違和感
「章君・・・君が四人目だったとはね」
章がその言葉を聞き、後ろに振り返る。
「何のことですか」
「とぼけるな」
そこには真と葵がいて、真は右手にナイフを持っている。
「ねえ、真、章が四人目だという決定的な証拠はないんでしょ」
葵は真を冷静になるように動かす。
真は葵の方に目を動かし
「確かにね、けれど、それじゃあ四人目は絶対に見つけられない。」
そして真は章を見下すようにみた。
ただは怯えているような目をしているだけだった。それなのに――
「っち、まだ演技をするか」
「まってよ、四人目じゃなかったどうするの」
「そんなの簡単なことだ、新たに疑う人を探すのみ」
そして、真は章のほうへ走り。
真は回避することを防ぐために【電撃】を使った。
それは、ナイフで攻撃を仕掛けてくると考えていた章にとっては想定外の攻撃だろう。
章は【加速】を使いナイフを射程から回避しようとしたが無駄だった。
「ぐっ」
章は痛みを感じる。ただまだ体を動かせる
「なんで、なんで僕を殺そうとするんだよ」
章は、一生懸命訴える
「願いを叶えてもらうためさ」
真は今、行ったことに違和感を感じる。
違和感が真の脳をつかみ。違和感の原因を探るように頭が動く。
「それは人を殺してでもか?」
真の心は揺らいだ。
おかしい、おかしい、この違和感の正体は・・・なぜ、山羊のお願いを承諾した。
願いを叶えてもらえるからか。いや、それよりも不自然な所がある。
なんで、一番初めに黒い空間に行ったとき誰も、誰も、誰も、驚かず平然としていた。
常に冷静に行動する私でも動揺するような出来事だ。私も動揺せず、なぜ誰も動揺しなかった。
そして、なぜ私が人を殺すことに対して抵抗が無くなっていた。なぜすでに人間としてのリミッターが外されていた?
なぜだ、なぜだ、なぜだ。
「そうだな。人を殺してまで叶えてほしい願いはないな」
警戒せよ・・・警戒せよ・・・
「まったく、どうしたの、章」
「シビリー?」
シビリーが立っていた、レイピアを持ちながら。
「まったく、ここまで走ってきたんだ。」
「四人目は章じゃなかった。この娘だ」
葵がつぶやく
そして、シビリーは真の前に立ち、レイピアを引き、突き刺す。
真は【加速】を使って回避する。そしてさらに【加速】を使って【電撃】
シビリーは感電し動けなくなる。
そのとき憲兵がやってくる。
そしてこのシビリーが攻撃をした事情を説明した。もちろん真が章に対して攻撃した事実はなかったことにした。
「残念だけど、こいつは四人目じゃない」
真はそう葵に話した
「どうして?」
「なぜ、今まで【魔法】を一回も使わなかったんだ」
「それは四人目だと思わせないため・・・」
「いや四人目だと見せつけたかったんだよ」
「四人目?天使の四人目?どういうこと?」
章はそう発言した
「記憶が戻ったのか?」
真は章の変異に気づき質問する。
「たぶん、全部じゃない。」
「そうか、ところでシビリーについて何か強い願いとか持っていなかったか。」
どうやってシビリーを操ったを調べるために一応、した質問だった。
「僕はそんなことしりません。」
「ねぇ、章が四人目だという説はどうなったの」
葵が話す。
「そんなことより重要なことに気づいた」
「どんなこと?」
「何で、レジスタンスの全員が初めて黒い空間に移動したときに誰も動揺しなかったのか」
「あの山羊がそうしかけたのではないの」
葵は冷静に返すが
「まあ、そう考えることもできる。だけど考察する価値はある。そうだ章君、君が通っている中学校はどこだい」
「通ってない、引きこもっている」
「いや、通うべき中学校はどこだい?」
「群山市立中学校だけど」
真は、そのことにたいして現実感を抱かなかった。いや、抱けなかった。
しかし、全くの証拠がなくても章がそういうのならばそれが一種の真実とも感じられた。
ただそれが真実だとしたら現状をいかに説明するかについて考える必要があった。
