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3。野良猫に助けを求めました

「対象外って、オマエなぁ……」

「初対面で随分なこと言ってくれますね?」


お兄さんズが不機嫌そうに目を細める。


「困ってそうなの見かねて声掛けてやってる親切な猫に向かって、使っていい言葉じゃねぇだろー」

「ーーっ! すみません!」


今のは私が悪かったです。ゴメンなさい。

ついうっかり心の声が漏れちゃったんです。

本音ではあるけど、もっとオブラートに包むべきでした!


……というか、猫って設定は譲れないんだ?


ならもう猫扱いでいいのかな? なんたって本人達がそう言うのだから。



さっき耳が動いていた気もするけど、あれはどういう仕組みなんだろう。ワイヤーでも仕込んである?

瞳孔の形まで猫そっくり。こっちはカラコンかしら。


そもそものチョイスや組み合わせの悪さは置いといて、クオリティーは最高だわ。



「さっきのはその、言葉のアヤって言うか……猫は大好きです!」

「じゃあなんでアンタ逃げようとしてるんですか?」

「逃げてません。気のせいです」


これは適切な距離を保とうとしているだけだ。


目線を合わせてくれるのは良いとしても、近過ぎる。手を伸ばしたらつかめる距離。


パーソナルスペースの侵害ってやつかしら。こんなに近いと落ち着かないわ。


「ーーはぁ。まあいいです。それで、ここで何をしているんですか」

「そーそー。なんか困ってんじゃないの?」

「……え?」


あれ、これは本当に気にかけてくれたのかな?

ひょっとして助けてもらえるチャンス?


いい歳して迷子だなんて言うのは恥ずかしいけれど、ここはさっさとカミングアウトして道を聞いてみよう。



「あ、あの……実はちょっと道に迷ってしまったみたいでして」

「なんだ、やっぱり困ってんじゃん」


……人が話している途中に遮っちゃいけないって、子供の頃に習ってないのかしら。


指摘すると盛大にブーメランになりそうだから、ここは黙っておくけど。


「うっかり森に入ってしまって、帰り道が分からなくなったのですが」

「……うっかり?」


青猫さんが呆れた目でツっこんでくる。うん、そうよね。

自分でも、ないわーと思う。

思うけど、とりあえず最後まで状況と要望を伝えさせて欲しい。


「それで元々居たコテージに戻るか、無理なら近くの街に行きたいので、道を教えていただけないでしょうか」


コテージに戻れるのが一番良い。けれど、それなりにここからは遠いかもしれない。


とりあえず街まで出れば、姉に連絡くらいは取れるだろう。


「街なら、森の周りにいくつかありますけど」

「一番近いところで良いんです。それか、お二人が家に戻られる時についでに街まで連れて行ってもらえないでしょうか」

「オレ達、野良なんだよね」


ーーノラ猫設定ですか。そうですか。


いや、気にしたら負けだ。とにかく早く話を進めたい。


「あ。ならこの近くの湖から見て、西にある街でお願いできませんか」


コテージから一番近い街は森の中の湖から西に数キロメートルのところにあるはず。


ドライブ中の教授の雑談、ちゃんと聞いておいて良かった。昨日の私グッジョブ。


「? ……ニシ?」

「……ニシって、なんですか?」


えー……。これも猫だからって設定?

猫に東西南北なんて分からないって、そういうこと?


「太陽が沈む方角です!」


実際には季節によって多少ズレるが、今の時期なら日の入りはほぼ真西だ。


「それなら城の方向ですね」

「だな。今日はどっちだっけ?」


……ん?今日は?


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