四十話 バカはどこにでもいる
パシャパシャパシャパシャパシャパシャッ!!
めちゃくちゃフラッシュが眩しい。
これに耐えてる芸能人すごい。
記者の数は100は余裕でいる。
どうやら海外のメディアもこぞって参加しているみたいだ。
質問内容はこれからのハンストがどういった新出をしていくのかとか俺たち3人のことを質問されたり何でこの3人を選んだのかだったり。またはハゲが表に出たことだったり。まぁ色々な質問が飛んできてる。
中には失礼な記者もいて
「容姿で選んだんじゃないんですか?とても有能な探索者には見えません!」
などと言われたときは俺とロリが立ち上がった。
その記者は外に摘み出された。落ち着けと言われたので落ち着いた。
そんなこんなでそれ以降は失礼な質問とかもなかった訳だが…。
「おいっ!まてっ!」
などと聞こえたので入口を見ると親子らしき2人が立っていた。
どうやら許可も得ずに警備員を振り切り入ってきたみたいだ。
「すみませんね、社長、うちの子供をスポンサー契約していただけませんか?そこにいる3人よりはこの子の方が優秀だと思うんです」
世の中、とびきり頭のおかしいやつはいるもんだな。
「俺と契約してくれ!絶対に利益になるぞ!」
親もばかなら子もばかみたいだ。
社長もこれには溜息を吐く。
これ世界放送だぞ?
「まず貴方達は誰ですか?不法侵入ですよ」
「すみません、うちの子供が契約しないのはおかしいと思いましてね…」
「はぁ…。私たちハンストには優秀ではない人間も多くいます。ですが…。私が選んだこの3人は将来の希望なんですよ。未知のダンジョンを解明してくれるかもしれない、そう願って選ばせていただきました。この話を聞いてもまだ戯言を言いますか?」
おお。今ので見出しは決定したな。
ハンストが託す将来の希望っ!!!
みたいな感じかな。
フラッシュで前が見えない。
「ええ…ええ。私の息子もそれぐらい可能ですよ。成績優秀。ダンジョンでも20階層まで降りているんですよ」
20階層という単語を聞いてザワザワし始める。
「20階ってすごいよな?」「確か最前線じゃない?」「本当ならあの子もすごいぞ?」
などなど。記者の態度に社長も少しピクピクしている。
「……なら確かめさせていただいても?」
「…ええ…。勿論ですとも」
「…集まっていただいた皆様、これよりエキシビションマッチを行わせていただきます。ルールはどうしましょうか」
「…ええ。武器はなし。お互い素手での勝負でどちらかが降参するまででどうでしょうか」
「わかりました。おい、記者を左右へ誘導しろ…」
そう言うと警備員が記者を左右へ誘導していく。
あっという間に円形になった。この中で戦うのだろう。
相手の親はほくそ笑んでいる。隠しもせずに。
たぶんだがばか息子は格闘系のスキル所持者なのだろう。
社長がこっちに歩いてくる。
マイクを切り手に口を添えて隠すようにこう言った。
「なぎ…あいつの骨2、3本折ってこい」
マジですか。俺なのか。なぜだ。
「悪役を女性にはさせられん」
「え?悪役なんですか?」
「……いいから行ってこい」
無理やり感半端ないなオイ。
「えー、エキシビションマッチのルールを説明します。武器の使用不可、素手のみでの対決となります。どちらかが降参するまでと言うことになりました。こちらからは奥崎なぎを出させていただきます」
壇上から降りてサークルの中へ行く。
記者に手でも振ってみるか。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャッ!
めちゃくちゃ反応あった。それを見ていたバカ息子も同じようにするが少数がとるだけ。
(わかるよ。惨めな気持ちになるよね)
「お前を倒して俺が契約する!」
おぉ。宣言されちまった。
「お手柔らかに」
さらっと返す。
気に食わなかったのか怒り心頭のご様子。
2人が位置についたところではじめの合図がでた。
バカ息子ははじめの合図とともに走り寄ってきた。
(うぉぉ、遅いな。これなら低レベルだった俺でもどうとでもできるぞ)
パンチをギリギリでかわす。
次のパンチもキックも全てギリギリで躱す。
周りからは俺がギリギリで躱すことしかできないと思われてるみたいだ。
まぁそれでいいだろう。
「はぁ…はぁ…。逃げてんじゃねぇぞ!」
「わかった。次から逃げないよ」
そう言ったところ口角を上げて突っ込んできた。
全ての攻撃を避けることなく全て受け止める。
「どうした?そんなものか?」
挑発をすると
「舐めるな!正拳突き!」
スキルを使ってきた。
だがこの突きも受け止める。
ギャラリー…ではなく記者の人たちも気づき始める頃だろう。
「なってないぞ、正拳突きは…こうやるんだよっ!」
拳に2割ぐらいの力を込める。
それを一気に正面、バカ息子の目の前で止める。
バァァンッ!!
