五十六話 たまご
今日は召喚カードを試したら実家に帰る。
正月は親戚が集まるため顔を出さないといけない。その間ダンジョンには潜れないので退屈な日が続くと思う。
ダンジョンにつき40階に転移する。
41階に降りる。草原と森のフロアだ。
「誰もいないしここで召喚するか」
MPを全部使うため入り口で留まる。
まずは竜装を発動する。
炎が身体を巻いていき竜の鱗を形成していく。
目線が高くなっていき3mぐらいで止まる。どうやら大きさは自分の思う通りに変えれるみたいだ。
『すっげ!まじでドラゴンだ』
手を見ると大きな竜の手。力強さを感じる。
竜装Lv7
竜の姿になれる。炎竜王のスキル使用可。他不可。全ステータスを1.7倍にする。ブレス、竜王の涙、飛翔、威圧が使用可。
ブレスを使ってみたいが…川越のことを考えると気安くは使えない。竜王の涙は回復のようだ。
一度解除して部分的な竜装も試してみる。
手だけをしたり足だけ…はたまた目だけだったり。色々試した後、顔だけ竜化し召喚カードを取り出す。顔を竜化していれば1.7倍の効果はあるみたいだ。
MP 243270
これを全て召喚カードに注ぐ。
注ぐイメージをすると莫大な炎がカードに吸い込まれていく。
注がれたカードは高出力の炎を纏い
キィィィィンッッ!!
と高音を出している。
(美少女!美少女!美少女!でかぱい!!でかぱい!!)
願掛けも忘れない。
全てを注ぎ終わり竜装が解けた。
「はぁ…はぁ……ふぅ…」
カードは空中で佇んでいる。
触ろうとすると真白な光に包まれた。
「…なんだ?」
光が止み目を開けると…たまごがあった。
「…たまご?」
30センチほどの真っ白なたまごだ。
孵化させるのは暖めればいいのだろうか。
なんの魔物か。
疑問が尽きないがMPゼロなため一度ダンジョンからでて家に戻る。
ベッドの毛布を膝上に敷きたまごにかぶせる。
人肌で温めればいずれ孵るだろう。
御子神さんに電話して午後1時から車を出してもらいたいことを伝える。
まだ2時間弱あるためたまごを暖めながらテレビをみる。
ニュースでは渋谷ダンジョン前の爆発や魔剣が発見されたことがやっていた。狙われたことは伏せられていたが、無力化したのが俺と真琴だというのは出ていた。
面白い番組も特にやっておらず
「…早く孵れよ」
卵に呟くが返答はもちろんない。
プルルルッ!
スマホがなった。
画面を見るとアイシャからだった。
「どうしたの?」
『…おうちくる』
出たのは千尋だった。
「えー、今忙しいから無理」
『…ならそっちいく』
…え?くるの?
ガシャッ!
