十一話 一億とスポンサー?
コンコン
病室の扉がノックされ入ってきたのは母さんと講習会の説明をしていた親戚の人だ。
「母さん!僕をアインシュタインと呼んでもいいんだよ?」
「…平常ね」
「……」
どうしてだろう。呆れられてる気がする。
「身体は大丈夫なの?全治二ヶ月って聞いたんだけど…」
「大丈夫!早く発散したいぐらい元気だよ!」
「そう。無事でよかったわ」
母さんが近づいてきて僕を抱きしめた。
息子の生と死が関わっていたんだ。感動の再会なのだろう。
しばらくそのままでいると
「もう大丈夫よ、なぎ成分も補給できたしこれからも仕事頑張れるわ」
なぎ成分ってなんぞ。
僕未知の成分出してる?
やっぱアインシュタインの生まれ変わりなのでは。
「それはそうとすっかり忘れてたわ。今日なぎに話があってきたみたいなの。こちら奥崎じんさんよ」
僕は忘れてなかったけどね。
「紹介に預かりました。探索者協会川越支部長の奥崎 じんです。話すのは初めてだけど新年の挨拶で何度か顔は合わせているよね。よろしくね」
「奥崎なぎです。 よろしくお願いします」
いくら美形でも野郎には興味ないんじゃ。
美人さん連れてこいっ!
「少し二人で話したいのでまい様、席を外してもらえませんでしょうか」
「わかったわ、それじゃ仕事に戻るわね」
「いってらっしゃい」
「ふふっ、行ってきます」
扉が閉まると
「さて、いきなりだけど本題に入ってもいいかな?」
特に話すこともないしね。
「大丈夫ですよ」
「ありがとう。4日前になぎ君を川越ダンジョン5階層で私たちは発見しすぐに保護しました。その時5階層に職員が降りたのですが、そこには無数の魔石と武器が放置されていたようです。それは全てドロップ品だとも報告がありました。このドロップ品はなぎ君のものですか?」
え?どういう質問?
倒したのは僕だけど…結局拾えてないし。
「倒したのは僕ですが、気絶した上に助けられちゃいましたし。ドロップ品は拾った人のもので大丈夫です」
そういうと顔を近づけられる。
なになに!
男の顔なんてみたくないのよ!
「拾った魔石の数は524個です!つまりなぎ君は524体のゴブリンを倒したというのですか!?」
「え!そんなにいたんですね! でも今は離れてください。魔石よりじんさんの顔が気になります。僕そっち系一切ないので」
「あぁ…ごめん。 僕もないよ。 でも本当にあの数を一人で倒したなんて…」
「信じてないみたいですけど、じんさんが気になってることを言いましょうか?」
息を飲む音が聞こえる。
殲滅者の効果はえげつない。ダンジョン内に襲われないスペースができるのはこれからの攻略に役立つだろう。
「5階層に魔物は1匹もいないんじゃないでしょうか?」
「どうして…。なぎ君が原因なのか?」
「そうですね。 あそこは今セーフティゾーンになってるはずです。5Fの上下から魔物が来ることがあるかもしれませんがそれも間引いてれば起きることはありませんよね?あそこはダンジョン内にできた休憩施設ですよ」
「!?なぎ君は…どこまで知ってるんだい?」
「そうですね…。 やり方は知っていますよ」
唾を飲む音が聞こえる。
やり方をただでは教えない。教えることによって誰かが浅い階層をいくつも殲滅してしまったら初心者の人は入ることすらできなくなるし、そんなことされたらたまったもんじゃないだろう。
それに僕にとってこれは美味しい話だ。
利用させてもらうぞ。
「なぎ君、少し上司の人と電話してもいいかな?」
「大丈夫ですよ。とことん話し合ってくださいね」
「…君は肝が座ってるね、失礼するよ」
よし!!
じんさんは今上司の人にいくらまで出せるかを聞いているのだろう。他にも僕に有利な条件で進めようとしてくるはずだ。
(むおっほっほっ)
億万長者に僕はなる!!!
そんでもって〜綺麗なお姉さん方を雇って〜目の保養をして〜好きな人との〜イチャイチャパラダイスッ!!!
完璧なシナリオ。
世界が僕を放っておかないぜ!!
「…て……か…な?」
「なぎ君! 聞こえてる!?」
うぉぉ。びっくりした。
「はい、聞こえてますよ」
「よかった…。さっきの話に戻るけどね」
「うんうん」
「情報提供料で一億。さらになぎ君には世界で初めてのダンジョン探索者のスポンサーをつけることができるんだけどどうかな?」
うおぉぉぉぉぉいちおぉぉぉくぅっ!!!!
まじか。こっちから誘ったとはいえせいぜい1000万ぐらいだと思ってたのに。10倍よ?
高2で一億稼いじゃうの?
(えへっえへっへへへへ)
「はぁ…。この子頭のネジ外れてるよ…。また明日来るからその時に冷静になって話し合おう、またね」
今頭の中では将来の過ごし方しか頭にないなぎだった。
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