七十五話 話すぐらいええじゃないか
地上に出ると…予想通りというか逃れられないというか…記者だらけだった。
もうこのあとの運命を悟ったよ。
真琴も同じ状況だと考えると笑えてくる。
手短にランキングのことで知っていることを話してすぐさま家に帰った。
お風呂に入ってまた外に出る。換金のためだ。
今回の探索で獲得したものは大まかに言うとスクロールと宝石、装飾品だ。
売るのは宝石以外だ。
受付に全てを渡す。スクロールの中で珍しいものはオークション行きだ。
「お待たせしました。サソリのネックレスが40万円、海宝の腕輪が4つで120万円、提出してくださったスキルスクロールが7つで4500万円、計4660万円になります。お確かめください」
おぉ。結構もらえた。
オークションに出すスキルスクロールを3つ受付に預かってもらい書類にサインをする。
探索者ってめっちゃ儲かるな…。最高の仕事だ。命がけだけど。
というか家にあるお金の量がえげつない。たぶん40億ぐらいある。
18歳でこんだけ稼げるってすごいな。
そろそろ使い道を考えないと…。
そういえば俺18歳になったんだ。早いなぁ。
感慨にふけっているとまた記者が集まりだした。
本部内はざわざわとしだし人だかりも多くなっていく。
(…はぁ…)
めんどくさ。全部真琴に丸投げしようと思う。
縮地を使って外に出る。
家に帰りツブヤイターを開いて70階から100階までの情報をツイートしていく。
かなり量があるのでいくつかにわける。ただ探索者は未知のものを追いかける職業だ。あまり詳しく教えすぎてもいけないので宝の情報や脅威ではなかったものは省いていく。
ツイートし終わるとすぐにコメントが返ってきた。ただそのコメントのほとんどがツイートにはあまり関係ないものだった。
「安全マージンって知ってるか?」「普通パーティで挑むんだぜ?」「常識教えたろか?」「1位おめでとう」「キチガイ」
などなど…。
どういうわけか探索者としての心構えや常識なんかを言う人が多かった。
あっという間にそれは広がっていきコメント数はツイート5分で1万を超えた。
「朗報wこのツイート攻略本になった件w」
なんてものもうたれていた。まぁ確かに色々書かれてはある。
みんな楽しそうなのでよかった。
スマホを閉じてさっき考えていたお金の使い道について考える。
望遠鏡は買うとしてもめちゃくちゃ余るだろう。貯金という選択肢もあるが…父さんに「若い時にお金は使え。使いまくって見聞を広げろ」って言われたことがある。この意見に激しく同意なので使う以外に選択肢はない。税金なんかでかなりの額取られるがそれでも今後それ以上に稼ぐわけで…。どうしよ。
まさかお金の使い方で悩む日が来ようとは…。
やることをあげていこう。
川越と松山に寄付
望遠鏡を買う。
……
だめだこりゃ。
使いたい時が来るまで保留だな。
プルルル
電話だ。
「はい」
『今から社長室これるか?』
「大丈夫です。行きますね」
『ああ』
何やら話したいことがあるみたいだ。
コンコン
「入っていいぞ」
「失礼します」
「疲れてるところ悪いな」
「いえいえ…それで何かご用ですか?」
「ああ。用件は二つだ。1つ目は如月真琴に関してだ」
ほうほう。社長もあいつの強さに気づきましたか。
「…スポンサー契約に誘ったんだが…断られた」
「へ?」
予想外の言葉が出てきた。
「どうして…」
「…お前とはライバルだから同じところにはいたくないんだとよ。あとは…メリットがあまりないって言われちまったぜ」
…ははは。やっぱ意識してるのか。
楽しいなぁ。
「…ゴホンッ!まぁ確かにメリットないですね。あいつ魔剣持ってますし」
「…は?」
どうしたんだろう。素っ頓狂な声発して。
「…この前、世界初の魔剣が発見されたってニュースでやってたよな?あれ如月真琴か?」
「…そうですよ?言ってませんでしたっけ。めちゃくちゃ有能ですよ」
そう返した瞬間勢いよく顔を近づけてきた。
「頼む。お前から説得できないか?」
できなくはないだろうけど…
「嫌ですよ。ライバルですから」
真琴がそう言ったなら俺も認めようと思う。
しばらく見つめ合い……先に社長がおれた。