空気を打つ音が聞こえる。拳の道に風もでき周りに吹いていく。
記者達はおろか警備員、社長までもが唖然としていた。
ばか息子は床に水溜りを現在進行形で作っている。
「ありゃりゃ。勝負ありでいいですか?」
ばか息子に尋ねるが返答がない。
よくみると白目剥いていた。
失神したようだ。
「すみません、この人失神してて降参できないみたいです。起こしますか?」
「あ、ああ。起こせるなら頼む」
社長にそう言われたので…顔面を0.5割ぐらいで殴る。地面を1度バウンドしてから止まった。
(いいぞ。力加減もバッチリだ)
「う…うぅ…」
どうやら起きたみたいだ。
「あの、降参してもらえませんか?勝負ついたと思うんですけど」
「は?一発殴ったぐらいで勝負が終わる訳ないだろ!」
どうやら失神して漏らしたのは記憶にないらしい。これには記者達も
「恥ずかしくて見てられないわ」「これ以上はな…」「親は止めないのか?」
という声が聞こえてきたので親の方をみると、自分の息子の醜態に気絶してるみたいだった。
(親子そっくりだな)
「まだやるかやらないかはこれを見てから決めてくれ。社長、この大理石少々壊しても構わないですか?」
「す、少しだけなら大丈夫だ」
(大理石ってどれぐらいの力なら壊せるんだ?さっきと同じ2割でやってみるか)
拳に力を込め大理石を殴る。
バァァァァンッッ!!!
殴った所から衝撃が伝わったのかその周りも砕け散った。良い演出にはなっただろう。
「降参しないとこの拳…顔にめり込ませますよ?」
「は、はい!!降参します!」
と言われたので一件落着。
壇上に戻る前に社長に礼をして椅子に座る。
「奥崎君…すごく強いんだね…!」
(おぉ〜、私の天使ではあ〜りませんかぁ〜)
「アイシャさんありがとうございます。ただ名字ではなく…なぎと呼んでください」
「…そ…その…な…ぎ…君…」
初々しくて可愛いんだが。
「そうです!今後もそう呼んでください」
「わ…わかりました…。…私もアイシャ…で良いですよ…?敬語もいらないです…」
「わかったよアイシャ!これからよろしくね!」
「うん…!」
(この子マジで天使。金髪碧眼で気が強そうだが日本人の謙虚な気持ちも持ち合わせている。さらに恥ずかしがり屋なのか言動もいちいち可愛い。何が言いたいかというとアイシャまじ可愛いということだ)
「…きも」
「はいはい、ロリッ娘は黙ってようね」
「…怪力なのはわかった。でも私よりは下」
「怪力?あんなの2割しか出してませんが?どちらかというと魔法職ですし?」
「…言い訳…おつ」
(なんだこいつまじでむかつく)
「あーあー、エキシビションマッチを終了とする。その2人はつまみ出せ。あと掃除も頼む」
まだ会見途中なの忘れてた。
記者の人たちも俺たちを見る目が変わった。
まるで化け物を見るような目だ。
その後直ぐに記者会見は終了となった。
「最後に1人ずつ一言頼む。千尋からだ」
「……この人より私の方が強い」
そう言って席へ座った。
(こぉぉんのくそあまぁぁ!言わせておけばピーピーピーピーと誰の許可を得て最強だと思ってんだ。俺が最強だ!)
「次……なぎ」
「勘違いしないでください。自分が最強です。ここにいるこのチビは雑魚です。見栄を張りたいお年頃なんです。それでもどうか…嫌いにはならないで欲しいです。よろしくお願いします」
完璧だ。
ロリッ娘がこっちに静かに殺気を飛ばしてくる。
(そんなの気にしません。蚊ですか?蚊よりも痒くないです。なんならアリがちょこっと触れてるぐらいです)
「………次、アイシャ」
「は、はいっ!えっと…その…。が…頑張りますっ!!」
これには会場中がほっこり。アイシャファンが増えること間違いなしだ。もちろん俺はファン第一号になる。
こうしてゴタゴタ会見は幕を下ろした。
読んでいただきありがとうございます。
もし、この作品が面白いと思ったら下にある評価をしていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。