19。おんぶはおんぶでダメでした
……
…………
………………うぅっ……気持ち悪い。
吐きそう。
私は今現在、不本意にも、ホンっとーに不本意にも!
マゼンタの背中におぶわれて、必死に吐き気と闘っていた。
「……しんどい。頭痛い。眩暈する」
「大丈夫かー? ま、あともうちょいだから! 頑張れ!」
「着いたらソファーで横になってて構いませんから」
「ぐっ……うぅ~……誰のせいだと思ってんのよ……」
「オレらのせい、かな?」
「ですね、すみません」
ーーやっぱりちっともすまなそうじゃないっ!!
広場での屋台ごはんを片付けた後。
そろそろ移動しようかと噴水の前に来た時点でイヤな予感はしたのだ。
けれど噴水に手を浸してみる様に勧められて、その水にかけられた洗浄魔法の効果に大はしゃぎしてしまい。
転位魔法陣のことをすっかりさっぱり忘れていた。
ーーだって、本当に凄かったのよ洗浄魔法!
指先をつけただけなのに、肌のベタつきや着ている服の汚れとかまで全部綺麗になるなんて!!
実体験しなければとても信じられないが、実際にサラッサラになった自分の髪を触り、茫然としながらも深く深く感銘を受けた。
この世界の公共事業スゴすぎるっ!!
現実にひとつだけ魔法を持って帰れるなら、間違いなく洗浄魔法を選ぶだろう。
例えどんなにイメージが地味だって、この効能は世界を変えると思うの!
真剣に持って帰りたい!!
自分の夢の中で何感動してるんだ、ってセルフツッコミを入れそうになるけど、感動してしまったものは仕方がない。
誰か科学で同じようなことを実現してくれないだろうかーーこれがあれば巷の働き方改革なんて目じゃないと思う。
……なんてうっかり熱弁を奮っているうちに、足元への注意が疎かになってしまい。
いつの間にやら転移魔法陣の上に誘導されていたことに、ちっとも気づかなかった。
結果、次の瞬間にはマゼンタに抱き込まれて、森の入り口まで強制的に転移に付き合わされたのだった。
そして聞いていた通りに、絶賛転移酔い中である。
ーーなんでお昼ご飯先に食べようなんて言ったんだ。わざとか。
ちなみにおんぶされているのは、お姫様抱っこを拒否したから。
何が悲しくてこれ以上ライフポイントを削られねばならないのだと、断固お断りしてやった。
……おんぶはおんぶで結構クる物だと知って、内心呻いてることは絶対教えてやらない。
うっかり力を抜こうものなら首筋に頬がくっつきそうになったりだとか。
マゼンタの髪に鼻先を突っ込んでしまって、整髪料なのかなんなのか分からない爽やか系の匂いに悶えそうになってることだとか。
気づかれたらいいように揶揄われる未来しか思い浮かばないから、不自然なまでに顔を背けて腕と背中に力を入れて姿勢をキープしている。
ううっ、疲れる……。
「ああもう、信じられない……ほんと不覚だったわ……」
「はいはい。もーいーだろー、その話?」
「全っ然良くないわ! 昨日からアンタ達にしてやられてばっかりじゃない!」
おかしいわ、私こんなうっかりキャラじゃないはずなのに。
現実だとかなりのしっかり者で通っているのに、なんで夢の中だとこうもいい様にハメられてしまってるのかしら。
……でも現実でも『平時には最強だけど非常時には滅法弱い』とは言われていたのよね……。
トラブルに巻き込まれると最初は冷静に対処しようと努めるのだけど、臨界点を突破すると一気に頭が真っ白になってしまい、パニックに陥ってしまうのだ。
自分でもマズいとは思うのだけど、そうなると全く頭が働かなくなって、後から考えるとあり得ないような酷い対応をしてしまう。
ーーつい昨日も、迷いやすいと注意されていた森に走り込むなんて暴挙をやらかしたところだし。
……うわぁ。
私って、自分で思ってた以上にダメダメだったのかも。
非常にツライけど、そろそろ自分自身への認識を改めた方がいいのかも知れない。頑張って気をつけよう。
ーーコレに関して、頑張って何とかなった試しがないけど。




