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118★ 末路②

「残念だったなぁ、青猫の兄ちゃんよぉ! 形勢逆転ってやつだ、後でたっぷりお礼してやるからなぁ!? おい、ソイツの手足の腱を切ってやれ!」


顔を愉悦に歪ませた男がそう叫んだが、錆び猫は動こうとしなかった。


「何を、何をしてるんだっ! 早くソイツをーー」

「マゼンターー僕は兄弟と言えど、男に抱きつかれて喜ぶ趣味はないんですよ?」

「奇遇だな~、オレもそんなんねぇよ」


ちょっと面白く演出してみただけだろ~? とツマラなさそうに言って離れた猫は、艶やかな赤紫色のしっぽをパタリと振ってみせた。



「なっーー?! お前ーー!?」

「本当に頭が悪いですね……僕が姿を変えていたと教えたのに、何度も同じ勘違いを繰り返せるなんて」


マゼンタの腕を剥がして、シアンが感情のこもらない目で男を見下ろした。

これ以上痛めつけられないということで興味が失せたらしい。



「それで、そっちは?」

「終わったぜ。人質も犯人も全員まとめて城の女王様んとこに送ったし、フィアもマヤに預けてきた」

「上出来です。できることならソフィーを送るのは僕がやりたかったのですが」

「それは先に今回の件に噛んだオレの役得ってことで」


マゼンタはニンマリ笑うと、床に這いつくばった状態の男を見遣った。


先程の会話から自分たちの犯行が失敗したと悟ったのだろう、完全に放心状態で目が虚になっている。

騒ぎ出すと面倒だと、男の頭を掴んで口に銃身を突っ込み固定した。



「なぁ、コイツが主犯?」

「実行犯のリーダーではありますが、糸を引いたのはアッチの国のお偉いさんじゃないですかね」

「充分。つまり、フィアを泣かせたのはコイツってことだろ」

「……泣いたんですか? 彼女が?」

「ああ。怖かった、ってさ。ーーにしてもやり過ぎだろ、これだとオレが嬲れねえじゃん」


出血量的にギリギリだろコレ、とマゼンタが眉をひそめる。



「オレだって、お礼してやりたかったのに」

「……いいんじゃないですか。もう少し遊んでも」


自分の飼い主がこんな屑に泣かされたなんて、と冷めていたシアンの表情(かお)に苛立ちが混じる。


「女王様になるべく生かして連れてこいって言われたんじゃねーの? だからここで止めてたんだろ?」

「気が変わりました。一人ぐらい喋れないのが混ざっても良いんじゃないですかね」

「あっそ。なら遠慮なく♪」


捻じ込んでいた銃の撃鉄を上げ流れるように引鉄を引けば、男が全身をビクリと硬直させ崩れ落ちる。


実際は空砲だったのだが恐怖で気を呑まれたのだろう。白目を剥いて失神していた。



「あれ、ヤらないんですか?」

「死に掛けいたぶっても楽しくねーし? オレの分はコイツの血の量が戻ってからにすんの〜」

「申し訳ないですけど、ソフィーに触れた方の耳ならもうありませんよ?」

「ーーなるほどね、それでここまで徹底して削ったワケか」


オマエ、マジでえげつねーのな、と呆れた目で兄弟(シアン)を見る。


「当然の報いでしょう? 僕の飼い主に手を出したんですから」

「オレらの、な。ーーまあなら、オレは反対の耳落とすだけで勘弁してやろうかな」

「おや、君も耳ですか。何かこだわりでも?」


よく分からないと言った顔で首を傾げたシアンの耳を、マゼンタが苦笑いしながらちょいとツツく。

その部分は、赤黒く固まった血で変色していた。



「ーーまあ仕返しというか意趣返し?」



大事なものは一つとは限らない。


マゼンタにとっては、飼い主(ソフィア)兄弟(シアン)も同じくらい大事なのだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] 助け出せてよかった。 最初にいた猫は、シアンが変装していたのでいいのかな? シアンの耳が切られたってこと?
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