けれで、直観的に”章にとってはその事が真実”だと一割程度、疑いながらも信じた。
「おかしいね、でも逆に真実っぽい感じを感じるな」
「どういうこと?」
「その学校に連絡を入れてみたんだ。言いくるめて君について調べようとしたんだけど、そんな生徒は在籍していないってね」
在籍していない。その言葉を章は聞いた。
全く、意味が理解できていなかった。一体どいうことか全く分からなかった。
どういうこと。一体、どういうことなんだ。まあ、中学だぞ除名や退学なんてありえない。
たしかに、友達はいない。中学の中では空気のような存在だった。けど在籍していない。そんなのは嘘だ。
章は動揺しているというよりは、その事実が受け入れなかったに近い。
ただ動揺しているところは、真がそんなおかしなことを言うとは思っていなかったからだ。
「どうして、そんなことを言うのさ。」
「事実だからさ」
「ところで、どうやって中学生ってわかったの」
葵が質問する
「LINERIDを交換していてさ、プロフィールに書いてあった。まあ身長的にも平均的な大きさだったからね」
「そんなことか」
「そういうものだ。」
「ああ、そうだ章君、今、中学何年だ」
「中学二年生だけど」
「加えて、質問、君が通ってた小学校は」
「第一群山市小学校だ。これ何でいう必要があるのさ」
「まあ必要があるからね。」
章は目線の位置を変える。それにつられて二人とも首を動かす
そこには、いびつな服装をした人たちがいた。
そしてその人たちは話しかけてくる。
「そこの3人、怪しい恰好をしているな。我々はアイアス教団のものだ。」
「怪しい恰好とはひどいなあ。化学繊維で作られた服なんだぜ。で?アイアス教団様が私たちになんの御用だ」
「か・・・かがくせんい?まあいい、その口の悪さは許すから、とりあえず、そこの3人。この棒を握れ」
教団の人が金属光沢で輝いている白色の金属を目の前に出す。
「わかったよ」
真が初めに握る。
「不思議な手触りだ、これは一体」
「次」
教団の人が急がせる
「じゃあ私が」
葵が触る。この柔らかい手触り、どこかで感じたことがある。そしてこの金属光沢は・・・もしかして銀か
「これは銀?」
「次ぃ」
教団の人が章に触らせるように促す。
その棒に章が触れる。
「全員、問題なし」
教団の人が話し、この場から動こうとする。
「一体、なんですか。説明してください」
真が強く教団の人に言う
「まったく、仕方がないな魔物探しだよ。教団の封印していた魔物化の薬が奪われて」
「魔物化?」
真がさらに情報を取ろうと疑問をぶつける
「ああ、魔物化すると。体、全体が固くなり、異常に発達した力を発揮できるようになるんだよ」
「ちょ・・・そ」
真が、葵の服の裾を引っ張る。
「まったく、女の子に対して優しくすることはできないわけ」
「おい、何か知っているようだな」
教団の人が話しかける
「いや何もしらないよ?だから?」
真は大げさに言葉を払う。
「っち、次いくぞ」
教団の人が去っていく。
「ちょっともし、怒らせたらどうするのさ」
葵は真に話しかける。
「それは、相手にも同じことが言える。私たちを怒らせたくないのさ、相手は強がっていたが実際、心では怯えてたんだ。だって相手はこっちの魔力を検知できるから。」
葵はそのことに納得した。ただ別の方法があるだろと思った。
「さて、黒い空間で全員集合しよう。4人目のことも重要だが、ほかの二人のことも重要だ」
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6月12日 16:20
黒い空間
「全員集合したか。まあ全員集合させたと言った方がいいな」
真は言う
「それで、作戦とは」
葵は聞く
「ちょっとまてくれ、状況がつかめん」
肉夫が話す。それもそのはずだ、3人と違う場所でいたからである。
