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39。勘違いだったみたいです

「マヤさん、リュウさんっ!」



キッチンには誰も居なかったので店の方に続くドアをバンッと開けると、お茶をしていたらしい二人が驚いた顔をして振り返った。


「ソフィアさん? びっくりしちゃったわぁー。どうしちゃったの~そんな慌ててー」

「……! ま、マヤさん! 驚かしてすみません。あの、氷水と濡らしていいタオルを何枚か貸してもらえませんかっ!」


それ以上何の説明もしなかったのに、それだけでマヤさんは分かったわと席を立ってくれた。


私もマヤさんを追いかけて行こうとしたところを、リュウおじ様に止められる。


「落ち着け、嬢ちゃん。大丈夫だから」

「ーー! 大丈夫って、なんでそんなの分かるんですか!」


なんで止めるの?

ああそうだ、病院の事も聞かないとだわ! まだ開いてるとこはあるの?

早く、急いで、早くしないと……!


「分かるんだよ、今回のは大した事じゃないーー多分酔っ払っただけだ」



ーーへ? ……酔っ払った?


え、誰が……ってこの場合あの二匹だろうけど……え、何に?



戸惑いが顔に出ていたのか、おじ様が私を見てため息をつく。


「ちゃんと全部説明してやるから……とりあえずあっちで座れ」


そう言って最初にお茶をご馳走になったダイニングテーブルの方に誘導される。


キッチンには氷水を入れた桶とタオルを持ったマヤさんがいて、ちょっと困ったような微妙な笑顔で立っていた。


「ええっとぉー。上、アタシが見てくればいいのよね?」

「俺が見てきてもいいが……その場合は、マヤ、お前が嬢ちゃんに全部しっかり説明するんだぞ?」

「行きますっ、行かせて頂きますーっ!」


バッチリ面倒見るからアタシにお任せをっ! と言い残し、マヤさんは驚くほどのスピードで二階に上がって行った。ーー水、溢さないんだろうか。



「アイツ、追い討ちかけねぇだろうな……まあそんな事より、だ。ーー大丈夫か、嬢ちゃん」

「え、あ、はい。私は大丈夫です! それよりーー」


今大丈夫じゃないのは上の二匹だ。私じゃない。


「はあ……。大丈夫じゃねえだろ、死にそうな顔してる。とりあえずコレでも飲んどけ」


無理やり椅子に座らされ、目の前に氷入りのグラスに入ったお茶を出されるーーさっき、私がお二人も味見してくださいねと言って淹れておいたハーブティーだ。


少し震える指を押さえつけるように、グラスをギュッと握る。ひとつ深呼吸してからゴクゴクゴクっとお茶を喉に流し込んだ。

胃に冷たい液体が落ちていく感触がして、ふるっと身体を震わせる。


「少しはマシになったか?」

「ええと、はい……。あの、上の二人は本当に大丈夫ですか」

「マヤが見に行ったんだ、問題ない。ーーさっきも言ったが、二匹とも酔ってるだけだ」


そういうおじ様のしっぽは力なく床に垂れていた。

立派なふさふさしっぽなのに、なんだか物悲しさを漂わせている。


「……あの二人、私が帰る前にお酒でも飲んでいたんですか?」


おじ様が中々口を開かないので、こちらから思いつくことを聞いてみた。ーー多分違うんだろうな、とは思ってるけど。

話のきっかけにはなるだろう。


「いや、そうじゃない。そうじゃなくてな……嬢ちゃ……お嬢さんの飲んでる、そのハーブティーなんだが」


ーーはい?何故ここでお茶の話?


おじ様は少し天井を仰いだ後、「キャットニップ……西洋マタタビって知ってるか?」と聞いてきた。



……

…………


ーーあ、うん。なんか色々理解したかも。


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