十三話 五階の秘密
その後、一億を持っては帰れないので口座に振り込んでもらうことに。
また病院内でダンジョンの秘密を話すのは不用心とのことで明日僕の家に来てもらうことになった。
スポンサーの件はじんさんが伝えてくれるみたいで後日手紙が届くみたいだ。
「なんかすごい疲れたな」
今日一日。というか昨日から色々あった。
一億にスポンサー契約に大号泣の夜。
また朝になり一億が舞い戻り、衝撃の真実、ハンストの登場。家を買うことにもなり。
「あれ?高校生だよな僕」
ちょっと非日常すぎたから普通の生活をしよう。
木刀を持ち庭に出る。
いつもやっていた素振りだ。
ここ5日間入院でできてなかったからね。
ふっ!
ふっ!
ふっ!
リズムよく体幹が崩れないように振っていく。
(至福だぁ)
ブチィ!
「いてっ!血豆がぁああ!」
翌日の朝、今日の僕の予定は川越ダンジョン5階の話をじんさんにしたらダンジョンに直行だ。
昨日の夜
「何階が今の最高到達点なのだろうか」
と疑問に思ってしまった。
もちろんダンジョンによって違うが、僕は最前線で戦っていたい。
調べたところ最高到達階層は19階みたいだ。
どのダンジョンもここで止まっているらしい。中にはもっと上に行ってる人もいるかもしれないけど。
これは日本の記録だが海外も同じようなものだと思う。
川越の20階層のボスは物理が効かないみたいで何人か犠牲者も出ているようだ。
こんなの知ってしまったら追い越したくなるだろう。僕は好きなことではトップにいたい。誰にも負けたくない。
ということで今日は下の階への階段を見つけたらどんどん降りて行こうと思う。目標10階。
携帯食料も1日分持っていくので拾うのは魔石とレアドロップのものだけに絞る。
10階層ごとに転移陣があるらしく地上への帰還もできるし入るときに10階層に転移できるみたいだ。
早く転移してみたい。
今日はこんな感じで進めていこうと思う。
ピンポーン
インターホンの音がなった。
モニターを確認するとじんさんがいたので「今行きます」と伝え玄関に向かう。
玄関から家の門までは10mほどある。
そこを歩き門の鍵を開け、じんさんを通す。
「ありがとう。 いやぁ、いつ来てもここは立派な家だね」
「そうですね。掃除が大変ですよ」
「なぎ君がしてるのかい?」
「まぁ、ダンジョンに行く以外することないので」
ここで沈黙が訪れる。
絶対学校行けとか思ってるんだろ。
そんな暇あったらレベル上げしますぅ。
玄関を開けリビングへ通す。
「適当に座ってください。飲み物麦茶でいいですか?」
「ああ、ありがとう」
自分の分は…いいか。
麦茶をコップに注ぎじんさんに渡す。
「なぎ君はいいのかい?」
「この話が終わったらすぐにダンジョンに行くので」
「そうか。ならさっそく本題を聞かせてもらえるかな?」
気を遣ってくれたのだろう。
じんさんができる大人で良かった。
「ありがとうございます。川越ダンジョンの5階層に魔物がでないようになったのは階層の魔物を全滅させたからなんですよ。ただし条件があります。『必ず一人で全滅させること』です」
そう。『一人』が重要なんだ。
じんさんがメモを取りながら聞いてくる。
「必ず一人で全滅させること…。何か要因付けることがあるんだね?」
「はい。ステータスのスキル以外に『称号』という欄が増えててそこに『殲滅者』という文字がありました。『殲滅者』をタップしたらさっき言った説明が出てきました」
「称号なんてものもあるんだね。…情報提供ありがとう。これは検討した上で公開するか秘匿するか決めさせてもらうね。それでなぎ君にはこれからは殲滅しないでもらいたいんだけど…」
「大丈夫ですよ。あんな目に遭うのはもう懲り懲りです。あっ。ちょうどその時の動画あるんですけどいりますか?」
そう。大量のゴブリンとの自撮り動画だ。
ネットにあげるの忘れてた。
「あの数相手に動画撮る暇があったのかい…?」
「逃げるので手一杯でしたよ…。たまに武器投げてくるゴブリンがいたのでスマホのカメラで後ろを確認しながら逃げてました」
「……」
開いた口が塞がらないようだ。それほど衝撃的だったのだろうか。
「その動画…もらってもいいかい?」
「ええ。SNSにもあげるつもりなので遠慮せずに受け取ってください」
僕とじんさんでSNSを交換し動画を送る。
ついでにツブヤイターで
『ゴブリンと命がけの鬼ごっこ!』
というハッシュタグで動画をツイートする。
「今日はありがとう。何かあれば僕に連絡してね。川越ダンジョン支部長だから手伝えることもあるかもしれないし」
「こちらこそありがとうございました。何かあれば頼らせていただきます」
「それじゃあまたね」
「はい。ありがとうございました」
門の前まで見送り、家へと戻る。
使ったコップを洗浄機にいれ探索の準備をする。
携帯食料をいれリュックに金属バッドと木刀をさす。もう一つのバッグをリュックに詰め込む。
今日は上下ジャージではなくスウェット。
黒と白だ。これなら不審者に間違われることもないだろう。
マスクと帽子を身につけ、いざダンジョンへ。
読んでいただきありがとうございます。
もし、この作品が面白いと思ったら下にある評価をしていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。