想定外
6月10日 20:40
章は自分の部屋でテレビを使ってニュースを見ていた。
魔法を使ったような事件はないことを確認する。
「まだ、魔法を使った事件はこの世界では起きていないということでいいかな、ただあの火事、誰が原因であるかが謎だ」
章は村長の家の火事を思い出す。あの状況からして一番怪しいのはシビリーだ。
しかしジビリーは天使ではない、なぜなら世界の住人ではなく異世界の住人だからだ。
そして異世界の住人であることは、リューダが証明している。
つまり、村長の家を燃やしたのはシビリー、けれどもシビリーは天使ではない。
シビリーが村長の家を燃やす理由がわからない。もしあるとすれば、村長が真っ先に疑うはずだ。
しかし、疑わないということは、動機がない。
動機がないのに村長の家を燃やす?そんなはずはない。
遠距離から魔法を発動させた?
火矢?、火矢を媒体にして魔法を作動?そうすれば辻褄があうな。
魔法の条件について話し合う必要がありそうだ。真ならすでに気づいてるかもしれないからな。
しかし、考えている間にこの僕を殺そうとする天使がいるかもしれない、警戒は怠らず。
そういやあ、何も食べていなかったな。
章は全ての窓と扉の鍵を閉める。こうしないと安心できない。
さて、冷蔵庫に何が入っていたかな。
警戒せよ・・・警戒せよ・・・
脳に響く、この声、これは自分の死が迫ったときになる音、この家は安全地帯のはずだ。
でも、どうしてだ。
冷蔵庫を開けた瞬間
「おいしそう」
少女が冷蔵庫の中に入っていた。
「全く、ここ寒いよ」
少女が包丁を振り上げる。僕はその包丁が死神に見えた。
とりあえず、右に【加速】しその包丁の攻撃を避ける。
異世界に移動しようとしたが、異世界に移動できない。どうすれば・・・
とりあえず、この家から出なければ、【加速】で玄関から出よう。
・・・しま・・・、鍵をかけたままだった。もちろんすぐに開けられるけれど、これは大きなタイムロス。
「安心していいんだよ、だってさ食べ物にとっての幸せは美味しく食べられることでしょ」
パンドラの箱が勝手に開き、少女の狂気に触れてしまった。
「うわああああああああああ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだああああああああ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ」
「何が嫌なの?わからないな」
その目はものすごく純粋な目をしていた。
こんな所で死んでたまるか、こんな所で死んでたまるか。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
自分を失っていた。こいつを殺す。自分が分からなくなってしまった。こいつを殺す。自分が自分であり自分であることを忘れてしまった。こいつを殺す。何もわからなくなった。こいつを殺す。人間らしい感情が無くなった。こいつを殺す。
体内に存在する異常な量の魔力が、全てを捻じ曲げる。
「死ね」
そして、近くの花瓶を魔法で投げる。花瓶は異様な速度で飛んでいき、花瓶は空気との抵抗で蒸発し、このあたり一帯が火事になり、少女の体を溶かした。
「はぁ、はぁ・・・」
正気に戻っていく。
周りの熱を感じ、体の溶けた少女を見た。
周囲の温度は100度を超えていた。全身が痛みを感じる。
すぐに家から出てた。
この辺りは田舎だから星空がきれいに見える。
警察が来るのには時間はかかるだろう、ただ―
少女の体が溶けた姿がフラッシュバックした。
「想定外だ」
その一言をしゃべり、その場で寝てしまった。
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6月10日 23:10
「起きて、起きてください」
目を開けると、救急車で運ばれていて、救命士がこちらを見ていた。
「お名前をすみません教えてください」
「えっと、名前は・・・」
思い出そうとする。しかし何も引っかからない。
「思い出せない」
「記憶喪失ですか。」
「外傷はないとなるとストレス性の記憶喪失ですかね」
「まあ、命に別状がなくてよかったよ」
救命士が話し合っている。
「ねぇ僕、どうなったんですか?」
「火事現場にいました。それ以外のことはまだわかりません。」
「そ、そうですか」
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6月11日 9:00
章の病室、検査入院することになった。
テレビを見る。紅ビルで何か事件が起きたみたいだ。犯人は空を飛んで逃げたという、警官二人の言葉がマスコミに拾われ、監視カメラにも空を飛んでる様子が写っていた。
