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130。黙秘権は行使できません

目の前のエリザは、この世界に残りたいなら多少の犠牲は覚悟しろ、と言ってきた。

何かを得たいならその分捧げなければいけないものもあると。


その目はいつになく真剣で、冗談を言っているようには見えない。


私はーー



「それなら残りたくないわ」

「えっ」

「えっ?」


びっくりした顔で見てきたエリザを私も驚いて見返してしまった。


いや、そりゃそうでしょうよ!?

さっきの言い方だと、その犠牲を払うのは私じゃなくて私の周りの誰かだ。

それが分かってて自分のわがままを通せる人間とか、一体どこの悪女よ。


まあ私も人並みにはわがままではあるけど、そこまでして残ろうとは思ってないわよ?



ぽかんと見つめ合って沈黙した私達に、マヤさんがのんびりした声で混ざってきた。


「エリザベスは脅しすぎだし、ソフィアさんは話を聞かなすぎねぇ。まあアタシも人のことは言えないけども~」


そう言って笑ったマヤさんが「そもそもどうしてソフィアさんはこっちに残れるかどうかを聞いたの?」と聞き返してきた。



「それはーーここでの生活とか、仲良くなった人と離れ難くなったからーー」

「ええ、他には?」


うぅ、やっぱ言わなきゃいけない流れなのね。あまり言いたくない話なんだけど……。


まあ口に出さなかったところで、エリザの目の前で質問をされてしまったからにはバレたも同然だ。

読心スキル持ちってほんとズルい。



せめてエリザとマヤさん以外には知られたくないなと考えていたら、エリザがメイドさん達を下がらせてくれた。

それを合図に、しぶしぶだが説明を始める。


「ええと、そもそも私がこの世界に来ちゃった原因は、たぶんだけど私が片思いしていた人が私の姉に告白しているのを見てしまったからでーー」


もっと言えば、お姉ちゃんの「私も好きよ」という返事を聞いたから。

そして二人が恋人として仲睦まじく過ごすのを想像して、それを素直に祝福できなさそうな自分が嫌になったから。


私はズルい人間で、しかも弱いから。逃げられるものなら逃げてしまいたいと、そう思ってしまった。


その場にいなければどちらも見なくて済むと、そう思ったのだ。


「ふむ、つまり元の世界に戻って姉や自分を嫌いになるくらいならここの方がマシだと?」

「……まあ身も蓋もない言い方をすればね。お姉ちゃんをキライになることは絶対ないけど」



あとは、これはひょっとしたらだけど。


私が向こうに戻らない方が長い目で見ればお姉ちゃんも幸せになるんじゃないか、とも思うのだ。


私がいると、全てのことで自分を後回しにして私を優先してしまう人だからーー



『あなたが大人になって働くようになってこの家を出るまでは、私はずっとそばにいるわ』


そう言われたのは、私が高校生になって一通り自分でも家事やお金の管理や、生活全般が回せるようになって。

もう一人でも大丈夫だから、お姉ちゃんの好きに生きてほしいと伝えた時。


仕事も趣味も恋愛も、住む場所も時間も、姉のことは全て姉の自由にして良いのだと伝えた時だった。


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