんなら足元はサンダルだ。

どう考えてもお城に呼ばれるときの格好じゃない。


ついでに言わせてもらうなら、その無礼講って言葉は真に受けてはいけないやつだから!


「お、ラッキーだな! オレ堅っ苦しい服装とか苦手なんだよねー。貴族連中もキライだしー」


マゼンタ待って! だから真に受けちゃダメなんだって!

ソレあとから不敬罪とか言われるお約束のやつだから!


「ちなみに、不敬罪には処さないから安心しろとも言ってましたよ?」

「……女王様は未来視でも持ってるっていうの……」


こっちのセリフを逐一先読みされてるじゃないの、恐ろしいったらないわ。


「まーあの女王様、意外にも言ったこと守るタイプだから。不敬罪に問わないってゆーなら本当に大丈夫だと思うよ?」


……本当の本当に大丈夫でしょうね?


いくら夢でも投獄されたり処刑されたりなんて絶対嫌なんですけど!



「ううっ…念のため聞くけど、それって拒否権は」

「ねーな」「ないですね」

……ですよねー。うん、聞いてみただけだから。ショックなんて受けてないから。



「にしても女王様、なかなか好条件じゃん。逆にアヤシーよな。何か企んでんじゃないの?」

「まあ何も企んでないわけはないと思いますが……それとは別にひとつ条件をつけられましたね」

「条件?」


ええ、条件です。と言いながら、いつの間に出したのかシアンの手には懐中時計のような物がひとつ。


六十まで書かれた文字盤に長い針が一本だけで、正直どうやって時間を見るのかと思っていたら、”カチリ”と音がして反時計回りに一目盛り分、針が動いた。


え、これってーーー


「残り二十分ですか…これ以上ゆっくりする時間はなさそうですね」


そう言ってシアンがひょいっと私を担ぎ上げてーーひっ、これってまさか?!


何もなかったはずの床に光の粒子で魔法陣が描かれて、下から吹き上がる風で髪が乱れる。


「ーーじゃ、しっかり掴まっててくださいね?」

「えっ、ちょっ、待って! さっきご飯食べたばっかりでーー!」

「ええ、ですから謝罪を。ちょっと時間がないので、ここから直接行きますね」



シアンがにっこり笑う顔が最後に見えて、私は強制的に転移させられた。


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