発病
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「君」の姿が見当たらないある朝。
いつもとは違うその行動に俺は焦った。
「君」が一人になるのは大抵母星が見える夜だったから。
朝はいつも「兄弟」達と一日の支度をしていたのに。
それに、、、エデンでは奇病が発生し始めていた。
母星から避難して来たのは健康な子供や戦争とは関係ない大人達。
なのに一部の子供がなぜか死んでいった。
最初は軽い熱が一週間ほど続き、その後2〜3日で熱が高くなり死んでしまう。
感染経路は不明。
治療方法も見つからない。
発病するのは子供だけ。
「君」はいつもの木の下にはいなかった。
あちこち探したけど。
「君」を見つけたのは夕方になってから。
エデンの「森」と「砂漠」の境界にいた。
俺が見つけた時、「君」は「砂漠」の砂を掴んでは落とし、掴んでは落とし、、、。
もともと砂漠だったエデンを勝手に「森」に変えたから神様が怒ったのね、なんて言っていた。
「私も、発病したみたい。」
俺の目をまっすぐに見つめて、「君」は言った。
きっと俺が見つけるまでの間、ずっと一人で考えていたんだろう。
「兄弟」達の事、
病の事、
残りの時間をどうするか。
俺は何も言えず、ただ「君」をそっと抱きしめる事しかできなかった。
それは俺が、「君」を好きなんだと自覚した瞬間だった。




