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96。レクチャーをお願いしましょう

お詫びにまた何かお菓子を差し入れる約束をして淹れ直したミルクティーを差し出すと、クレイの機嫌はあっさり良くなった。


何でもヒト型のウサギは人間から見ると大分童顔に見えるらしく、実年齢を当てられてことはほとんど無いそうで。


ーーそれって完全に引っ掛け問題じゃないの。なんか謝り損な気がしてきたんだけど?

お詫びのお菓子、またニンジンクッキーにしてやろうかしら。



「だから、今回は別に怒ってなかったでしょ」

「でも思いっきり不機嫌だったじゃないの!」

「そりゃま、気分は悪かったから……それより、何か僕に聞きたいことがあったんじゃないの?」


掛けられた言葉にびっくりして、私はクレイの顔をまじまじと見つめてしまった。

まさか向こうからその話を振ってくれるなんて。


「これがチョコレート効果ってやつなの?」

「何言ってんのかサッパリ分かんないけど、まあ美味しかったのは確かだね。気が変わらないうちに聞いた方がいいよ?」


さっきの話を有耶無耶にされたみたいで微妙に納得いかないけど、まあいいか。

早く用事を済ませないとこちらが時間切れになってしまう。



「じゃあ遠慮なく。教えてほしいのは迷い子についてなの」

「自分で調べてたじゃないか。今更僕に聞くの?」

「そうなんだけど、城の資料が膨大すぎて時間が足りないのよ」


最初はもっと簡単に調べられると思ってたのだ。

でも今までクレイに出してもらった書庫の資料はこれまでに確認された迷い子達の一人一人の記録のみだった。

迷い子なんて格好の研究対象になりそうなものなのに、体系的にまとまった資料が()()()()()のだ。

ーーまるで、迷い子についての研究が禁止されているみたいに。


その辺の事情は正直私にはわからない。

お茶会の最中に心の中で疑問を浮かべてもエリザは何も答えてくれなかったから、正面切って聞いても教えてくれないだろう。

個別の記録を地道に調べていくにしても毎日書庫に寄れるわけでもないし、シアンとマゼンタも忙しいから何時間も調べ物に付き合わせるわけにはいかない。


だから、もう手っ取り早く知っていそうな人にレクチャーしてもらうのが良いのではないかと思ったのだ。


「クレイ、書庫の本の内容は一通り把握してるって言ったじゃない。なら迷い子の資料も全部目は通してるんでしょ? 傾向とか、共通して言えることとか、そういうのを教えてほしい」


エリザは色々把握しているだろうし、シアンやマゼンタも何か知っていそうな気はする。

でも、その三人はどうも私に帰ってほしくない様子でーー聞いたとしても、率先しては教えてくれない雰囲気なのだ。

マヤさんは焦らなくても大丈夫と繰り返すだけだし、クロエさんには聞ける機会がそもそもない。


だから、今のところこの件で頼れそうなのはクレイだけだ。

彼には私が帰るのを止める理由がこれといってないはずだから。


「これについては、クレイしか頼れる相手がいないの。だから」

お願いしますと頭を下げると、カップを戻すカチャリ、という音が響いた。



「ねえ……そもそもさ。本気で帰りたいと思ってるの?」


思ってもいなかった質問に不意を突かれて慌てて顔を上げると、感情の読めない灰色瞳が、眼鏡の奥から私のことをじっと見据えていた。

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