二十話 自衛隊とエンカウント
角から覗き見るとそこにいたのは人型…じゃなく人間だった。
疑ってごめんよ僕のオアシス。
自衛隊員だろう。銃を持った褐色肌のごつい人が1人。長物を持っている女性が1人、ローブのような物をまとった者が1人。
少し遠慮気味に
「すみません…」
と声をかけると
「誰だっ!?」
と過敏に反応し銃を向けられた。
(こえぇぇ。自衛隊こえぇぇぇ)
「探索者です!銃を向けないでください!」
手を上げながら角から出る。
3人ともが呆気に取られたような顔をしているが。
「すまない。まさかこんな階層に我々以外の人がいると思わなくてな。許してくれ」
銃を向けてきた人に頭を下げられた。
銃を向ける理由もなんとなくわかる。
この人がリーダーなのだろう。仲間の命がかかっているんだ。慎重にもなるだろう。
「大丈夫ですよ、あの…皆さんはどうしてここにいるんですか?20階層の攻略はしたんですか?」
純粋に思ったことを口にする。
すると苦い表情を浮かべて
「…20階層のボスを倒すことができなかったんだ。3人が犠牲になり撤退をして上の階に上がろうとしたんだがな…。18階層に見たこともない化け物がいたんだ。どうすることもできずここで策を巡らせていたわけだ」
なるほど。まだ進めていないみたいだな。
この人の言ってることが本当なら…
「18階にいるという化け物は来るときにはいなかったんですか?」
「ああ。小さいスライムしかいなかった」
どういうことだ?僕が通った18階はあの巨大スライムだ。この人たちが言う化け物とはこいつのことだろう。だがどうして来る時は普通のスライムだったんだ?
合体して僕を襲ったとでも言うのか?
「ところで君はどうやってここへ?上の階には化け物がいるはずなんだが…」
少し期待しているのだろう。僕がそいつを倒してきたことに。
「残念ながらあの巨大スライムからは逃げてきました。本当に間一髪です」
「そうか…。君はこれからどうするんだ?」
「僕はこのまま20階層のボスを倒して転移で地上に戻るつもりですけど。ボスの情報教えていただくことって可能ですか?」
「…。君は魔法を使えるか?」
「ええ。それなりには」
少し考えてから
「情報を提供するかわりに我々も…。いやこの2人だけでも連れて行って欲しい。無理な頼みとは承知している。だが、そこをどうかお願いしたい」
と頭を地面にこすり懇願してきた。
10は歳下である僕に頭を下げ自分の命より仲間の命を優先する。
中々できることではないだろう。
(立派な人だな…)
僕が憧れる人種だ。
「わかりました。ボス部屋までの道とボスの情報をお願いします。勿論貴方も含めて行きますよ」
上げた顔には安堵の表情が見れた。
「名前を聞いてもいいだろうか?」
「僕は奥崎 なぎです。よろしくお願いします」
「奥崎…?」
「ああ、奥崎 じんさんのことを思いました?親戚ですよ」
「そうか…。じんさんの血縁者か。こちらこそよろしく頼む。俺は村中 優斗だ。こっちの女性隊員が甲賀 翼でこっちのローブが藤田 光だ」
「よろしくお願いします、奥崎さん」
「どうも…」
…。甲賀翼さんか。目は鋭いが比較的顔は整っている。愛嬌があるかと言われれば皆無だが、ダンジョン内で目の保養ができるのは嬉しい。触ることはできないけど。
「まずはボス部屋まで案内していただけますか?」
「ああ、ついてきてくれ」
その後、ボス部屋までの案内を任せ途中出てくるスライムも藤田さんが魔法で倒していた。
威力が思ってた以上に弱くてびっくりしたのは内緒。
僕はやることがないので妄想に励む。
(翼さんとスライム…。あのキリッとした表情がメス顔になるのは………。えへっえへへ)
ボス部屋前に着くとさっそく情報をくれた。
なんでもボスは2体いるらしく物理無効と魔法無効みたいだ。
魔法を撃つと効かない方が庇ってきたり、物理で攻撃しようとすると物理無効が庇ってきてとてもやりづらいみたいだ。
さらにはどちらも溶解液を使ってくるみたいで厄介極まりないとのこと。
僕の計画はこうだ。
魔法無効個体を3人に抑えてもらいその間に炎弾で物理無効個体をたおす。そのあと魔法無効個体の核を壊す。なんでも魔物は核である魔石を壊せば死ぬみたい。 まぁ、魔石が見えるのなんてスライムぐらいだと思うけど。
よしっいけるぞ!!
他の面々は少々浮かない顔だ。
たぶん僕の魔法の威力に不安があるのだろう。
「…。なぎに賭けるしか生き残れねえんだ。覚悟を決めろ」
重い言葉だ。
村中さんの言葉で覚悟は決まったようだ。
「では作戦通りでお願いします」
扉を開けてすぐに
「炎弾!」
を放ち戦いが始まった。
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