三十六話 チートなんだが
「へぇ〜、なぎは視察しにきたんだね」
「今日は特にやることもなくてな、そういう真琴は?」
「僕はいつもこのダンジョンに来てるんだ。今日も探索にきたんだけど…ジャンケンに捕まった」
「学校はないのか?見た感じ俺と歳近いけど」
「その…お金がなくてね。稼ぎに来たんだ。普段は通ってるよ?」
どうやら聞いてみたところ両親が事故で亡くなってしまったらしい。親戚もおらず貯金を切り崩して生活していたが限界に達しダンジョンで稼いでるそうだ。
(俺と同い年なのに大変なんだな)
「そういうなぎこそ僕と同じぐらいでしょ?」
「ああ。今高2だ。今日やめたけどな」
笑いながらそう言うと
「どうしてやめたの?」
と聞かれた。
「探索者最強を目指すためだ」
と応えると
「なぎはすごいね。僕じゃそこまでできないよ」
「レベルを上げればいい。それだけだ」
沈黙が訪れる。
「…僕も強くなれるかな?」
そう問われた。
普段なら切って捨てるが真琴の表情はどこか危うさを感じる。
「…ここで会えたのも何かの縁だ。俺が少しは教えてやる」
「うん。ありがとう」
「よしっ。さっそくウルフを狩るぞ」
「え?本当に?」
「金がないんだろ?稼がないと食えないだろ。ちょうど正面から1匹来るぞ」
「ええぇ!!まってまって!」
そう言ってバッドを構える。
(懐かしいな。バッドで殴ってたのつい最近なんだけどな)
魔王との激戦の後から感慨に耽る時が増えた。
天変地異や現実離れした強さを見せられたからなのか。はたまた1度命を失ったからなのかはわからない。
そんなことを思っていると殺したようだ。
「この魔石一個で10円だもんなぁ」
「100匹狩れば1000円じゃないか」
「無茶言わないでよ…。僕のスキルじゃ無理だ」
そういえばスキル構成聞いてなかったな。
「スキルは何を持ってるんだ?嫌なら言わなくてもいい。プライバシーだしな」
真琴は考えることもなく
「ユニークスキルの武装庫と剣術しかないんだ」
そう言った。
「効果はなんだ?」
「入れた装備の効果、ステータスを自身のものにするだよ」
…どうしてこう会うやつはチートが多いのだろうか。1万に1人じゃないの?
でも現状使えないどころか誰かに寄生しないと装備の回収は無理だ。
ましてやこいつに金はない。協力する奴なんてゼロだ。俺を除けばな。
「提案だ。今後ダンジョンで見つけた武器、防具でいらないものをやろう。ただし……」
「ただしなんだい?」
「お前の秘蔵コレクションを貸せ。それが交換条件だ」
「…それだけじゃ足りないよ。…今後僕は君の次の強さを目指す。それでどうかな?」
(ははっ!面白くなりそうだ)
「俺の知ってる奴の中にも真琴と同じぐらいの化け物が4人いるぞ?」
ハンストと契約する残り2人に由衣と橋本杏奈。
スタートダッシュはもう終わった。真琴は武器を手に入れても強いものがないと下へはいけない。
これを覆せるかどうか。
(楽しみだな)
「そんなにいるんだ。なぎは顔が広いね。でも臨むところだよ」
「そうか。初期投資と思おう。今日は切り上げて支部に向かう」
「いきなりだね。ついて行くよ」
入り口からそんなに離れてなかったのですぐに外に出れた。
ダンジョンは駅と支部に挟まれている。
支部へ向かうが大きさに驚いた。
でかい。ビルのようになっている。
「支部に向かうって言ったけどここ本部だよ」
まさかの本部だった。
本部の役割はどこの支部とも一緒だ。
一つ違うのはオークッションの出品物はここに集まるということ。
詐欺や詐称ができないようにここで出品物を預けないといけない。預けるのは他の支部でもできるし回収も同様だ。
必ずオークションは探索者本部を通される。信用されているからあれだけの金が動く。
数ある受付の中で
「真琴。どこに並びたい?顔とスタイルと性格を考えて並べ」
そういうと目をギラギラさせ
「毎回あそこに並ぶんだ。あの人僕のドストライクだ」
そこには少し小柄な女性がいた。
身長は150あるかないか。線の細い子だが二つの山はある。Dぐらいだろう。顔は童顔だがセミロングの髪を巻いており耳にかける仕草なんかはどこかぐっとくる。
「よし。これからもあそこに並べ。絶対だ」
「わかった。いう通りにするよ」
「今日は俺も行くがな」
まじでちょっと可愛い。守ってあげたい。
「すみません、買取お願いします」
そういい俺が出したのは魔石3個。今日の分だ。
受付嬢は特に嫌な顔をすることもなく奥へ査定しに行った。
「いい子でしょ?」
そう真琴に言われうなずく。
3個なんてゴミカスもいいところ。探索者を狙っている受付嬢ならもっとひどい顔をするだろう。
「査定が終わりました。ウルフの魔石3個で30円になります」
…ちょっとはずい。30円……。
「ありがとうございます。質問なんですが武器の販売はしてますか?」
「はい。二階が武器の販売コーナーになってます」
「わかりました。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「(ぺこっ)」
最後のは受付嬢が頭を下げたものだ。真琴に。
「いい線いってるんじゃないか?あとは金があればな」
「僕もそう思うよ。なぎほどじゃないけど顔に自信あるし。それもわかってる」
談笑をしながら武器コーナーのある二階へ行く。
店員さんに
「ここで扱っている武器で一番安いものの値段と在庫数を教えてください」
「安いものは職種関係なく1万ほどです。在庫数は全てだと1000はあるでしょうか」
さすが本部だな。鍛治職人も結構いるみたいだし人材は多いようだ。
「防具はどうですか?」
「防具は部位別で値段が違います。面積の大きいもので一番安いのは1万ほどです。逆に籠手なんかは5000ほどです。在庫も武器よりあります」
なるほど。
こいつの能力は武器や防具のステータス、効果を引き継ぐものだ。特殊な効果を持っているものは別だが耐久が上がればなんでもいい。つまり高いものじゃなくてもいいというわけだ。
「一番安い防具と籠手の耐久値を教えてください」
「防具は10、籠手は5です」
「武器の攻撃力を教えてください」
「武器は20です」
(そうだな…)
「真琴。お前の武装庫は容量なしだよな?」
「たぶんね」
「なら武器をなんでもいいから10本、籠手を10個買ってこい」
そういって15万を渡す。
「…いいのかい?」
「ああ。これは投資だ。強くなって金返せ」
「…ありがとう」
そう言うと店の中へ消えて行く。
俺も暇なので刀のあるコーナーに行く。
雑な作りだがいくつか置いてあった。
ショーケースに入ってるのはどれもお高い。
手は出るが量産品を買おうとは思わない。
眺めるだけ眺めていると
「君って奥崎なぎ君?」
と声をかけられた。
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