七十三話 オールブルー?
『もうっ!あのおサルさんきらい!』
俺が竜化してからずっとこの調子だ。
前足を上げて床をぺしぺししている。
『パパが嫌がってたのに!どうして嫌なことするの!』
かなり怒っているようだ。
俺はエマを落ち着かせようとする係に徹している。
『あれがサルにとっての命のやりとりなんだよ。人間にだって嫌なやつはいっぱいいるぞ。そういう人たちに連れて行かれたりしないようにエマは見る目も鍛えなきゃな』
『むぅ〜…!でもおサルさんはきらい!』
どうにかして話を逸らすか。
『ぱ……パパのことは好きか?』
ちょっと緊張してつっかえた。
『パパは大好き!』
おぉ……ここが天国か。
『どんなところが大好きなんだ?』
『んっとね…。人間の姿も竜の姿もかっこいいしね!…優しくてエマのこと大事にしてくれるから……!』
そうか…………これが天国か。
『俺一生エマを守る』
これがヒロインだったら主人公はちょろすぎる。だがあえてちょろになってやろう。この先エマがどんな娘に育ったとしても反抗期を迎えたとしても。血反吐を吐いてでも見守り時にはサポートしようではないか。
そう心に魂に誓った。
翌朝いつもより早めに起きる。今日は100階を目指す。
階層が広くなっていくため今日中に行けるかわからないが…まぁ行けなくても大丈夫だろう。
支度をして91階層への扉を開けて降りる。
「へ?」
「きゅ?」
そこはこれまでとは違う。
見渡す限り水だった。
透き通るようにきれいな水。
沖縄に匹敵するぐらい美しかった。
水面に顔をつけて覗くと
「…!?」
すごい。水深も底が見えないぐらいにはある。
魚の種類とか生息地とか知らないけどたくさんの魚がいた。魚だけじゃない…貝類も岩にへばりついている。
「……食べれるのか?」
俺は魚が好きだ。どれくらい好きかというとミカンと同じぐらい好きだ。食べ物の中では上位に君臨する。貝類も大好きだ。
服を全て脱いで全裸になる。
「エマは地上にいてくれ」
「きゅい!」
ジャボンッ
飛び込んで入る。
(あ。これ普通の水だ)
どうしてダンジョン内にあるのか不明だが…魚が食べれるのならなんでもいい。
手刀を作り近くを泳いでいた魚の首を落とす。
「ぷはぁっ!とれたぞ!」
光になって消えることもない。
炎纒を出して魚を焼く。
パリッパリッ
いい感じに焼けたので一口食べてみる。
「…!?……うめぇ…」
最高じゃねぇか。
ポーチの中には調味料も入れてきている。
「…俺、しばらくここに住むわ」
俺は天才かもしれない。
ポーチの中からワイヤーを取り出す。
「きゅぃぃ…?」
なんで持ってんの?って絶対言われた。
なんで持ってきたのか俺もわからない。
なんとなく入りそうなものは全部持ってきただけだが…まさか役に立つときが来ようとは。
ワイヤーは太いからこれで釣れるかわからないが…試してみよう。
ヒットした時にわかるように浮き袋みたいなのを取り付ける。ワイヤーの先には釣った魚の頭を取り付け……投げる。
来てくれるといいが。
20分ほど待っても釣れる様子はない。
釣りは諦めようと思った時。
チャポンっ!
沈んだ瞬間に合わせるように上に引っ張る。
「よっしゃぁぁぁぁ!かかったぜぇぇ!」
嬉しくてテンションマックスのまま全力で引く。
ザパァァァァン!!!
「…へ?」
空中に現れたのはサメだ。
しかしただのサメじゃない。15mはあるだろうサメだ。
紛れもなく絶滅したはずのメガロドンだった。
「はい!リリース!」
ザパァァァァン!!
「ふぅ…今のはみなかったことにしよう」
気を取り直してもう一度釣ろうと思ったが…エサがない。潜らなきゃいけないみたいだ。
「…怖くね?」
怖がる必要はない。たぶんメガロドンですらワンパンで倒せる。だが……あのなんの感情も込められていない目、発達した歯を見てしまうと…ちびりそう。
ダンジョンが現れる前までは普通の高校生だったんだ。サメ、蜂は今でも嫌いな分野に入る。嫌いというか怖い。
一度水面に顔をつけて見てみる。
メガロドンを探すが…見当たらない。
見当たらないからといって入れるわけじゃない。潜った瞬間にくるかもしれないし。
まじでどうしよう……。
その後俺は頭をフル回転させた。
どうしたらメガロドンに遭遇せずに魚を手に入れられるか。考え出した答えは…
「…雷帝使えば楽勝じゃね?」
シンプルにそれしかない。
これが一番有効だ。
雷纒を発動し手に溜めていく。手を水に突っ込み徐々に火力を上げていく。すると魚がぷかぷか浮いてきた。
「よしっ!」
全て回収して焼いていく。
いやぁ…最高だなぁ。ただでこんなに魚食べれるんだもんな。ここに来れば食費に使わなくて済むな。まぁ…メガロドンいるけど。
この階層も探索しなければいけない。サメが怖いからって現実逃避はだめだ。
というか思ったんだが……この階層鬼畜じゃね?
人間は陸で生活をする。もちろん水の中で移動だったり活動はできるが…暮らすことはできない。こんな階段付近にしか足場がないダンジョンとかどんだけ攻略されたくないんだ。嫌がらせだろこれ。さらには水中の中にはメガロドンがいる。
こんなん諦めたくなるわ…俺は諦めないけど。
「はぁ…進むか」
俺は馬鹿ではない。わざわざメガロドンのいる水中を進む必要はない。
天歩で足場を作り水面を進む。
ありがとう天歩。お前がいなければここは進めなかった。
ダンジョン主がもし存在していて見ているのなら「反則だろぉぉ!」とか言ってそう。
俺は常識に囚われないぞ。どんどんかかってこい。
天歩で水面を進んでいく。
全裸にポーチというファッションを添えて。
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