26。お友達認定されました
美女のオーナーの旦那様は従業員の飼い犬でした。
ーーそんな自分の理解の範囲外の事態に呆けていると、マヤさんがキラッキラした目で私を見つめてきた。
「……すごい、すごいわ! なんて素晴らしいのっっ!!」
ひゃいっ?!
急に肩をガシッと捉まれ、変な声が出てしまう。
「不当にヒトとの結婚を強いられるペット達に想いを馳せ、彼らの心配するなんて!」
なんて優しい飼い主さんなの……! 飼い主の鑑だわ!!
貴女って心までキレイなのねっ!
感極まったように叫ばれ、頬がヒクリっと引き攣った。
えぇーー……何から否定したら良いの?
「ね、貴女名前は?!」
あ、そういえば自己紹介すらしていなかったわ。なんか周りが動物ばかりで、つい忘れてしまっていた。
「名乗りもしていなくてごめんなさい……ソフィア・クロフォードです」
「ソフィアさんーー名前まで素敵ね!」
「えっと、割とよくある名前ですよ?」
なんなら名前の人気ランキングで常にトップテン入りを争うくらいの、ありふれたな名前なのだけど。
「そんなこと無いわ! 聡明な貴女にピッタリだもの!」
わぁお。さっきから身内も真っ青なベタ褒めっぷりだわ……
手放しで絶賛されると、なんだか背中がぞわぞわするのだけど。
ーーあと、なんだかさっきから両側から視線が突き刺さってくるのは気のせいかしら。
あれ、シアンとマゼンタ。しっぽがバッタバッタと床を叩いてて……二人ともめちゃくちゃ機嫌悪い? なんで?
何か気に入らないことでもあったのかと首を捻っていると、マヤさんにガシッと両手でこちらの手を包まれた。
あ、なんだかヤな予感がーー
慌てて助けを求めようと周りを見回すけど、二人ともなにか憮然とした表情で、ちっとも助けてくれる雰囲気じゃない。
リュウさんまでそんな彼らを見ながら考え込んでしまっている。
ーーあれ? さっきまでの異常な執着はどこ行ったの?
一応飼い主のピンチなので、できたら助けてほしいのですが!
「アタシ、ソフィアさんのこと気に入っちゃったわ! 是非お友達になって欲しいの!」
ねえいいでしょ? いいわよね?! と迫られて、今度こそドン引きする。
どうしよう、逃げたい。本気で逃げたい。
押しの強い人怖すぎる……!
やっぱりマゼンタの事を見捨てて、あの時全力で逃げ出すべきだったんだわ……!
後悔しても後の祭りだ。助けてくれる人がいない私に、この場を切り抜ける術はない。
結果、全く望んでなかったことではあるが。
私にこの夢の世界で初めてのお友達ができたのだった。




