133★ 教えてあげる義理はない
「ホント、変なヤツーー相手にどう喜んでもらうかばっかり考えてるし」
残されたクレイは手元のクッキーを食べ切って、指先をぺろりと舐める。
目の前のバスケットにはだいぶ減らしたとはいってもまだまだたくさんのお菓子が残されていて、その多くはチョコレート味だった。
(自分が楽しむ、って発想にいかないのはなんなんだろうね)
本人にとっても初めてのデートなのに嬉しくて緊張するとかでもなく、ただただプランについて悩んでいる。
恋とか愛とかの甘い雰囲気が欠片もない。あれじゃデートじゃなくて単なる接待だ。
(あの猫たち、同棲までしておいてちょっと努力不足だったんじゃないの? まあ知ったこっちゃないけど)
ソフィアが飼い猫たちに恋愛感情を持っていないのは、クレイにとっては都合がいい。
正式にどちらかと付き合うようにでもなったら、ソフィアはもうクレイの休憩室に一人でくるようなことはなくなるだろう。
そうなればこうやって好きなお菓子を内緒で差し入れしてもらえる機会もなくなってしまうし、何よりもそれはクレイにとっては唯一ともいえる茶飲み友達をなくしてしまうということで。
(お菓子が食べられなくなっても困るわけではないし、アイツが来ないならむしろ静かになって良い気もするけどーー正直面白くはないよね?)
クレイのその気持ちは恋愛感情からくるものではないにせよ、明らかに嫉妬だった。
だがそれを認められるほど、クレイは素直ではない。
(だから、正解なんて教えてやらない)
デートなんて、ただ一緒にいて楽しんでくれればーー笑ってくれればいいのだと。
男の方が好きな子に望んでいることなんてそんなくらいのものだとは、クレイは気づいていても教えてやらないのだった。
クレイ視点が書いてみたかっただけです。うん、満足。




