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七十八話 人妻もいい

 




「ふぅ…楽しかったな」


「きゅいっ!」


 エマはまだ乗りたそうにしているが……今日はここまでだな。あとは…



「お土産買うか」


 エマと初めて来た遊園地だ。ちゃんと来たっていうことを残したい。


 お土産屋さんに入り気に入ったものを買っていく。ストラップや食べ物……あっ。


 俺は一つのぬいぐるみに手を伸ばす。

 この遊園地のマスコットキャラになっていたトラのゆまちゃんだ。エマと名前も似てるし、これはエマ用に買おう。


「エマにこのぬいぐるみをプレゼントだ」


「きゅいっ!」


 会計に進み商品を受け取る。

 お店を出るとすぐにエマはぬいぐるみを甘噛みして大事そうに小さな手で抱えた。


 気に入ってくれたようで何よりだ。


「エマー、写真撮ろうな」


 俺とエマとぬいぐるみを写してスリーショットだ。


「……かわいすぎ」


 しばらくエマとじゃれていると10分前となった。


 俺たちは握手会の会場に足を運ぶ。


 向かった先は広場だ。


「………多くね?」


 あきらかに100人では収まらない数がいた。

 まぁ…みんな券は買わずに見に来ただけかもしれない。


 自惚れるな俺。

 俺は今でも一般ピーポーだ。



「うわぁぁぁぁぁんっ…!おかあさぁぁぁぁん…!」


 子供の声が広場の端っこから聞こえた。

 その場に行ってみると一人の男の子が泣いていた。


 周りはどう対処していいのかわからないのか見てるだけだ。


 俺はその子の前でしゃがみ…


「どうした?坊主。母さんとはぐれたのか?」


「うわぁぁぁぁぁんっ!」


 そう聞いてみるが泣くだけで返答はしてくれない。こういう時はエマの出番だ。


「ほら。エマでも見て愛でろ」


「きゅい!」


 エマが鳴くと男の子の視線はエマに固定された。

 エマが気を遣ったのか自分から男の子にすりすりしにいった。


(…気を遣えるエマもかわいい…)


 男の子はすっかり泣き止みエマを優しく撫でていた。


「母さんとはぐれたのか?」


「……うん…」


「そうか…。なら俺たちと一緒に探すか」


「…いいの?…」


「もちろんだ。なぁエマ?」


「きゅいっ!」


 エマが返事するのを見てぱぁっと笑顔になった。


「…エマちゃん…ぎゅっとしてていい?」


「いいけど、男ならもう泣くな。そんなんじゃ好きな子にも振り向いてもらえないぞ」


「……うん!」


「母さんがどんな服を着てるとか、髪の色とかわかるか?」


「えっと……白い服だったよ…」


「上も下もか?」


「うん」


 そうか。なら見つけやすそうだな。

 そう考えた時


「えー。本日は急遽開催されることになった握手会に参加していただき誠にありがとうございます。ただいま…準備中ですのでもう少しお待ち下さい」


 舞台に立っている男がそういった。

 だが…その顔には焦りが見える。




 ………俺か。

 俺がいないからだ。



「よしっ。坊主。俺についてきてくれ」


 手を繋ぎ舞台を目指す。



「ちょっと!困ります!勝手に上がられては…!」


「大丈夫です。このイベントは俺との握手会ですから」


「「「「「「「え?」」」」」」


 係員も観客も含めみんな呆然としている。

 責任者の爺ちゃん誰にも伝えてないみたいだ。



 変装を外す前に…


「すみません。この子が母親と逸れてしまったみたいなんです。特徴は上下白い服装です。心当たりがある方…探すのを手伝ってもらえないでしょうか」


 シーーーン


 沈黙が訪れた。


 どうしたものか……



「なぎ!」


 ん?なんだ?


 呼んだ人を見るとそこには上下が白い服装の綺麗な人がいた。


 おおぅ。めっちゃ綺麗な人だな。何?俺の正体に気づいたのかな。


 ちょっとウキウキしていると


「お母さんっ!」


 バッと俺から離れ綺麗なお姉さんにダイブする坊主。


 え?

 俺と同じ名前だったの?

 それより…あの綺麗なお姉さんが人妻だと…。

 めちゃくちゃ旦那が羨ましいんだが。


 まぁ…そんなことより



「よかったな!見つかって!」


 そう声をかけると


「お兄ちゃん…エマちゃん…ありがとう…」


 お姉さ…お母さんがお辞儀をしてきたので俺も返す。



 さて。

 マイクを係員さんから預かり



「あらためまして皆さん、こんにちは。この握手会に呼ばれました……」


 そこで帽子とマスクを外す。


「奧崎なぎです。お集まりいただいてありがとうございます」


 しばらくの沈黙の後…


「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」」」」」」」」」


 遊園地内に大絶叫が轟いた。

 観客も係員さんもみんな叫んでる。


 あっ。バイキングの係員さんもいる。



「えー、今日はこの子…エマと一緒にこの遊園地に遊びにきてたんですが…縁あってこうやって握手会をすることになりました」


「きゅいっ!」



 パシャ


 …パシャパシャパシャ


 …パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


 大勢の人がスマホを構えている。

 何人かはどこかへ一目散に走り始めたりしていた。



 挨拶はもういいかなと思い係員さんに握手会の順番などは任せる。

 裏側に降りてその会場に向かう。


 時間が押しているため、もう始めるという。




 1人目は女の子だ。


「ありがとうございます」


 笑顔でそう言い握手をすると…


 バタンッ


 倒れた。

 係員さんがその少女を運んでいき、また次の人が来る。


「ありがとうございます」


 1回目と同じように微笑みながら握手をする。

 案外握手会って楽だな。こういう簡単な作業を続けるのは得意だ。


 バタンッ


 また倒れたのを係員さんが運んでいく。

 その後も何十人と握手をしていく。

 男女比は3:7ぐらいで女性の方が多い。

 …握手する女性のほとんどが倒れたりふらつきながら出ていくものが多かった。

 ラスト2人になった。

 入ってきたのは…綺麗なお母さんとなぎだった。


「お兄ちゃん…すごい人なの?」


「んー名前は広がってるけどすごい人ってわけじゃないよ」


「そんなことないです!!」


 うおぉ!びっくりした。


 そう言ったのはお母さんだ。


「あっ…すみません」



「大丈夫です。そう言ってもらえると嬉しいです」


 かあぁっと顔が真っ赤になりしゃがんでしまった。


「お前、俺と同じ名前だな。でっかい男になれよ」


 なぎの頭を撫でてお母さんとも握手をして握手会は幕を閉じた。






 今は車で帰路の途中だ。


「楽しかったようですね」


「はい。楽しすぎてもうくたくたです」


 エマはぬいぐるみを抱いて膝の上で寝ている。

 ツブヤイターに今日撮った写真をアップする。


 今日はいろんなことがあったな。遊ぶのがこんなに楽しいことだとは知らなかった。


「狭い世界で生きてたんだな…」


 これからはもっと色々なことに挑戦していこうと思う。まずは……


 寝る。


 疲れからかぐっすり眠れた。





読んでいただきありがとうございます。

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[一言] 其処はさぁ…男9割でデュフデュフ言わせないと
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