「もうきてんじゃねえか」
「おおお邪魔しますっ!!」
アイシャもいた。
「…しょうがない。来ないのが悪い。………なにしてるの?」
「あっためてる」
「…フライパンでやった方がおいしい」
違うんだ。
「これは魔物のたまごだ。孵化するように暖めてるんだ」
「え?魔物…ですか?」
「ああ。召喚カードっていうアイテムを見つけてな。MP込めたらたまごが出てきた」
「そう…なんですか。かわいいのだといいですね……っ!!この宝石っ!」
どうやらショーケースに気づいたみたいだ。
「まだ4つしかないけどな。飾ろうと思ってダンジョンで出たのは置いてるんだ」
「このルビーっ!すごく色がいいです!きれい…」
(見惚れているアイシャの方が綺麗です)
視線を感じて千尋を見る。
「…なぎ、アイシャ好き?」
「……ぇ!?」
嫌いか好きかで問われたら…
「まぁ、そうだな」
「……!?」
プシュー!という擬音が似合うぐらい顔が真っ赤だ。
「…結婚」
「そういう好きじゃないぞ?友達としてだ」
全てが綺麗だし謙虚なところもいい。何よりマシュマロでアイシャへの好感度はうなぎ上りだ。
「…ですよね」
「…落ち込まない」
何やらコソコソ話している。
「!!なぎ君っ、ご飯食べましたかっ!?」
「いや…まだだぞ」
「一緒に食べませんか!?」
「いいけど…どうしたんだ?…あっ。前誘ってもらったのに行けなかったもんな。ごめんな」
「…いえっ、気にしてないです!材料とってきますね!」
そう言い玄関を出てった。
残ったのは千尋だ。しばらく沈黙が続き
「…このツイートなに?」
そう言われ見せられたのは今日の朝方に出した乳…ではなく劣化フェアリーのツイートだった。
「それか?お前にはないものだ」
「…こういうの好きなの?」
「当たり前だろ。男で嫌いな奴なんていないだろ。見ろ、800万いいねきてるぞ」
フォロワーは400万超えていた。
「…ふーん」
それだけを言い黙ってしまった。
「そういや由衣とダンジョン行ったんだろ?どうだった?」
「超可愛かった」
食い気味でそう言われた。
「強かったか?」
「強くて超可愛かった」
「……よかったな」
「うんっ!」
普段あまり表情が変わらないがこの時の千尋は満面の笑みだった。
ガチャッ!
「…今から作りますっ!好みとか…ありますか?」
「好みはないかな。でも午後一で実家に帰るから早く済ませられるものだとありがたい」
「…わかりました。炒飯にしますね!」
「ありがと」
お礼を伝える。
炒飯食うの久しぶりだ。アイシャの手料理だしかなり楽しみだ。
「…帰るの?」
「ああ、年末は家族と毎年過ごすんだ。年始は親戚の挨拶もあるからな」
「…由衣ちゃんいる?」
「ああ」
目を輝かせていらっしゃる。嫌な予感。
「…連れて「無理」って…」
頬を膨らませてらっしゃる。
子供だなぁ。
「…私とアイシャ暇」
(え、それを俺に伝えてどうすんだよ。まずお前ら学生だろ……???)
「あれ…君たち高校生?」
千尋は指をバッテンし…
「…4月からjk」
ここにきて新事実。
まさかのまだ中学生だった。
「てっきり小学生と高校生かと…」
「…許さない」
そう言うと杖を取り出し何かの魔法を放ってきた。体に当たるが…これといって変化はない。
「なんだいまの?」
「…なんで効かないの」
「今の状態異常か?耐性があるから効かないぞ。…アイシャのスキルは知ってるけど千尋はなんだ?」
「…魔導王」
「すごいな…なんでも使えるのか?」
「…うん。派生スキルも最初からいくつかあった」
(こいつもチートくさいな)
「さっきの話戻すけどお前ら暇ならダンジョン行けよ。そのチートいかせ。スポンサーもついてるんだし」
「…無理。進んでも30階からは…」
青ざめた顔だ。30階という単語を聞いてアイシャもガタガタ震えている。
相当芋虫がダメなようだ。
「…お前ら欠点だらけじゃねぇか。契約切られるぞ」
「…なら連れてって」
「自分で頑張れ」
「お待たせしました…!お口に合わないかもしれませんが…」
炒飯だ。色とりどりでバランスが取れてる。ごま油の食欲をそそるぐらいの匂い。
(絶対うまい)
3人でいただきますをしてレンゲで一口食べてみる。…思ってた以上にうまかった。
