反撃タイム
スマホの画面タッチしたら静電気きました。コエェェ
鎧騎士は、初めて感情を手にした。
〈困惑〉という感情を。
なにしろ拳一発で死に際まで追いやったはずの人間が何事もなかったかのように立っているのだから。
「オマエ ナゼ ?」
「あーやっぱり恐ぇなぁ」
「オマエ キケン コロス」
「殺す殺す殺すってお前、それしか言えねぇのかよ。」
「モン ドウ ムヨウ」
そういうと先程少年を屠った必殺の拳を打ち込む。
「あーこうかな.....」
しかし少年はその拳に驚きもせず悠然と片手をひらけて前に出していた。
鎧騎士は今までの葛城由樹のデータから最善の攻撃方法を導き出し先程と同じレベルの拳を放った。油断も慢心もしていない。そもそも彼にそのような感情があったか不明なのだが....
しかし数秒後には少年の身体を吹き飛ばすだろうと思われた拳は何事もなかったように少年に受け止められていた。
《強奪》
「.......からのッ」
《譲与》
右腕が音を立てて粉砕された。
由樹は内心驚いていた。
.....なるほどな。こうやって相手の魔法を使えるわけか....
改めて考えると触れなければいけないとはいえチートな気がするのは気のせいだろうか。
『どうじゃ?宿主。使い勝手は?』
「ああ、なかなかいいな。今のは鎧騎士の左手に付与されてた《加撃》の魔法を奪ったわけだな。」
『そうじゃな。あと使えるのは二回じゃ。ちなみにあの鎧騎士の右手からさらに《加撃》の魔法を奪えるぞい』
「.....右手と左手に付与されてるわけか...」
みると突然腕がなくなったことに驚いたのか、鎧騎士が後ろ向きに後ずさっていた。
「悪いがサクッと倒させてもらうぜ‼︎」
翔ける 翔ける 翔ける
まるで重力がなくなったかのように身体は軽く感じた。
鎧騎士が蹴りを入れてくる。
それをすんでのところでかわす。
「......ッぶね‼︎」
開いた胸にもう一度拳をいれようと手を握る。
《譲与:加撃》
「おッッッらぁぁ‼︎」
先程の腕と同じく《加撃》を付与させた拳は軽く鎧騎士の胸を粉砕すると思っていた。
「緊急コード使用 《守護》」
だがその拳は胸の鎧をへこませるだけであった。
「......げっ‼︎」
まずいっ。そう思った刹那、由樹は鎧騎士により殴り飛ばされていた。
「......ゴフッ‼︎....な、なにが...」
『おそらくゴーレムが身の危険を感じると発動させる魔法式でも組まれていたのじゃろうな。』
......そんなのありかよ
『........ふむふむ。《守護》の魔法じゃな。どうする?宿主。』
「そんなの、決まってんだろ。奪えるものは奪うだけだ‼︎」
契約したからなのか、身体が強化されているのがわかる。
......残されているのは《加撃》一回
鎧騎士の左手はもうないから使い切っても大丈夫だな。まずは《守護》をなんとかしねぇと.....
「キケン キケン キケン キケン」
鎧騎士の方を見ると目の部分が赤く点滅している。
『ワーオコッテルー』
「気抜けるからその声やめてくれ....」
『なんじゃい。我なりにお主の緊張をほぐしてあげようとしただけじゃのに。』
「キケンキケンキケンキケンキケン」
鎧騎士が追撃をかけるべく、突進して来た。鎧騎士が一歩を踏み出すたびに地面がへこんでいく。
「ちっとは学習しっっよっうぜ‼︎」
掴みかかろうとする鎧騎士の手をすり抜け、迫る鎧騎士の胸を前に由樹は拳を突き出す。
《強奪:守護》
《譲与:加撃》
由樹の放った拳は守護の力を失った鎧騎士の胸を軽々と貫き、粉砕した。
「よし‼︎やったか⁉︎」
『お主......アホじゃろ....』
「........あ」
お約束どうりと言うべきか粉々になった鎧騎士の身体が再び集まり始めている。
「あーヤベェ!せっかく潰したのに‼︎」
『ん?ちょっと待て。どうやら戦う意思はなさそうだぞ』
見ると鎧騎士の破片は集まり終わると小さな鎧騎士が出来上がっていた。
「なんだこれ?」
奇妙なことに小さな鎧騎士は、土下座を繰り返していた。
「どう言うことだ.....」
『ほう.....どうやら洗脳が解けたらしいな。そこの子供ゴーレムは謝ってるみたいじゃぞ。さぁどうする?宿主』
どこか面白がるような声音で少女は言う。
「洗脳って......王様か...」
小さな鎧騎士は何度も何度も土下座を繰り返していた。
「......おいそこの鎧騎士。会話はできるか?」
「.......デキル デキル」
「よし。俺はお前に敵対行為をされては困る。だからお前の右手の魔法を奪うがいいな?」
「......ワカッタ」
そう言うと鎧騎士は右手を差し出してくる。
《強奪》
由樹はその右手に手を当てると鎧騎士の《加撃》の魔法を奪った。
「さて........」
「........ゴメン....ゴメン」
「ああそうだな......」
そう言うと由樹は鎧騎士を思いっきり蹴飛ばした。
小さな鎧騎士が地面を跳ねていく。
「操られていたとはいえ、お前は俺を殺そうとしたよな。殺される覚悟があってお前は俺を殺そうとしたんだろ?それを今更、許してくれとはな.....
全く片腹痛いよ...!」
再び鎧騎士を蹴る。
「........:.ゴメン......ゴメン」
着地したところをまた蹴る
蹴る 蹴る 蹴る 蹴る
かけらの寄せ集めでできた小さな鎧騎士は地面にぶつかるたびに少しずつ壊れていく。
「.......ゴメン.......ゴメン」
「........もういいよ。お前」
そう言うと由樹はつま先で鎧騎士を打ち上げ......
《譲与:加撃》
強化した脚で鎧騎士を壁に打ち付けた。
「.......なんかあっけねぇな。」
小さな鎧騎士を壁に打ち付けると壁はひび割れ鎧騎士は粉々に散っていった。
『なんじゃい。つい先ほどまでボッコボコにやられとったのに力を手に入れたらこれかい。』
「......う、うるせいやい。」
ボコボコにやられてたやつに圧倒的な力の差で勝ったら誰だって天狗になるだろうが。
『まぁよくやったもんじゃ。初めてこの力を使ってここまでうまくできるとはな....』
「だてに日々、妄想とかしてないんで。」
『うちの宿主様が日々妄想しながら過ごす件について』
............
「ていうか王城の下にこんなにでかい空間があったとはな...」
改めて見ると所々に魔法陣が書いてあったりしていい感じに厨二心に響く雰囲気を醸し出している。
『.......ん?お主今なんといった?』
「えっ?だから城の下にこんな空間あったんだなぁって。」
『.....?寝ぼけておるのか?ここが城の地下なわけなかろう。』
.........ヤバイ。嫌な予感がする。
こういう時って耳塞げばいいんだよな。うん。
『ここ...........迷宮じゃぞ?』
・・・ハイ詰んだー
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