記憶喪失だがこの光景が異様な光景だということが分かる。
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6月11日 12:00
「全く、このムキムキの俺には魔法なんていう物はいらないつーの」
身長が2m20cm、筋肉が異様に発達している外見がある。神の4人だがしらないが、この俺様にかかれば雑魚同然。
そんなことを思いながら 東筋 肉夫 は自宅で日課の筋トレをしていた。
異常な力を持っていることで、山羊に選ばれたらしいがどうでもいい。
まあ異世界には、この俺と筋肉勝負ができるやつがいるかもしれないことは楽しみだ。
「ねぇねぇお兄さん、何してるの」
少女が現れた。
「うん、それはだな日課の筋トレだ、9999、10000」
この人は勝手に人の家に入ってきたことを追求するべきである。
「へぇ、ちょっとゲームで勝負をしない?」
「ゲームぅう?筋肉を使わないやつはな」
「筋肉も使うゲームさ、頭も使うけどね」
「頭も使うのか~、まあいいやどういうゲームだ?」
「青い箱、赤い箱がある。どっちかが爆弾だ。そして爆弾じゃない方を選ぶためにヒントはこの3個の木箱の中に書いてある。この木箱を開けるためにはこの部屋に隠されてる鍵が必要だ」
「ふーむ、探すのは苦手なんだけどなあ。というか爆弾かあさすがにゲームに命はかけられないよ。」
「そうだね、英雄たちを殺すのを手伝ってあげるよ。」
「殺すって、そう簡単に言ってはいけないことだよ」
「でも殺さなきゃ殺されるんだよ?」
「うーん、でも、人を殺すのは悪いことだよ」
少女が、ナイフを振り上げ
「うっせんだよ、このゲームに参加しないなら今、お前を殺すぞ」
肉夫はすぐに少女の腕を掴む
「全く、こんな危ないもの持っちゃだめでしょ」
「いて、いてて」
肉夫にとっては普通に持っているだけであるが、少女にとっては相当、強くつかまれている。
「ああ、ごめんごめん、しょうがないなあ」
(まったくちょろいな)少女は微笑む
「うおおおおお」
肉夫はこぶしを高く振り上げ、木箱を破壊する。
「てい」「やあ」「とお」
肉夫は破壊された木箱の中から紙を取り出す。それぞれ「青」「が」「安全」と書いてあった。
「これは、わかったぞー青と見せかけて赤だなー」
「え?」
(こいつ馬鹿だー)
少女は赤い箱から離れる。
(でも、成功したぞ。まあどっちも爆弾なんだがな。)
肉夫は赤い箱を開ける。
「あ、爆弾だったんだ・・・」
爆弾が爆発する。
爆弾が一瞬輝き、熱、衝撃を放射し、欠片が肉夫に当たる。
しかし―
「なーんだ、このくらいの爆発かあ」
「無傷だと・・・」
(人間が当たったら即死の爆弾なはずだぞ、一体どういうことだ。)
「あれ少女は?」
少女は知らないうちに消えていた。
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6月11日 13:00
金谷 葵は銀行の社長だ。
「さすがに、四人もここまで攻めてくるような命、知らずではないか」
「どうしましたか。」
彼女の秘書は答える。
「気になることがあってな、そうだ。最近の不自然な事件を調べてくれ」
「わかりました。」
ここは、銀行の金を集める金庫、しかも核に対抗するためにも設計されている安全地帯だ。
さすがに、原子力潜水艦ほどの安全性はないが、さすがいくら金があっても、原子力潜水艦を作る技術はない。
だから、今ここが一番安全だろう。そしてここに来た愚か者を排除する。そのための武器は一応ある、猟銃だ。
敵には居場所はすでにわかっている。
「ねぇねぇ、ママ、何か私に隠し事してない」
モニター越しで娘が見ている。
子供は意外に察しがいいものだ。
言った方がいいだろうか、でも巻き込む必要はない。
「いや、特にないよ」
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6月11日 15:00
章の病室
警察が入ってきた。質問したいことがあるそうだ。
「すみません、ほんとうに、所で火災現場にこんな奇妙な物があったんですが」
警察は写真を見せる。それは何かよくわからなかった。何か不自然な焦げた肉のように白い何かが混ざり合ってるようにしか見えなかったが、言葉が出ていた。
「女の子・・・」
「!?」
「女の子って何がですか?」
警察が何か驚いた顔をして聞いてくる。思い出せない、ただ頭に浮かんだ言葉を言っただけだ。
「思い出せない」
「そうですか」
そういって警察は病室から出た。
