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134。はじめてのデート

ーーああ、神様。

どうして私は、自分の飼い猫と恋人繋ぎで街を歩いているのでしょうか?



冒頭から現実逃避真っ最中って感じになってしまったけど、今日はシアンとデートーーの予行演習をしている。



「ソフィーはデートは初めてなんですか?」

「ええそう、だから何処に行けばいいかも何をすればいいかもさっぱりで」


だからこその予行演習のつもりなのだが、本番さながらというかなんというか。


必要ないと固辞したにも関わらず、今日の私はエリザの、というかお城のメイドさん達の手によって、これでもかというくらいに磨き上げられていた。



「一緒に家から出てきたらデート感も半減よねぇ。折角だから外で待ち合わせすることにしましょ!」

「それは良いアイデアじゃの! なに、城に泊まってそこから行けば良い。デェトのための身支度もこちらでバッチリ請け負うてやるからの?」


そんな楽しそうな女性陣二人の声に逆らえるわけもなく、前日はお城の客室に泊められた。


そして早朝に叩き起こされてからは怒涛の如く、やれエステだ衣装合わせだメイクアップだと追い立てられ、終わった頃にはこのままベッドにダイブしたいくらいフラフラになっていた。


だがまあその甲斐あって、鏡の中の自分は『誰だこれ?!』ってくらいの素晴らしい仕上がりではあったわけだがーー。



何度も言うけど、今日は予行演習のつもりだったのだ。


なのに髪は巻かれて編み込みのアップスタイルにされて綺麗な髪飾りがつけられているし、服装は清楚系のワンピースでなんなら化粧までされてしまった。

本番はまた今度と言ってあるのに、こんな如何にも『気合入れてオシャレしてきました!』っていうのは小っ恥ずかしくって仕方ない。


なんなら今すぐ帰りたいくらいだったのだけどーー



「僕もデートは初めてなんですが、いいものですね」

「え? まださっき始まったとこでしょ?」

「そうですが、僕のためにこんなに綺麗に着飾ったソフィーを見られましたしーー言い遅れましたが、本当に綺麗ですよ」


うっとりとした声でそう呟き、シアンが私の顔に手を伸ばして垂らした髪を一房すくった。

その手を首筋に沿わせたかと思えば流れるような動作で至近距離で覗きこまれ、慌てて視線を逸らす。


なんかシアンがいつも以上に色気を振りまいてくる気がする……心臓に悪いわ。


「そうやって髪をまとめているのも素敵です。うっすらとですがお化粧もされていますか?」

「あ、えと。お城のメイドさんに色々と勧められて、断りきれなかったっていうかーー」

「とてもお似合いです。他の奴に見せるのも勿体ないし、このまま二人きりになれる場所に……ああでも、これじゃキスしたときにお化粧が取れちゃいますよね。悩ましいな」

「ーー!? いや、そもそもキスしていいって言ってないでしょ?!」


バッと囲われた腕の中から逃げ出せば「冗談なのに」と笑われた。

ううっ……シアンが言うと冗談に聞こえないんだってば。



「それじゃ行きましょうか。今日は僕が好きに動いていいんでしたよね?」

「ええ、シアンが好きなことをしてくれていいわ。次回の参考にさせてもらうから」


お願いしますとペコリと頭を下げると、シアンがスッと顔を背けた。ーー笑いを堪えているのは震えた肩でバレバレなのだが、墓穴を掘るだけだから突っ込まないでおく。



「お昼はまだですよね? 席を予約してあるので先に食べに行きましょう。その後で少し買い物に付き合ってもらってもいいですか?」

「もちろん! お買い物って何を買いに行くの?」


シアンと買い物とか全くイメージつかないんだけど、どこに行く気だろう。

本屋さんとかなら一緒に楽しめるけど、武器屋さんとかに連れて行かれたらリアクションに困るな。


「まだ秘密です。先に言ってしまったら面白くないでしょう?」


そう言いながらちゃっかり手を繋ぎ直したシアンと街を歩く。



今までだって二人で出かけることもあったし、外では大抵手を繋がれていたはずだけど。

デートだと思うと途端に落ち着かない気持ちになるのはどうしてかしら。



ーーでも、うん。悪い気分じゃないわね。


「猫とデートなんて、改めて考えると変な感じ」

「迷い子のあなたからすればそうでしょうけど、すぐに慣れますよ」


だってこの後本番のデートもしてくれるんでしょう? とシアンが嬉しそうに笑うから、私もつられて笑みを返した。


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