「…二つ目だ。おまえのツイートを見た。70層からは探索の方法が変わってくるだろう。下手をすれば…死者の山ができる。その対策におまえは何を考えている?」
「まずマジックバックかポーチがないと進めないでしょう。ただ探索者全員に配るだけのものもありませんし値段も高く手がつけれない。つまり何が言いたいかというと…手詰まりです」
笑顔でそう言い切った。
社長は呆れ半分の目で見てくるが…しょうがない。
「……アイシャの作ったのを格安で探索者協会に売るのはどうだ?もちろん足りない分は俺がアイシャに出す。70階以降に潜るパーティに一時的に貸し与えて攻略を進めてもらうのもありだと思うんだが…どう考える?」
「まぁ…無難な方法ですね。協会を説得できればそれでいいんじゃないですか?」
「そこは大丈夫だ。…今のおまえ抜きの最前線知ってるか?」
「知りません」
即答で答える。
「おまえの従姉妹が66階層まで行ってるみたいだぞ。新宿も同じぐらいだ。そのほかも50階を超えているパーティがかなりいる。アイシャには最短でマジックバックを2個作ってもらいたいわけだが…」
「どうでしょうね。本人に聞いてみないと」
「なら聞くか」
「待ってください。俺が電話します」
電話しようとする社長を止める。なんでかって?
女の子と話すのなんて滅多にないんだから!こういうことぐらいしてもいいだろ!
プルルルルルルル
『はい』
「ごめん夜遅くに、元気?」
『元気ですよ…っ!なぎ君はどうですか?』
「アイシャの声聞いてたらもっと元気になったよ。それはそうとダンジョン連れて行けなくてごめんな」
「……っ…。だ大丈夫…です」
照れてらっしゃる。
ウブで可愛いなぁ。
「近々ダンジョン行こうな!それじゃあまたな」
「はい!おやすみなさい」
プツーン
「ふぅ……アイシャ元気っぽかったです!」
「このバカやろう…っ…!何気軽に挨拶からちょっと口説いてダンジョンの約束して切ってんだ!目的あったろうがっ!」
「そういえばそんな話もしてましたね」
ゴツンッ!
ゲンコツくらった。
社長がアイシャに電話して確認をとっている。
「2個作るのに6日ほどだそうだ。容量が小さいのだったら半分で作れるみたいだ。だが協会に売るわけだから大きいのが好ましい」
「あー。それなら由衣に電話して70階行かないように言っときましょうか?それなら先に新宿の方に1つ作れますし」
「わかった。それでいこう」
こうして緊急社長との会議は終わった。
エレベーターが止まるとアイシャが待っていた。
「さっきぶり」
「ふふっ、こんばんは」
「どうしたんだ?こんな時間に」
「…さっき社長から電話がありまして…用事を済ませようと」
あー。今からマジックバック作るのか。
「作るのは1つでいいぞ。由衣の方には俺から伝えとくから」
「え?」
どうやら俺が知ってることに疑問を持ったようだ。
「さっき電話したろ?本当はその件、俺から伝えるはずだったんだ。だから知ってる」
「あ…っ…そういうことですか。わかりました。急ぎで1つだけ作ります」
「ああ。頑張って」
俺は部屋に入り由衣に電話をする。
『もしもし、変人さん?』
「あーもしもし美人さん?」
『……もう寝るところだったんだけど』
「すまんな。大事な用件があってな」
俺は70階層からの問題点を事細かく由衣に話した。それとまだ70階層にはいかないでほしいことも。
『そういう事情があるのね。死にたくないからそうするわ』
「ありがと。杏奈さんにも伝えといてほしい」
『わかったわ。じゃあまたねアイン』
「え?」
切れてしまった。アインってなんだ?
ツブヤイターを開いて自分のツイートのコメ欄を見てみる。
由衣がああいう皮肉のような褒め言葉を使うときはだいたい俺の周りが関係している。
コメ欄の下の方に、一位だからアインスって呼ぼう。みたいなことがかいてあった。スを省いてアインと言ったのだろう。ちなみに真琴はツヴァイ。これって確かスペイン語かドイツ語だったような気がする。
まぁ…ちょっとかっこいいかもしれない。
にへらにへらとアインという文字を頭の中で反復する。
ベッドに入ると久しぶりだからかすぐに眠れた。
エマはもうとっくに寝ていた。
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