「パラパラだしめっちゃうまい!ありがとな!」
「…アイシャの料理おいしい。毎日食べる」
「…そんなっ!ありがとう…ございます」
あっという間に食べ終えてしまったのでゆっくり支度をする。
持っていくものは黒鬼とたまご。貴重品のみだ。
服なんかは実家にもいくつかある。
「…その…さっきの話なんですけどっ!私と千尋ちゃんを40階まで連れていってもらえませんか…?」
うーん…。アイシャの頼みなら考えなくもないが…。
「2人の今のレベルいくつだ?」
「…36」
「32…です!」
「…俺が帰ってくるまでに42超えてたら同行する。これが条件」
あと6日ぐらいある。たぶん簡単だ。まぁ、これも全てはアイシャの頼みだからな。千尋が睨んでくるが気にしない気にしない。
「…頑張ります!」
「…楽勝」
準備ができたので2人には出てもらい鍵を閉めエントランスに向かう。
御子神さんと合流し地下駐車場で車に乗る。
(この車…眠くなるんだよな…)
睡魔に身を任せた。
家につく少し前に起こしてもらった。
門が見えてくると見知った顔の男がいた。
父さんだ。
会うのは1年ぶりぐらいだろうか。今年で40のはずだが20代にすら見える。
車を降り
「父さん!」
と声をかける。すると目を見開き近づいてきた。
それもそうだ。
以前までの俺はマスクと帽子がなきゃ外には出なかったし出歩くことも少なかった。こうして外にいるのはダンジョンのおかげだろう。
両肩を掴まれ
「…お…おまえ…!俺の書斎のが全部なくなってるんだがっ!?」
(……そっちかよ。え…1年ぶりなのに交わす言葉がそれなの?)
「…久しぶり。書斎のだけでなく俺のも全部燃やされました。奥崎家当主として由衣に罰を与えてください」
少し逡巡して
「…!?由衣ちゃんか…………許す」
どうしてか父さんは由衣が絡んでくると全て許すか由衣に有利な方向の決断しかしないのだ。
たぶん弱みか何かを握られている。
「はぁ……父さん、御子神さんが話をしたいみたいだから」
そういい運転手の御子神さんを見ると綺麗なお辞儀をしていた。父さんが御子神さんを連れて家に入るので俺も続いて入る。
父さんたちは客間に行き俺はリビングへ行く。
「母さん、ただいま」
「おかえりなさい、男前になったわね」
会ったのつい最近だけどな。
「稼いでるみたいじゃない。由衣ちゃんから連絡くるわよ?」
「ぼちぼちだな…。夕飯になったら呼んで」
「わかったわ」
親と子の会話なんてこんなもんだ。
自室に行き暖房をつけてたまごを暖める。
今の俺の興味はこのたまごにしかない。
むさ苦しいおっさんが生まれたりゴブリンだったりしたら泣くぞ。
(ぴえん)
ってな。
最近の現代用語使ってみた。
自室のテレビでニュースを見ながらスマホをいじる。ちゃんと肌で暖めるのも忘れない。
ニュースでは最近急激に探索者が増えたことがやっていた。女性もかなり増えているらしいが男性の上昇率がすごいようだ。
探索者が増えるのはいいことだ。ダンジョンの魔物の間引きもできるし珍しいものを見つけてくれるかもしれない。
他にもダンジョンを攻略しようとするとダンジョンが魔物を召喚することが発表されていた。
確証を得たのだろう。
気になったのは北海道のダンジョンのことだ。
どうやら攻略が難航しているらしい。
かなりの探索者がいるようだが間引くだけで精一杯で深層には行けてないらしい。
渋谷ダンジョンには俺以外にも由衣や橋本杏奈、千尋がいる。新宿ダンジョンには真琴が行くと言っていたから氾濫の心配はない。
問題は大阪と北海道だ。北海道はニュースで見た通り危ない状況みたいだが大阪はどうだろうか。
今のところ大阪が危ないという記事はみないことから優秀なユニークがいるのだと思われる。
得た情報はこんな感じだ。
少し心配だがあまり気にしてもいられない。
(俺のモットーは楽しく平和にお宝集めて強くなることだからな)
夕飯までスマホをいじって時間を潰した。
読んでいただきありがとうございます。
もし、この作品が面白いと思ったら下にある評価を押していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。




