第12話 レイチェルの奔走(2)
「まず君の覚悟を聞いておこう…君は一生彼女を守れるかい?」
優しく語りかける天使長の言葉にレイチェルは真剣な顔をして答えた。
「も、勿論です!」
天使長はレイチェルのその言葉を聞き届けるとニッコリ笑いながら
「それならば君は君の思うように動けばいい…責任は私が持とう」
と、レイチェルの後ろ盾になってくれることを約束してくれた。
それを聞いたレイチェルは感動して感謝の言葉を述べた。
「あ、有り難うございます!」
天使長はレイチェルに具体的な事は何も言わなかった。
ただ、自分の覚悟を問われただけ。
その言葉の重みを深く深く噛みしめるレイチェルだった。
しかし天使長の了解を得た所でどう行動するかはレイチェル自身が考えなければならなかった。
暗闇に一条の光は射したものの現状はまだあまり変わっていなかった。
しかしその光は自分を強く後押ししてくれているように感じていた。
丸一日考えて悩みぬいたレイチェルはやがてあるひとつのアイディアを思いつく。
「これだ!これしかない!」
もう残り時間も少ない…レイチェルは早速行動を開始した。
素早くみちるの収監されている場所へと移動する。
特殊アイテムを使って素早くレイチェルは監獄の中へと侵入した。
元々警備畑のレイチェルはこのくらいは朝飯前だった。
「ふぁ~あ~」
その頃のみちるは暇を持て余してあくびばかりしていた。
力も封じられて魔物の姿のままではやる気の一つも出るはずがなかった。
「…る!」
「みちる!」
と、そこに突然大きな声が響いたのだ!
これはみちるじゃなくてもびっくりするよね!
「…っひゃあ!」
「大きな声出さないでみちる!」
勿論その声はレイチェルだった。
ずっと待ち焦がれていたこの世界での唯一の知り合いの声にみちるは安堵と怒りの混じったよく分からない感情の渦に巻き込まれた。
「な、何で今頃何しに来たのよ!」
「とりあえずここを出るよ!」
「え、ちょ、どうやって!」
急にレイチェルが現れた事にも驚いていたがその彼に突然急かされてみちるはもう何がなんだか分からないほど混乱してしまった。
そんなみちるの混乱などお構いなしに彼女を急かすレイチェル。
「早く!急いで!」
「わわっ!」
レイチェルはまずみちるの腕の拘束を解くと彼女の腕を掴んで監獄の壁を破壊した。
彼の何処にそんな力があったのかと疑問に思う間もなくレイチェルはみちるを連れて天界を脱出した。
術式はまだ掛けられていないのでみちるの姿は魔物のまま。
「こ、これからどうするの?!」
「一つだけあてがあるんだ!」
こうして天使と魔物になった人間の二人の逃避行が始まった。