異世界に行きたい。頭の中でこんな声が響いた。なんでこんなことを思ったのかは意味がわからなかった。
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6月11日 15:10
僕はベッドで寝ていた。見たことがない場所だった
「異常な魔力を検知してみてここに来たみれば・・・こんな所で何してるんですか、章」
少女が話しかけてきた。
「ここは、どこ、あなたは、だれです。」
「は?また記憶喪失になったわけ?」
「ここはアキレスの村、私はシビリーもう、思い出してよ。都市にいくんじゃなかったの」
そうだ、行く予定だったかもしれない。ただ具体的なことは思い出せない。
「ああ、そうですね。行ってきます。」
そして、歩きだそうしたとき。どっちに行けばいいかわからなかった。
「どっちに行けば?」
シビリーは指をさしながら説明した。
「東門です、あっちです」
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6月11日 18:00
「やっほう」
真は山羊に話しかけた。
「どうした。」
「情報交換会を開きたいと思う」
山羊はうなずいた後
「そうか、ではみなを集めよう」
「またですか。」「また、きちゃったあ」
章が周囲をきょろきょろ見渡す。
「あの章君どうかしましたか」
「ここどこです?」
真はここに来れるというため、章は記憶喪失だと瞬時に気づいた。
「記憶喪失か、山羊どうして、記憶喪失になったか記録してあるだろ」
「ああそうだ、ちゃんと記録している。ただ結構、内容がショッキングなものだ。気をつけてみるがよい」
真は映像を見ながら喋る。
「みんな、知らないと思うが、ここには来たいと思ったら来れる。この山羊が説明を忘れていてな」
「あと、魔法について、実験を繰り返し、わかったことがある」
「魔法の発動条件は通常の手段で達成可能なものの手段を省略できることに限ることだ」
「これでは魔法の意味がないと思うが、例えば携帯電話、相手に携帯電話を使わないように見せかけて、実際には電話をかけることが可能である」
「しかし、実際、相手がこちら側が電話中に電話させるのを止める行動を起こす動機があり、止める能力がある場合は使えない」
「加えて、魔力を通常より多く使うことにより達成可能であることとを大きく上回ることが可能ということだ」
「例えば、ボールを投げたら30mしか届かない人でも、十分な魔力を使えば300mも届くようになるということだ」
真は映像を見終わると。
「山羊、いま山羊が把握している天使は誰だ。あ、天使っていうのは神に選ばれた四人の一人を指す言葉のことだ。」
「名前は不明だがおそらく3人は確認できている。うち一人は章に殺されて死亡。」
「おそらくとは?」
「この3人、どこからどうみても、天使なんだが、全員が全員自分が天使であることを証明したわけではないからな。ただ生きている二人は天使という確信ができる記録がある。」
「四人目は一体何しているのでしょうか。まあ一旦、ここではない場所で集合したいところですね。」
「しかし、富が異常値・・・いや金谷 葵」
「ああ私のことか。」
葵が答える。
「葵、今どこにいる。」
「ああ、私は核にも対抗しうる銀行の金庫にいる。」
「やはり、そうか。そこから離れていた方がいい」
「頭が異様にいい君に言われるとは、でもどうしてだ核にも対抗しうる防護があるんだぞ」
「3人とも少女で、狂人だった。じゃあもう一人も少女で狂人だと推測できる。まあ確実ではないけれど注意しすぎることはないだろう。しかし狂人だと仮定すると、なぜ今まで誰かに会わなかったのはなぜだ。仮定に仮定を重ねるようだが、おそらくその四人目は頭がいい」
「へーそうなの」
「頭がいい狂人ほど恐ろしいものはない」
「でもどうやるのさ、どうやってもこの金庫は破壊できるはずがない。」
「金庫が破壊できなくても、金庫の下に金庫ごと落とせる落とし穴を作ればいい。相手にも魔法という手段があるから、それができる。」
「そうか、じゃあ。その時に世界を渡ればいいんじゃ」
「出来ない、天使と対峙しているときは何故かできなかった。」
「わかった、金庫から出るか」
「意外な反応だな」
「まあ、確率は非常に低いけど。そんなことで死ぬのはいやだからな」
「あと、それだ。あまり気づきにくいことがあるため全員に言う。空気を媒体にして空を飛ぶことができる」
「他に誰か言いたいことがある人はいるか?」
「ああ、なんか俺様の家に3人の少女の中の一人が来た。」
そう肉夫は発言した。―
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