「状況なんて、つかまなくていい。作戦を伝える。といっても、そんなに難しい作戦じゃない。まず、作戦の実行において世界の場所で全員集合する。そして世界にいるのを一人、異世界にいるのを三人とする。
そして、世界にいる一人が天使に遭遇したら。すぐに黒い空間に移動し、その事実を伝える。そして全員が地球の方に移動する。良くて1対3、悪くて2対4だ。まあ2対4になる可能性の方が高いだろう。」
「ちょっとまて、天使に遭遇しているときに、異世界には行けなかったぞ。黒い空間は大丈夫なのか。」
「実際試そうと思ったらできた。」
「そうか」
「で?どうやって集合するんだ」
章が質問する。
「肉夫は葵のヘリコプターで集合してもらおう。ぎりぎりだけれど燃料的には間にあう距離だったからな。」
真は返す。
「ヘリコプター・・・どいうこと」
肉夫が驚愕している。
「章君には、そうだな、移動手段は魔法を使いながら徒歩」
「徒歩って」
「まあ、冗談だ。瞬間移動で、指定する駅まで行ってくれ、そこに葵のヘリを飛ばす」
「まったく金を払うのは私なんだから。」
葵が笑いながら言う。
「移動経路を知らなければ、瞬間移動は使えないじゃ」
「だから電車だよ。たしかに電車自体を脱線させられれば危険だけど。電車を媒体に瞬間移動の魔法を使えばいい。つまり電車に乗らずに電車を使う。具体的な手段はメールにして送る。肉夫、メールアドレスを教えてくれ。」
「ああ、俺様のメアドは――@――だ。」
「あの、僕、スマホが壊れてしまったんですが」
「それについては、いちいちこの黒い空間を使って説明する。」
「あと、この事件が今まで見てきたものそれに対する考察。それら全てを教えてくれ。知識は非常時に武器となる。」
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6月13日 2:00
章の病室
【瞬間移動】
病院から逃げ出す。別に外傷はないため瞬間移動で逃げ出すことができた。
章は疑っていた。真と葵のことを、理由は言うまでもなく、学校に在籍していないと言ったことである。
ただ、疑ってても仕方がなく、作戦を実行することにした。
駅に入る。ただ財布を持っていないため切符を買うためのお金を持っていない。けれど、駅員に見られずに瞬間移動を使えばいい。
そして、黒い空間に入り、指示を聞く。
指示通りに移動しながら、指定の駅までついた。疲労困憊状態である。
ヘリコプターが降りてくる。
「のりなさい」
ヘリコプターの中には葵と真がいた。
葵が乗ることを促す。
「肉夫は?」
「今から連れていく」
真はすぐに言葉を返し、すぐにヘリコプターを飛ばすことを指示する。
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6月13日 2:20
肉夫の自宅、前
「ヘリコプター、俺様の前にきたぁあ」
肉夫がはしゃいでいる。
「早くしてくれ」
真はそのことに呆れ、急ぐように言う。
「はいよ」
肉夫はヘリコプターに搭乗し、
「これぞ、決戦ってやつだな」
「決戦じゃない、これは、たんなる戦いだ」
真はそう返した。
肉夫が搭乗しても、一向に飛ぶ気配がない。
「飛ばないの」
「ここで燃料を入れることになっている、この燃料じゃあ目的地まで届かないからな」
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6月13日 3:30
葵の自宅の庭
「ふう、ヘリコプターはやっぱり疲れるなあ。そもそもうるさいし」
葵は不満を口にこぼしながらヘリコプターから降りる。
「ああ、そうだな」
真はそう返事した。
「今日はここで寝てくれ。まあヘリコプターのあんなうるさい中で寝れたやつがいるがな」
葵は肉夫をみながら言った。
「東京でこんな広い面積の土地を買えるものなのか?」
章は質問する。
「私を誰だと思っている」