契約
アズレンにハマってしまった。
........?
「ふう、危なかったのぅ。」
停滞した世界の中で和装の少女が立っていた。
「むーしかし10000年振りのシャバの景色がこのような場所とはのぅ.......
因果なものじゃ。」
黒髪は背丈まで伸び、一目で美少女とわかる容姿をしている彼女。
「さて、お主 死にたくないなら我と契約しろ。我ならばお主を救える。」
でも.......
「ん?契約方法がわからんのか?なら手を繋ぐだけで良いぞーあとは我に任せよ。」
その眼は彼女の雰囲気とは裏腹に黒く濁っていた。
「人の話を聞け‼︎‼︎」
ベシッ
彼女の小さな手からチョップが繰り出される。
「いってぇぇ なにすんだよ!俺これでも重傷負っ.....てん......の...に?」
慌てて立ち上がり、ついさっきまでボロボロだった身体を見回すがどこにも傷が見当たらない。
「あれ、傷が....ない。」
「ああ、それなら刻を奪うついでに治しといたぞい。てか、お主よくあの状態で生きてられたのぅ。普通の人間なら一発即死じゃぞ」
「そう言われても.....」
思い当たる節が全くない。
強いて言えば.....
「ゆ、勇者だから.....?」
するとなにが面白かったのか急に彼女は笑い出した。
「クックックック。なんじゃ異世界から召喚されて勇者だとでも言われたか?他のものがそうだったとしてもお主は違うぞ。全く魔力を感じられん。一般市民もいいとこじゃ。」
ま......まじかよ......
「俺が異世界人ってわかるのか?」
「この世界のニュースは大抵チェックしとるからな‼︎」
.......なんだそれ
「それよかはよ決めんか。我と契約するのかしないのか。」
そうだった.....なんか契約がどうのとか言われてたな......
「ちなみに我との契約を拒んだら我はこの止まった時間を戻し、お主があのゴーレムにミンチにされるのを楽しく拝見させてもらうことにするぞい。」
いや.....それ、契約する一択じゃん......
「..........お前と契約したらあいつに勝てるのか?」
「モチのロンじゃ。あのような輩に負けるようじゃこのようなところに封印されてなどおらん。」
....封印?
気になる単語が出て来たが今は自分の身を考よう。
「仮に契約したとして俺はあいつにどうやって勝つんだ?」
やっぱり異世界モノだったら何かしら能力がねぇと......
「ん?そういや説明がまだじゃったな 。では説明も兼ねて名乗るとしようか...」
....は?
そういうと彼女は仮面●イダーよろしくポーズをとり急に名乗り始めた。
「我は妖精王より【奪】の字を与えられし者!我と契約した暁にはそなたには森羅万象全てを手中におさめる能力を与えよう‼︎」
よーよーよーよー
彼女の声が洞窟いっぱいに響き渡り、反響していった。
「............恥ずかしくねぇの?」
「うっさい‼︎‼︎」
改めて.....
「奪う能力か......」
考えてみるとなかなかチートな気がするんだが.....
「まぁ、儂ならほんとになんでも奪えたが、お主はそうもいかんじゃろ。」
「どういうことだ....?」
「うむ、例えば相手の魔法を奪うとするじゃろ?で、その奪った魔法を使うには魔力が必要なんじゃ。」
「えっじゃあ魔力がない俺じゃあ奪っても意味ねぇじゃねぇか....」
「安心せい。そこは我が手助けしてやる。おそらく三回までお主の中に奪った魔法を保持してられることができるはずじゃ」
........ほうほぅ
「三回、使い切ったらどうなるんだ?」
「その魔法は相手に戻り再び相手は魔法を行使することができる。ちなみに再びその魔法を奪うことはできぬぞ?相手の身体が我の魔法に抗おうとするからな。」
「奪った魔法はどれくらい保持してられるんだ?」
「保持だけならずっと身体の中にとどめてられるぞ。魔力がいるのは行使するときだけじゃからな。」
要するに....
・相手の魔法奪える
・奪った魔法は三回まで行使可能
・使い終わったら相手の元へ
・奪った魔法の保存期間に期限なし
.........だな。
「奪うにはどうしたらいいんだ?」
「お主の場合、相手に触れんと魔法は奪えんな。なんせ魔力ないし」
..........しつこいわ。
「おい、お主ここまで聞いといて契約しないはなしじゃぞ。」
はぁ.....腹くくるしかねぇか....
「どっちみち契約しなかったらあれにボコボコにやられるだけじゃねぇか」
「クックック、まぁそうじゃな」
「なら俺が今しなければならないのはこの戦闘から生き残ることだ。そのためならもうなりふり構ってられねぇ。お前と契約してやる!」
そう言って俺は手を差し出した。
「うむ、ようやくか。では契約の儀といこうか。」
彼女はその手を両手で包み込み、胸元まで持っていった。
【其は黄泉の主 汝の望みに従い我は汝の力とならん。】
由樹と彼女の周りを緑の光が包む。
止まった世界でそれはエメラルドのような輝きを放っていた。
「.........終わったのか?」
光が薄れるとそこに少女の姿はなく、由樹1人だけが立っていた。
『うむ。終わったぞい‼︎』
「うわっ‼︎」
少女の声が身体の内側から聞こえて来た。
『そう驚かんでもいいじゃろ。契約したから我はお主の中に入り手助けするぞい。』
「なんか....身体の内側から声するのって気持ち悪りぃな.....」
『そんなもの慣れじゃ。慣れ。お主の右手が黒く変色しとるじゃろ。その手でしか奪えんから気をつけよ。』
....右手が炭化したように黒ずんでいた
「.....うわぁ」
『なーにがウワァじゃ‼︎我慢せぃ。
それよか再戦の準備はいいかのぅ?』
「正直、まだ恐いけどやるしかねぇもんな。」
『うむ‼︎その粋じゃ!宿主』
.....おお 宿主ってなんか新鮮
宿主という言葉でふと気になったので聞いてみる。
「なあ、お前の名前ってなんなんだ?」
『..........昔の名などとうに捨てたわ...』
......まずいこと言ったかな
『なぁお主がつけてくれんかのぅ』
消え入りそうな、何かにすがるような弱々しい声だった。
「.....そうだな。ユカリなんてどうだ?」
『......ユカリか?』
「やっぱりさお前と俺が出会えたのってなんかの縁があったってわけだろ?母さんが言っててさ。人と人との縁を大切にしなさいって。だからまぁ。縁っていう文字をとってユカリ....みたいな?」
..........
『.....ひとまずはそれで良いわありがとじゃな』
「じゃあ改めて‼︎ユカリいくぞ!」
『うむ!!主と我で全てを奪おうぞ‼︎』
無に帰せ
止まった時間が動き出した。
二話連続投稿です!
だからノーカンノーカン‼︎