五話 いざダンジョンへ!
トイレから出ると
「ふし…じゃない。由衣!」
ジト目で見られた。
「はぁ…。気をつけなさいよね。素顔見られたらやばいんだから」
そう言われ肩をたたかれた。
普段ならまず近くには寄らせないが。ましてや肩を叩かれるなど、言語道断だが、由衣と他数人の親戚の女性はなぜか大丈夫なんだ。つまり、何を言いたいかというと。
ボディタッチし放題というわけだ。
そういう由衣も理解者。こちら側の人間だ。
由衣も昔誘拐にあったりストーカーされていた。
今ではそういうことがなくなった。
というよりできないようになった。
由衣は17歳にして若者向け雑誌の表紙を飾るぐらいの人気モデルだ。最近テレビでも取り上げられてるのをみたのは記憶に新しい。
事務所が色々と配慮してくれているおかげで今では問題が起きないみたいだ。
ん?
「なんでここにいるの?」
「はぁ。ほんとお馬鹿さんね。ここにいる理由なんてひとつでしょ」
まぁ確かに。 だがあえてここでボケてみる。
「そっか。そんなに僕に会いたかったのか。いいよ!僕が全て受け止めてあげる。さあ、僕の胸にっがぁあっ!」
蹴られた。
「そそそんなわけないでしょ!まだ心の準備というか…そういうことはもっと違う場所で…」
なんか言ってるが無視だ。
「わかってる、探索者になりにきたんだろ」
「ごほんっ、そうよ、そのためにきたの」
だがこいつは学校にも行ってるしモデルもしている。そのくせダンジョンだと。
こいつどこまで頑張るんだよ。少しお灸を据えるか。
「僕を養ってください。 …あ、間違えた。お前学校行ってモデルもしてその上ダンジョンにも潜るのか?いつか身体壊すぞ?ダンジョンでは死ぬこともあるんだぞ? よくわかってるのか?」
つい本音が出てしまった。
言いたいことと違う言葉言っちゃうのたまにあるよね。
「よく最後まで言えるわね…。貴方のメンタルの強さが欲しいわ」
伊達に17年生きてませんから。
「さっきの話だけど、ダンジョンを攻略とか下層に挑むとかそういうことは一切考えてないわ」
「ならどうして?」
「そうね。おもにストレスかしら? 仕事と貴方へのストレスを発散したいだけなのよ」
わーお。僕も原因の一種みたい。
いつか殺されないように程々にからかおう。
「そっか。由衣は探索者カードもらったらどうするの?」
「これから打ち合わせがあるからダンジョンには行けないわね」
「そっか。僕はもらったらすぐに潜るから中の様子とか教えるね」
「…ありがと」
「もう12時すぎたからもらいに行こうか」
「そうね」
僕たちは無事探索者カードをもらい駅で分かれた。探索者カードには名前、探索者ナンバーというものだけが書かれていた。僕の番号は4545だ。
特に意味はないみたいだけど好きな数字だからちょっとだけ嬉しかった。ちょっとだけ。
駅で分かれた後学校があった方と反対のほうに歩いている。
駅から4分ほど歩くと洞窟があった。
洞窟といっても地面から生えてるわけじゃない。
コンクリートの上に物、ダンジョンが置いてあるみたいな。
ダンジョンの周りに人混みができていた。
特に気にするでもなく僕はダンジョンの前にいる自衛隊の人にカードを見せようとした。
すると、
「ちょっとまって! そこの不審者みたいな子!」
声をかけられた。 僕は早くダンジョンに行きたいのに…。
まぁ人生は苦難の連続ともいうし。このぐらいのことなら乗り越えてやらんでもない。
振り向くと…
「ねえ!今からダンジョンに潜るのよね?心境などを言ってもらえないかしら!?」
インタビューみたいだ。カメラももう回ってるのかな? そうだな…。
「とても緊張していますよ。死ぬわけにはいかないですし。帰ったらあすかきら◯の限定生産版DVDも待ってますし僕は頑張りますよ!」
どう?初めてのインタビューで緊張しちゃったけど言いたいことは言えたと思う。
「勇者だ」 「やばい全国放送っ」 「同志よ」
などと一部の男子から聞こえてくる。
なんかさっきまでガヤガヤしてたのに静かになっちゃって気まずいからもう入っていいよね?
気まずそうにソワソワしてると
「「「「なぜおまえが?」」」」
みたいな視線を感じる。
自衛隊の人にカードを渡す。
どうやらバーコードで読み取るようだ。
「一階から四階までは自衛隊の人が何人かいるからわからなかったらアドバイスしてもらえ」
これも一般人に配慮してのことみたいだ。
「わかりました!」
簡易扉を開き渦の中へ入る。
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