第5話 少し特別な日常(2)
さて、魔物がボコスカ倒されて機嫌のよろしくないのは魔物達のボスである。
魔物達の世界、魔界でもとっくにみちるの事は話題になっていた。
「魔物魔女、ちょっと見過ごせない存在ですね…」
今回の魔界会議の議題はみちるの事についてだった。
魔物界の重鎮たちの会議に取り上げられるほど存在になっていたのだみちるは。
これは本当にとんでもない事だった。
「そろそろこの異物を排除せねばなりませんな…」
余りにその存在が大きくなってしまったみちるは当然のように魔物たちの排除対象になっていた
しかし漏れ伝わってくる彼女の実力に誰も自ら進んで手を上げる者は出なかった。
議会が沈黙して二時間も過ぎた頃…その様子をじっと静観していた魔物の大物がついに声を上げた。
「それでは私が行こう!皆の者留守は任せたぞ!」
声を上げたの魔界四天王の一人、獄炎のギリュウだった。
その宣言に魔界の幹部たちもざわつき始めた。
「そ、そんな!貴方様が!」
「私以外に誰があの化け物を倒せるのだ!私に任せておけ!」
ギリュウはその威厳のある姿で議会を説き伏せた。
全長15mはあろうかと言うその巨体全体に地獄の炎を纏わせ、触れる者を全て焼きつくすギリュウは魔界四天王の中でも一番の武闘派だった。
戦闘力だけで言えば魔物の頂点、大魔界王に匹敵するほどの実力を持っている。
その彼の宣言は魔物魔女を倒せるのは自分以外にいないと言う彼の自信の表れでもあった。
魔物の超大物が動いた!
魔界でもこれは大騒ぎになった。
それほどみちるの存在は脅威になっていたのだ。
みちるに魔物の殲滅の意志がなくても魔界側はそこまでの危険を想定していた。
なにせみちるの側には天使がついている。
これを天界の陰謀と捉える者が出ても何の不自然さもなかった。
みちるの前に最悪の危機が訪れていた。
しかし当のみちるもレイチェルもその事に全く気づいてはいなかった。
「パンケーキ出来たよー!」
みちるはいつもの様に朝食を作っていた。
もうレイチェルと一緒に食べる朝食の風景にも慣れていた。
気がつけばみちるの体の魔物化が始まって2ヶ月が過ぎようとしていた。
最早魔物を倒すのは朝の散歩くらいの普通の出来事で
居候のレイチェルとの暮らしもまんざら悪くもないとすら感じていた。
「今日の朝食の出来はどう?」
「ん、悪くないよ…」
それまで一人で暮らしていたみちるはこの奇妙な同居人にすっかり気を許していた。
レイチェルもそんなみちるにいつの間にか気を許すようになっていた。
今日もまた魔物退治以外は何も代わり映えのない一日が過ごせるものと、その時まではそう思っていた。
そう、その時までは…。




