四話 不審者発見
昼食は… マクドでいいか。
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」
「ハンバーガー10個、持ち帰りで」
「!? 1000円になります」
少し驚かれた。 まぁ一人だしね。一人…。
ハンバーガー10個を受け取りどこかの公園で食べようと考えていると。
「なぎ君じゃないの。何してるの?」
と声をかけられた。
振り向くとそこには
全身真っ黒の帽子を深く被りマスクをしたいかにも不審者なやつが佇んでいた。
僕はすぐにこういった。
「店員さん、不審者です。今すぐ警察に連絡してください」
みたか。この鍛えられた不審者特定能力。
伊達にストーカーや誘拐にあってたわけではないのだ。
「ちょっと!それ言ったらあんただって不審者よっ!よくみなさいよ自分の格好!」
「たわけがっ!僕のどこが不審者なんだよ!どうみたって高校生だ……ろ……」
ガラスに映った自分を見てみる。
上下藍色のジャージにマスクに深く被った帽子。
「すみませんっ!!警察呼ぶのは勘弁してください!!ほんと一生の頼みですっっ!悪いことしてません!ごめんなさいっ!」
僕こんな格好してたんだ。やばい。マジやばい。
「あ、あの大丈夫ですよ?呼んでませんからっ!」
カウンターの前で深く頭を下げる僕に店員さんは言った。
なんと慈悲深いことか!!
「ありがとうございます!」
僕はお礼を言いハンバーガー片手にその場を後にする。
「ちょっと待ちなさいよ! どういう神経してんのよ!私いたでしょ! 話しかけたでしょ! 何美味しそうに食べてるのよこのバカっ!」
ツッコミがうるさいやつだ。
「なんですか?僕不審者とは関わるなって両親に教わったんですけど?」
「私も教わったわ。 ってそうじゃなくってなぎ君でしょ! なんで気づかないのよ!」
こいつ悪質だな。 僕の名前知ってるとは。
「私よ! 奥崎 由衣よ!」
え? 由衣? ショートカットの黒髪で少しつり目だが笑った顔が天使といわれ大人の魅力を持つ人気ナンバーワンモデルのあの由衣?
こんなツッコミうまかったけ?
第一あいつはモデルだ。こんなところにいるはずない。
一応確認はしたほうがいいな。
「そんなに言うなら証拠を見せてみろ!」
「証拠って何すればいいのよ」
う〜ん。 そうだな。
少し大きめの声で、
「奥崎 由衣の恥ずかしいエピソードを答えてみよ」
「!? 昔…庭で穴掘って…遊んでたら…逆さに落ちて抜け出せなくなったわ…」
これは僕しか知らない情報だな。
「そのあとは?」
お、ギャラリーが増えてきた。
「!? なぎ君に…下着見られながら…引っ張り出された…」
「そうそう。懐かしいね。確かクマの…へぶっぅっ!!!」
背中をショルダーバックで殴打された。
体勢が崩れて転びその拍子にマスクも帽子も外れる。
「いてててっ… おまえなぁ。背中の傷は剣士の恥っていうだろ?正面にしろ……よ…?」
どうしてか皆僕の方を向いてる。
あ。女子高生と目があった。
するとどうだろう。その子は地面にへなへなと倒れてしまった。
「も…もう…お嫁に行けない…」
なんて言ってるし。
「ちょっとっ! 全部丸見えよ!」
と言われ、まさかと思い
ズボンのチャックを確認してみる。
「あぁ、ごめんチャック空いてたんだね気づかなかったよ…。 あれ、空いてないじゃん。何が丸見え……あっ」
ここでようやく気づいた。
健全な男子高校生が丸見えと言われたらチャックをチェックするのは当たり前だと思うんだ。
僕はさりげなく帽子とマスクを拾い
「そ、それでは〜」
といって全力ダッシュ!!
もう全てを置き去りにするほどの全力ダッシュ!!
「ちょっ!待ちなさ」Bダッシュよりも全力ダッシュ!!
とにかく学校まで全力ダッシュをし、トイレに駆け込み。
「ふぅ〜」
やばいやばいやばい!
顔見られた!今日家まで帰れる?
わからないわからないわからない。
これほど焦るのにも理由がある。
これまで街で顔を見られた時、必ずといっていいほどに女性に連れて行かれる。
プチ誘拐というやつだ。
「お弁当お持ち帰りで」みたいな。
とにかく一旦落ち着こう。
まずは深呼吸だ。
「ひっひっふぅーー」
もう一度
「ひっひっふぅーー」
プランを立てよう。
まずハンバーガーを食べる。
うんうん。おいしい。
探索者カードをもらう。
そしてダンジョンに直行だ。
こんな世の中になった以上、ダンジョンまでは追って来れないはずだ。
そう信じたい。
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